もう私は別れに恐怖を抱かない気がした。
れな
第1話 たらたらしてんじゃねーよ
当時付き合っていた彼氏に疲れ果てた私は、朝の9時に起こし、謝りながら彼氏を振った。結婚願望が強いはずの私ですら、疲れてしまうほどの結婚観に私は嫌気がさし、年始早々年が明けてからずっと考え込んでいた。結論が出るのは遅かれ早かれ出ていたのだった。それが今だっただけ。そんな私のエゴに気づいていながら、彼は最後まで優しかった。
「ごめん、ごめん。あなたのせいじゃない。私、私のせいなの。」
泣きじゃくりながらそう言う私のことを彼は力弱く抱きしめて、そして離した。
「俺よりいい男見つけてね、幸せになってね。」
最後の荷物の整理は2人で行った。使い古した下着にパーカー、タオルにゲーム機そのどれもにたくさんの想いが詰まっていた。一瞬で思いだせるくらいには私は彼にまだ思いが残っていたのだろう。でもここで止まったら、また私は運命のレールに引きずり込まれる、そう思った。もちろんレールが楽なのは分かっていた。でも、つらかった。両家家族から期待され、子どものことも言われるこの環境に私は耐えきれなかった。
「この、トートバッグ使っていいよ。」
それは、1年目のクリスマスに、彼へのプレゼントを買った時についてきたノベルティで私がよく使っていたものだ。
「俺は良いよ、なぎちゃん使いなよ。」
取って置いたらまた思い出すでしょう?なんて言えなかった。思ったけれど心にしまい込んだ。
「この大荷物をどうやって持ち帰るの?使って…。返さなくていいから。」
他に荷物がないか、確認すると机の上のコースターにペアリングが2つ。
それを見て、私はまた泣きそうになった。泣きそうな私を見て彼は私に謝った。
「ごめん、ごめんな。なぎちゃんを追いつめて。ごめん。」
今謝らないでよ、やっと決断ができたのに。好きでいる気持ちと永遠に一緒に居られる気持ちはまた別なのに。
「…全部捨てて。私も思い出も全部。」
そうすればきっと新しい彼女がすぐにできるでしょう?私なんかよりもずっとずっといい彼女ができるでしょう?
「分かった。最後にハグだけさせて。」
ずるい、ずるいよ。あなたはずるい。最後に私に呪いをかけた。絶対に忘れない呪い。
彼は荷物をまとめて出ていった。
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