第2話 酒場とノリ
うぉぉおぉおぉぉおおぉおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。
盛り上がってるか?
ルクスが店に入るとそこは地面が揺れ、煽り昂った空気に包まれていた。
「盛り上げてくぞ! 飲め。ハイ! ハイ! ハイ!」
扉を跨いだ先は、異世界だった。飲んだくれたやつが踊り散らかし、奇声を放つ。
「おっ! ルクスじゃねぇか」
アイアンハートはルクスの姿を見つけるや否や呼びかけた。
こんな空気についていけるわけがない。
ルクスは扉から出ようとした時、裸の男性が二人立ちはだかった。
「まぁ、そう恥ずかしがるな。一回俺らと一緒に飲んでみな」
「そうだぞ、絶対楽しいぞ!」
裸の姿で腕を組み、仁王立ち。
(この人達、自分が裸だってこと気づいてるのか?)
「用事を思い出したので」
「いいから、いいから」
二人の間を通り抜けようとするが、裸の二人は張り手で押し返す。
なくなく席に座った。
アゲてくぞぉぉおぉぉぉぉ・・・。ほい、ほい、ほい、ほい。
この酒場の空気を占領している黒髪の声に合わせて周りも相槌を打つ。
「盛り上がってねぇなぁ、もっっっっとテンション上げてくぞ」
ーウェーイ。
黒毛はいかにもな服装で真っ赤で派手な服装だ。
遠くからでくっきりと分かるほど派手で、目立った。
ルクスは思った。
あれとは話すこともないだろうと。
隣にいる彼にルクスは居た堪れず悲しかけた。
「アイアンハート、着替えてきたのか?」
「誰があんな重い装備で酒を飲むんだよ」
「イフェンとミゼリアは?」
「あ? ほらあそこで突っ伏して寝てる」
そう聞いてルクスは一安心した。
「それより飲め。はい、はい、はい、はい」
リズムよく黒髪の声に合わせて、酒を勧めた。
「アイアンハート、酔ってるだろ?」
「お前も早くこっちに来い」
そういう彼は勇者一行とは思えない姿だった。
(絶対行きたくない)
「いや、アイアンハート、君自分の姿分かってる?」
「俺の事か?」
彼は立ち上がり、一糸纏わぬたくましい筋肉を披露した。そして何かを探す仕草を見せた。
「あっ!」
(気づいたか・・・)
「ポケットに入れていた宿の鍵が無い」
「いや、全部ないけどな」
そう言っても彼には聞こえて無かった。
「鍵のことはいいからほら飲め」
「僕は少しだけしか飲まないから」
一時間後
「よっしゃーーーーー、飲んでくぞぉおおぉぉおぉお」
ルクスはハメを外していた。
なんだこれ・・・めっちゃ楽しい。
今までに感じことのないなんだこの幸福感と開放感は・・・。
この身を全てを曝け出している感覚だ。
最高だ
ウェーーーい。
ルクスは大声で場の雰囲気に乗った。
その酒場の怒号と騒然たる空気は朝日が昇るまで続いた。
眩しい日差しでレクスは起きた。
まだクラクラするが意識はあった。
「大丈夫か?」
誰かがレクスに話しかけた。
レクスは見上げると、昨日飲みの中心にいたあの黒髪だった。
「ああ」
「周りを見てみろ」
酒場の外に雑に放り投げられた大勢の人たち。全員下着姿や裸姿だった。
(何やってんだよ)
「アイアンハート、君もか・・・」
案の定、勇者一行の彼もだらしなくマッパで倒れ込んでいた。
勇者一行として情けないと思う。
彼は頼りになるし、行動力もあるけどあの姿だけは見せたらダメだと思う。
頭を抱えた。
「立てるか?」
黒髪は手をレクスに差し伸べた。
「ありがとう」
レクスは立ち上がった。
(怖い印象だったけど、意外と優しいんだな)
「俺はもう行く、探さないといけないやつがいるからな。お前はどうするんだ?」
「僕は友達を宿まで届けないといけないな」
「そうか・・・、じゃぁな」
黒髪の彼は短い丈のスボンのポケットに両手を入れ、歩いていった。
意外と飲むのも楽しいかもしれないな・・・。
ルクスが彼の後ろ姿を見て感じた。
その時。
「あっ! それとお前、見た目によらずあそこ大きいんだな」
彼は振り返りルクスの下半身を見てそう揶揄い口調で言った。
「・・・?』
なんのことかルクスは理解できなかった。
(何を言ってるんだあいつは?
そういえば、なんか寒いな
アインアンハートを起こしに行くか)
ルクスは道端に投げ出されている人と服をつま先立ちで避けながら器用に前へ進んだ。
「・・・・っん? っっん?」
理解できなかった。
そこには着ているはずの自分自身の服があったのだから。
(おい。まさか・・・)
信じたく無かった。だって、そうだろ朝早いとはいえ、人が前を通ってる。
そんなことありえるわけがない。
ルクスは恐る恐る、真下を向いた。
王様、僕はもう無理かもしれません。
真下にあったのは、剥き出しになった体だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます