とうのはね【カクヨムコン10 短編創作フェス⑦「10」「羽」「命令」】

結音(Yuine)

追放

 それは、命令だった。

 下界に降りよ、と。

 そして、十日以内に天で得難き尊きものを見つけてくるように、と。


 娘の姿にされたは、暗い森の中へと送られた。

 うっそうと生い茂る木々は、天からの光を遮っていた。

 娘への恩赦は、十羽の蝶。

 困った時には、助けになるはずだ、と聞かされた。


 寒かった。

 娘は、一羽の蝶を手に取り、着る物を欲した。

 蝶は消え、代わりに着る物が現れた。


 それでも、寒かった。

 もう一度、娘は、蝶を手に取り、体を包む温かい物を欲した。

 蝶は消え、代わりに毛布が現れた。


 娘は、初めて 空腹を覚えた。

 娘は、一羽の蝶を手に取り、この空腹を満たす物を欲した。

 蝶は消え、代わりにひとかけのパンが現れた。


 一口かじると、乾いたパンは粉となり、娘の口の水分を奪った。

 空腹は、消えなかった。


 娘は、一羽の蝶を手に取り、水を欲した。

 蝶は消え、欠けたカップに入った水が現れた。


 娘は、水を飲み干すと、その場に横になり眠った。




 こつこつ こつこつ

 足音がして。一人の男が娘に近づいた。


 男は娘に一目惚れして、娘を家に連れて帰った。


 娘が目を覚ました時、六羽の蝶は、娘の頬にかわるがわるに接吻をした。


「目が覚めたかい」と、男は娘に話しかけ、一緒に暮らそうと持ち掛けた。

 娘は、差し出された温かなスープを口にして、ゆっくりとうなずいた。


 




《つづく……》

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