因果応報

宮音 葵@とあるお嬢様の専属メイド

EP.1 これは僕の

ふわぁ、とあくびをする。

僕の毎日はここから始まる。

布団から抜け出して、顔を洗うために鏡を見る。

「相変わらず、変化なし、と」

そう呟いてその場を後にし、僕は朝食の準備を始めた。


チーン

ちょうど着替え終わると、トースターが仕事を終えたと僕を呼ぶ。

今日の朝食はフレンチトースト、僕の数少ない好物のひとつだ。

美味しそうな匂いが辺りに漂い、僕はその匂いの出どころを持って意気揚々と椅子に座った。

「いただきます」

僕は手を合わせ、誰に向けて言うでもなく、されどこの生活が始まってから毎食言い続けてきた言葉を口にする。

それからフレンチトーストを口に運んだ。

パクッ

「ん、やっぱ美味しい」

僕は思わずそう呟いた。

それほど、僕はフレンチトーストが好きである。

そして、僕がフレンチトーストの最後の一口を飲み込んだ時。

毎度必ず、音が鳴る。

ピーンポーン

チャイムの音。

「はいはーい」

僕はそう返事をして、玄関へと向かった。

ガチャ

「今日は準備できてる?」

開口一番これだ。

僕の信用は相当無いのだろう。

まあそりゃそうか。

「もうそろそろ来なくなるぞ。今だって久里くりの慈悲みたいなもんなんだから」

久里、というのは、先ほど僕に準備は出来ているかと聞いてきた幼馴染の1人だ。

「ごめんって、久里、陽登はると

僕は2人に謝り、それから「ちょっとだけ待ってて」と言い残して奥へと急いだ。

久里は中々に美人だ。陽登だってイケメンの部類に入る。

でも、僕は特に何も無い。

強いて言うならこの月色の瞳だけど、それなら久里は青色の瞳を持っているし、陽登だって橙色の瞳だ。

つまり、僕が彼らに勝っている要素は1つもないということ。

久里は文武両道というハイスペック型だし、陽登は運動ができて、勉強もそこそこできる。

僕はどちらも平均値だ。

いつも朝つきまとう暗い思考を振り払い、僕は準備を始めた。

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