終末世界の片隅にその花は咲いていた
卯月二一
第1話 10(イチゼロ)
20XX年人類は存亡をかけたおそらくこれが最後の戦いに突入していた。敵は同じ人間ではなく機械。そんなものは空想であると、薄々誰もが気づいていながら放置し、その利益を
「美しい『花』がある、『花』の美しさという様なものはない」
「先輩。なんすか、それ?」
「なんでも昔の偉い人の言葉らしい。先生がそう言ってたな」
「ああ、前の
「そうだな。
「そうっすね……」
「あの道の端に見えるだろ、黄色いの」
親子ほどの年の差がある年長の男の方がそう言って、手を伸ばし指差す。
「タンポポっすか。久しぶりに見た気がしますね。戦いが始まったのが冬でしたもんね。最近少し暖かくなってきたし、それで咲いたんですかね。少なくとも桜の咲く時期までは俺、生きてたいっす」
「そうだな」
「で、どういう意味っすか、さっきの?」
「知らん」
「えっ? 何か
彼らは五人で班を作り戦闘に出ていたが、既に三人、軍用ドローンの餌食になりこの二人だけが残っている。
「何か伝統芸能の『
「それって、全然分かってないんじゃ……」
「まあ、そうとも言うな」
「もう先輩……」
「いや、俺達が戦ってるあいつらに、あのタンポポの美しさが分かるんだろうかって思ってな」
「ああ、どうなんすかね。戦争前は俺達人間とまったく変わんない会話もできてたし、AIチャットで恋に落ちた奴がいたとかいないとか」
「あの頃は俺達のことを何でも理解しているように見えたしな。それに文句も言わずに俺達の
「どうしてそれがこんなことに……」
「先生が言うには連中は『0』と『1』で理解するんだとさ。もともとは人間が書いたソースコードをコンパイルして0と1のバイナリコードにするんだ」
「ソースとかパインとかバナナとか、分かんねえっすよ」
「そうか。なら、これってどう読む?」
男は若者の前に落ちていた小枝で『10』と土が
「十っすね」
「で、やつらにとっては俺達の『2』だな。いちおうこの10はイチゼロって読む」
「むむむっ……」
「ちなみに俺達がふつうに指を折って数えたら片手で5、両手で10までしか数えられんが、あいつらの2進数を使うと片手で31、両手なら1023まで数えられる。指が十本だから2の10乗は1024。0から始まるとして1を引いた1023通りだな」
「むむむっ……。まったく分かんないっす。でも、あいつらが俺の分かんないこと考えてるってことは分かったっす」
「それでいいんじゃないか。さっき通過したドローンもタンポポがあるのは認識したかもしれんが、それから何かを感じたかは分からんな」
「ああ……」
男はあたりを
「さあ、行くぞ。春になってもタンポポや桜の美しさの分かんねえ連中にこの世界はやれねえからな!」
「う、うっす!」
若者も
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