友達の怪物は、今日も恋をする。
曖昧
プロローグ
『ロック』と言う言葉が流行り出したのは、友人が死んでから数日のことだった。
ロックという言葉の由来は、黒色の「クロ」を並び替え、誰かが間違えて「ロ」と「ク」の間に小さい「ツ」を入れたことが始まりだった。
そもそもロックとはなんなのか。
私が彼と出会ったのは、六本木にあるテナントビルの火災現場だった。
フリーの記者として活動している私は、近頃出没する黒いバケモノについて、取材をしていた。
炎はビル全体を飲み込み、逃げてきた人は、「まだ中にいる」と、泣きながら訴え、燃え盛るビルの中に入ろうとしているのを、消防士に止められていた。
その時だ、彼が現れたのは。
ドンドンと、遠くの方から地鳴りのような音が鳴り響き、猛スピードでビル内に突っ込むと、一瞬にして逃げ遅れた女性を助け上げ、その場から消えた。
それが私の彼のファーストコンタクトだった。
周りの人間は何があったのか分からず、呆然としていた、私も含めて。彼のスピードは、近くで見ると肉眼では捉えられないくらいの速さだった。
でも私のカメラは捉えていたのだ。
人間ではありえないくらいの筋骨隆々とした黒い体に、鋭い牙、吊り上がった目。まるでそれは、某有名映画に出てくるあれに近かった。
Xに投稿すると瞬く間に拡散された。私とおんなじように見たという人がたくさんいた。
それから数日、私は彼を肉眼で捉えることに成功したのだ。
帰宅途中。路地裏に入った瞬間、女性が何者かに襲われていたのだ。急いで助けようと走った瞬間。下から突き上げる地震が起きた。思わず私は転倒した。彼女の方を見ると、ロックがいた。彼の存在に襲いかかった男どころか、女性までもが逃げ出した。
私はチャンスだ、と思い、カメラのシャッターを切ったとたん、カメラは手元から消え、彼の手によって握りつぶされた。
そして彼は今、私の家に居候している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます