第三話 鉄の道

序章 - 青の森 -

 青い森。

 そう表現するしかない光景が広がっていた。


 葉の色は徐々にではあるが、緑から青へ彩りが増えていることには気づいていた。日の光も遠くなっていくように感じていた。

 だが、それがここまで大きな変化に至るなど、思いもしなかった。


「木の高さ、それに枝葉の量が増えてきているね」


 道中、タイカがつぶやいていた。


 差し込む日の光は僅かだが暗くはない。

 木の葉が、光っていた。

 淡い燐光を帯びていた。葉の青さと相まって、燐光は青白い色となっていた。

 時折、光る何かが飛んでいる。蛍かと思ったが、蛍よりも大きく、光も柔らかい。

 木は背の高さに比例して、その幹は太く大きくなっており木々の間隔も広くなっている。

 その木と木の間の下生えも、薄く光っている青い草花が多い。


 現実離れした風景であった。


「不思議」

「そうだね」


 タイカも、放心したようにつぶやいた。


 《鉄の道》

 

 そう呼ばれる荒野の手前。《鉄の道》の周囲の森は、青く植生が変化してるとタイカに聞いてはいた。

 分かってはいても実際に見ると、その光景には驚嘆するしかない。


 しかしタイカまでが、何故か驚いているのが気になった。


「タイカは、《鉄の道》に来た事があるんでしょう?」

「ああ。でも先生の住処は《鉄の道》でも端の方だったし」

「こんな感じじゃない?」

「そうだね。一応、色や草木の変化は先生から聞いていたけど、これほどとは思っていなかった。それに、何でだろう」


 不思議な雰囲気だ。

 そうタイカは言い、周囲を見回した。


「危険、という感じではないんだ」

「それは分かる」


 シュトも頷いた。今まで見てきた森とまるで様相が異なる、という意味で異常な光景ではあるが、恐怖は感じない。

 むしろ、安心感さえある。それがシュトにも不思議であった。


「植物が青い。そして危険が少ない。そんな理解だったんだけどね」


 奥の方だからか。先生に聞いてみるかな、などとタイカが独りごちる。


「ともかく《鉄の道》まで出てしまおう」


 タイカが振り払うように言う。シュトも頷いた。

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