第四話 正体

 俺は、まだ意識がはっきりとしていない彼女を冷や汗でびっしょりになりながら固唾をのんで見守っていた。

 すると、彼女が声に寝起き特有の甘さを少し含んだ声音で

「あるじぃ、おはようございましゅ。うにゅ」

 主、ってことはもしかしてこの娘はヘル!?

「へ、ヘル?」

 俺は、半信半疑になりながら問いかける。

 すると、まだ寝ぼけている様子で

「えへへ〜、主の従者のヘルですよ」

 え!?ヘルってこんな子だったっけ?

「ヘ、ヘル?ヘルさんやーい、目ー覚ましてくれー」

 そうすると、やっと目が覚めてきたのか、ヘルがこちらを意識のしっかりした目で見た。

 ボッ、という効果音でもしてきそうな感じでヘルの顔が真っ赤になった。

「あ、主。見ましたか?私の醜態を」

 鬼気迫るような様子で俺を軽く睨むようにして聞いてきた。

 どうしよう。見なかったことにしてあげたいけど見ちまったしな。

「すまん」

 俺は一言だけ、告げた。

「そ、そうですか・・・・・・。まあ、主ですから見られても構わないのですが少々恥ずかしいので」

 うん、今更だけど恥ずかしがるところが違うんじゃないかな。

 俺は、急いで昨日火を起こしたときにほぐしておいたツタを編んで縄にするとオルトロスの毛皮をナイフで裂いて即席の貫頭衣のようなものを作ってヘルに渡した。

 「ヘル、これを着てくれないか?今のヘルの姿は少し刺激が強くてな」

 ヘルはよくわかっていない様子で、しかし俺からもらったものということで嬉しそうにいそいそと貫頭衣もどきを着た。



◆◇◆◇◆◇

「ところでヘル、どうしていきなり人の姿になってたんだ?」

 朝食後、俺は寝起きからの疑問を率直に聞いてみた。

「それはですね……。昨夜、主がお眠りになられた後お言いつけのとおりに周辺の警戒をしていたのですが、二、三時間ほどたった頃でしょうかなんだか主がうなされ始めました。絶対に許さない、必ず戻ってくるからな、などのようなことを呟いておられました。そんな主を見て、寄り添って差し上げたい。少しでも慰めになって差し上げていと考えていたところ、急に私の体が光りだしたのです。光が収まると私は今の姿になっていました。それを確認すると嬉しくなり、主様に添い寝をすることにしました。」

 ということらしい、俺がうなされていたってのは寝言からすると追放の件は結構メンタルに来てたんだろうな。

「ありがとうな、ヘル。でもなんでそこまでしてくれたんだ?いくら獣魔だからってそこまでしなくてもいいんだぞ」

「獣魔だからではありません!!主、いいえ剣様、あなただからこそです。あなたは、私と出会ったときあなたも大変だと言うのに私を殺すほうが簡単だったはずでしたのに私を救ってくださいました。そんな優しいあなたのことが私は好きになったのです。そして好きになったからこそ、そばにいたい、力になりたいとより一層思うようになりました。」

 ヘルが初めて見るくらい感情的になってそう言ってきた。

「お、おう」

「というか、いくら私が魔獣だと言っても好きでもない方には添い寝したりしません。好かれていることに自身がないのでしたら、これからどんどん好意を伝えますので覚悟しておいてくださいね」

 そんな、ヘルに俺はタジタジだった。

「お手柔らかに頼むよ」

 俺は、そういった。


 この日俺は、 雷鳴がとどろき、大地が鳴動し暴風が吹きすさぶ、次の瞬間には吹雪が巻き起こり、かと思えば溶岩と炎が巻き上がる。そんな地獄すら生ぬるい場所。そこで俺は彼女と出会った。



あとがき

今回はいつもより少し短めでした。

ところで、ヒロインはヘルでした。どうでしたか?

次回以降は獄界の探索と脱出に向けた準備を描いていこうと思います。

できればご付き合いください。

レビュー、応援、コメント、ブクマ、フォローよろしくお願いします。

次回はこれまでの登場人物紹介をあげます。

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