『カオス』

ボケ猫

第1話 本当の平等とは


この世界は平等になった。

『カオス』と呼ぶものもいる。


世界に突然ダンジョンが出現し、ダンジョン内で魔物を討伐するとレベルアップできる世界になった。

そしてあらゆるジョブが身に付き成長させていくことが可能となっている。

身体的欠損も復元可能な回復系のジョブも多数ある。

まさに誰もが妄想していた異世界転生が現実の俺たちの世界に起こっているわけだ。

ジョブには努力という作業によって積み重ねられたものが反映されるらしい。

個体差もあるだろうが、その個体に見合ったジョブが選択できる。

とはいえ、まだこの世界もそのシステムを理解できたわけではない。

ただそのジョブも積み重ねによってどうなるかわからない。


また、国家バランスはそれほど変化していない。

武力で支配しようとしていた地域では、それがかなわなくなっているが、まだ個人が国家の軍事力を上回ったという話は聞いたことがない。

どの国もそういった力は欲しいだろうが、手に入れてしまうと誰が抑制するというのだろうか。

まぁ、現実にはそんな人間は存在しない。


一つ言えることは、お金による階層社会ではなくなったことだ。

お金があるには越したことはない。

だが、ダンジョンに入りその中で得られる資源を外で換金すれば普通に生活はできる。

今の世の中、ダンジョンから得られる資源で成り立っている。

たった半年くらいしか経過してないというのに、人というのはその適応力は大したものだ。


俺?

俺は間違いなくモブ系のバツイチおっさん36歳だ。

収入が少ないと嫁に見捨てられた。

俺の家なのに俺が追い出された。

一時はその悲惨さに打ちひしがれたが、この世界になり景色は一変した。

自由かつ平等な世界に感謝している。

とはいえ、現実はダンジョン内では平気で略奪、殺人などが起こり完全な無法地帯となっている。

どの国もダンジョンの外では秩序を維持できているが、その中までは管理できないらしい。

というかする気がない。


ただ、ダンジョンに入るにはルールがある。

個人として完全に所属する国に登録しなければならない。

まぁ異世界風に言えばギルドカードみたいなものを持たされる。

個人情報が入ったチップを持っていなければならない。

これは世界共通の認識だ。

国同士の争いを避けるために発案した苦肉の策だろう。

個人の安全という名目も兼ねている。


そんな世界が激変して半年、俺は生き延びている。

しかも自由にだ。

若い連中は冒険心をくすぐられレベルアップに夢中のようだ。

現実は甘くはないのだが。

俺はコツコツと地道に目立たず自分を成長させている。

俺の人生は始まったばかりだ。


<半年前>


それは突然に現れた。

マリアナ海溝に突き刺さった淡く光るブルーの塔。

水晶のように見えるが現代科学文明のレベルでは傷一つ付けることはできない。

触れることはできるのだが、破壊不可能な未知の物体。

いったい何の目的で現れたのだろうか。

いや、そもそも目的などあるのだろうか。

そして、同時に地球上に無数のダンジョンの入り口が現れた。

ストーンヘンジのような作りから日本の神社の鳥居のような作りまで。


そのダンジョンは誰でも入ることができる。

そして中で魔物を討伐すると人に対して、いや生命体に対して変化が現れる。

レベルが付与されるのだ。


ダンジョンが現れてから、どの国も自国民にダンジョンに一度は入ることを推奨しているくらいだ。

レベルが上がれば、身体が強くなったり、軽い病気なら治る時もあるという。

それにある程度レベルが進むとスキルが発現する。

そのスキルが特殊なスキルの場合、どの国も喉から手が出るほどに欲しいらしい。

また最近では、ダンジョンの入り口に扉が設置されたりして管理するようになっているところが多い。

未開の地などではどうなっているか知らないが。


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