第17話 私だってそう思ってる
秋山たち小隊が消息を絶ったと楓が連絡を受けた3日後、父の玄武が九州から戻ってきた。
「
「どうしたの、お父さん?」
いきなり入ってきた玄武はそう言うと、楓を施設の外に連れ出した。そこには大きな軍用トレーラーが停まっていた。運転手の姿はないことから玄武自身が運転してきたと思われた。後部扉は開いておりその中を楓は
「機動兵器?」
「何とかこいつだけは回収できた。これは真田が乗っていた機体だ」
「真田さん……。あの行方不明になった、私の前にいた隊員の人。たしか副隊長さんだったっけ?」
「ああ、そうだ。この機体はお前が使え」
「えっ?」
予想もしなかった父の言葉に驚く楓。
「軍は九州から手を引くことが決まった。実際、稼働する機体もパイロットもいない状況だ。異常に進化した敵に、米軍と合わせた兵力でも手も足も出なかったんだ。上は防衛に専念すると決めたらしい」
「それって……」
「小隊がこんなありさまだ。で、お前には少ししたら特別任務が与えられる。これは俺じゃねえ、もっと上の大島将軍からの命令だ。将軍っていってもお前も良く知ってる母さんの兄さん、お前の叔父さんだ。よく夏休みに遊びに来てただろ?」
「はあ!? 大島のおじさんが、将軍さま?」
「やっぱ、いまだに軍の名簿は確認してねえんだな……」
「お父さんのことだけでお腹いっぱいなんですよ。その上なんて……、そんな雲の上の人の確認なんて私がするわけないでしょうに」
「まあ、そうだな」
「で、おじさんは……。じゃなくて将軍さま
「お前の得意な潜入捜査だ。まあ、あの神父のときとは違うがな……。危険なことは間違いねえし、父親としてはそんなところに行かしたくはない。だが、これはこの国、いや、人類の未来に関わること……。楓が嫌なら……正式な命令書が出されるまでには数日あるはず。今なら軍を辞めるかして……」
「やるよ! 私、絶対にやる! こんな状況で逃げるなんて、ないない。『いばらの道? 道あるじゃん、歩けよ』の山本家の家訓に関わるよ。でしょ? お父さん!」
「どこでそんな大昔のネットの名言を……。ああ、ほんとに美咲の言ってた通りだったな……」
「だって、お父さんとお母さんの娘だよ。血は……、つながってないけどさ……」
「そ、それは言うなって……。誰が何と言おうとお前は俺達の娘だ」
そう言う玄武は
「ふふっ、私だってそう思ってるし。そうと決まれば頑張らなきゃだ」
「正直、俺もお前を危険な目に遭わせたくはないが……。秋山たちを見殺しにすることももちろんできねえ。けっ、出世なんてするもんじゃねえな。昔だったら考え無しに俺が突っ込んでいくのにな」
「お父さんはもっと大きなお仕事があるんでしょ? えっと、その言い方だと少佐たちは生きてるんだね?」
「ああ、それは間違いねえ。俺達が撤退した後で救難信号を受信したって報告があった」
「位置とかナントカいう衛星で、特定できてるとかじゃないの?」
「いや、あの敵の侵攻と同時に国の偵察衛星からの通信が途絶えた。何らかの方法で敵に捕捉され管理権限を奪われたようだ。すぐに米軍の軍事衛星で破壊したがな。宇宙まで連中に押さえられたら目も当てられねえってことだ」
「はあ……。でも、学校では訓練機にちょっと乗ったけど、これって見た感じまったくの別物だよね。私が操縦できるってお父さんは思って……」
「そりゃ、できるだろ? お前の実技の成績は士官学校の歴代記録を軽々と更新してきたのは俺でも知ってるぜ。まあ、将軍もそれに賭けたんだろうがな」
「ははは……。よくご存知で。もしかして私ってとっても有名人だったりして」
「一部ではな。あと筆記試験さえ良かったらな」
「ぐはっ、それは言わないでください。ちちうえさま……」
楓のおどけた様子に笑顔になる玄武。だが事実はそうではないことを彼は十分理解していた。彼女を保護したのがおそらく十歳程度、実際はもっと幼かった可能性もある。その時点で彼女は言葉も話せず字も読めない状態だった。学業はおろか社会常識についてさえゼロからのスタート。およそ他人の半分もないところから短期間で難関の士官学校に合格してみせたのだから、その非凡さを彼女を知るごく限られた者たちはよく分かっていた。
そして機動兵器への適性の高さ。
人類の希望とも言える機動兵器を開発したのは玄武であったが、そのきっかけは楓を発見した議事堂。彼女に何かと繋がれていたと思われる吸着していた物体。玄武が記念にと持ち帰っていたそれを後に分析したところ、人類の持たない技術のカタマリであることが判明する。その事実の公開は楓のことを危険にさらす可能性があったため、玄武の理解できた技術を一部公開し兵器の開発に役立てることにとどめた。が機動兵器にはつぎこまれているのだった。
もともとのそれが楓に完全にカスタマイズされていたものであったことから、楓ならこの兵器の能力を十分に発揮させることができることも玄武には分かっていた。
「そういや楓、お前、機械の気持ちが分かるみてえなことよく言ってたよな」
「ああ、うん。何となくだけどね。パソコンも上手く使えない私がいうのもなんだけど」
自らトレーラーの荷台に乗り込んでいた楓がそう答える。
「そいつはどうだ?」
「ん? この子のこと? さあ、乗ってみないと分からないかな」
士官学校へ進学する楓が進学する前まで、家庭でネットに触れることを玄武は禁じていた。それは再びあの人工知能体に接触する可能性を極力排除したかったからであった。士官学校の情報工学の授業での楓の
「じゃあ、まずは基本から叩き込んでやるぜ!」
「では、センセイ! よろしくっす!」
楓は玄武に向かって、おどけて直角のお辞儀をしてみせるのだった。
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