第10話 過保護
「げっ……」
楓は
「ええ、何を思ったか逃走しようとする困った人が過去に何人もいましたので、その辺は抜かりはありませんよ楓さん。ちなみに彼らは私達の組織でも腕利きの
楓が振り返った先で神父もニヤついていた。
「脳味噌って……。そんなご
楓は降参を示すために仕方なく両手を上げた。
「楓さん、あなたが悪いのですよ。大人しく従っていれば私達も相応の対応をさせていただいたものを。まあ、仕方ありません。悪い子にはお仕置きが必要ですかね」
「お仕置き……。くっ、この流れはしゃれになんないやつじゃん」
――これは、どうするのが最善? 何か起死回生の一手は……。
するとパラパラと上から埃のようなものが落ちてくる。
「ん? 何?」
楓が見上げるのと同時に天井が抜けて瓦礫が落ちてきた。
「はあ!? お父さん?」
「うっ、げほっ。ああ、何だか苦労してるんじゃねえかと思ってな……。そのまあ、たまたま近くを通りがかっただけだ」
「何がたまたまなんだか。入口から突入すればいいのに、我慢できずに床というか天井を拳でぶち抜くなんて……。どうするんっすか修繕費。たぶん経費じゃこれ落ちないでしょ」
一緒に落ちてきた秋山少佐がそう言いながら服の
「な、何なんですかあなたたちは!」
神父は男たちを前に出して後ずさる。
「うえーい! 楓ちゃん助けに来たぜ! っていうか……、なんで大佐がいるんだってハナシだし……」
勢いよく入口の扉を
「お父さんは何やかんやいいながら、結局私に過保護なんだから……」
「いや、だって危なかっただろ? まあ、お前なら何とかしたかもしれねえが……」
「大佐、幹部の男が逃げます!」
秋山が神父の動きに気づく。
「おっ? こ、こら、待ちやがれ!」
玄武は奥の部屋へ消えた神父を追ったが、まんまと逃げられてしまったようだった。だがその他の男たちは全員捕らえられ、連絡を受けた公安に全員引き渡された。その後、軍が身柄を一時譲り受け精密検査を行ったということだが、男たちの体内のどこにも神父がいっていたようなマイクロチップは埋め込まれてはいなかった。楓を押さえていた男の怪力は強力な暗示の力によるもののようで、現在は引き続き薬物などが使われていないかも含めて軍が公安とともに調べているということだった。
「それでお前が映像で見たという機械兵器はこれで間違いないのだな」
秋山少佐が、軍の資料写真を指差した楓にそう言う。ここは軍本部の小会議室。他には楓の父である山本大佐が腕を組んで座っている。
「ええ、そうです。てっきりクマちゃんのブローチ越しに見てくれていると思ったのですけど……」
「いや、ずっと監視は続けていたし、その様子もすべて記録に収められているがそのような場面は一切確認できなかった。おそらくお前もあの男の催眠術か何かによって暗示にかけられていた可能性がある」
「はあ? あれは幻覚か何かだと? あんなにはっきりと見えてたのに……。でも私がさっき説明した旧北海道地区のあの場所、ススキノでしたか、衛星画像とぴったり一致してたじゃないですか」
「そうだな……。だがそれだけではな」
楓の潜入捜査中、彼女の身につけていた小型カメラ越しに監視が続けられていた。それもあの
ずっと黙っていた玄武が口を開く。
「で、俺の取り逃がしたのが国際指名手配中のテロリストでな。実はその例のカルト組織とはまったく関係はないらしい。捕らえた連中も奴がアメリカ本部からきた幹部だと思い込まされていたようだ。だからあの神父のことは何一つ知らねえときた。それに奴がどうやって逃走したのかも不明だ。あそこに裏口なんてなくてな。地下だし窓から逃げるなんてこともできやしねえ。付近の防犯カメラもすべてあたったがどこにも映っちゃいねえ。この辺りは犯罪率も高くて、ネズミの一匹も逃さねえような監視システムがあるにも関わらずだ。奴があそこに入ってくる姿すら確認できていない」
神父は有名なテロリストで、偽名を多く使っているのだという。楓はあのとき聞いた名前もそのうちのひとつなのだろうと推測する。押収したパソコンにも情報らしきものは何も残されておらず、現在、神父の捜索は行き詰まっているのだと楓は聞いたのだった。
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