その命令は蜜の味
無雲律人
前編
「高山部長、この書類の決裁をお願いします」
「……置いておけ」
俺は
「高山部長、今日もクールよね。あの命令口調のまま夜の営みで囁かれたいわぁ」
「命令口調だけどパワハラするわけでもないし、部下への気遣いも完璧だから、あれはクールな俺様上司ってやつよねぇ」
俺に好意を向ける部下がいるっていうのは重々承知している。だが、俺が求めるのは、唯一俺に命令出来るあの女……妻の
***
「ただいま、莉愛良」
「お帰りなさい。早速だけど、今日はアクアパッツァの気分ね」
「……今すぐ作るよ。二十分だけ待ってくれないか?」
莉愛良は生まれも育ちも生粋のお嬢様ってやつだ。生まれながらにして女王の気質を持った彼女は、俺の事も夫ではなく小間使いくらいにしか思っていないだろう。
「それより喉が渇いたわ」
「今日はアクアパッツァだから白ワインを開けようか?」
「えぇ。今すぐ飲ませて」
「……今、グラスを……」
「私は今すぐ飲ませてって言ったのよ」
俺は、冷えた白ワインを口に含んで、彼女の艶やかな唇の中に落としこむ。ただの白ワインが極上のそれに変化する一瞬だ。
素早く着替え、手際良く料理をする。宣言した二十分後にはアクアパッツァとサラダが出来上がっていた。
彼女はテーブルの下で、綺麗に塗られたペディキュアの足先を俺の太腿に這わす。これは、今夜するという合図だ。
俺はどこまでの彼女の隷属で、彼女の命令に背く事なんて出来ない。いや、彼女の命令ならば何でも受け入れる。莉愛良の命令は蜜の味なんだ。例えそれが死を求めるものならば、喜んでその命令を受け入れるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます