すべてを奪われた男はやり直し人生で復讐する
あ、まん。
第1話 やり直し
「私たち別れましょ?」
なにを言われた?
聞き間違い、だよな。
だって、これからプロポーズして結婚するつもりなんだから。
だから今のはなかったことにして告白する。
「咲良、これを」
婚約指輪の入った箱をひらく。
仕事でどんなにつらいことがあっても支えてくれた彼女。
だから生涯のパートナーに選んでほしい。
「はぁ……今の話聞いてた?」
うそだろ?
やめてくれ。
そんな冷たい目で俺を見ないでくれ。
日曜日、都内某所にある高級レストラン。
彼女が途中で去った後も次々とコース料理が出されるが正直、味がわからなかった。
翌日の月曜日。
同期だが直属の上司である本庄係長と一緒に人事部から呼び出しを受けた。
「甲田君、キミのパソコンから証拠が見つかったよ」
「そんな……なにかの手違いです。俺はやってません」
ライバル社への不正な情報提供の証拠?
そんなバカげたことを俺がやるわけがない。
この7年間、必死に働いてきたのにいまだに平社員のまま。
同期の本庄係長はすでに係長まで昇進しているのに……。
「甲田、おまえ……」
「ちがうんだ本庄……係長。俺はやってない」
「では失礼します。課長にも報告がありますので」
人事部から今日付けでクビを伝えられた。
首をかしげて放心状態になったまま廊下を歩く俺の肩を本庄係長がたたく。
「まあこの会社はおまえに合ってなかったと思ってあきらめろ。なっ?」
日に焼けた顔からのぞく白い歯。
気休めだとしても、同期のよしみでなぐさめてくれている。
返す言葉が見つからず、うなだれたまま営業3課に戻り退職のあいさつを済ませた。
「やっぱりねって感じだよね?」
「しーっ、聞こえちゃうよ」
「だいじょうぶだって。どうせカラ男、今日でクビだし」
荷物を片付けている間に遠くで話す女子社員たち。
何年か前から自分がカラ男と呼ばれていることは気づいていた。
カラ男というのは「空まわり」からきているらしいことも知っている。
学生時代は勉強一筋。
社会人になってからは同期の誰よりも仕事に打ち込んできた自信がある。
でも、報われなかった。
それどころか、やってもいない不正でクビにされた。
元カノである今野咲良をひと目見ようと隣の営業2課に顔を出した。
だが、今日は休みらしく結局、彼女に会えずじまいだった。
その夜、折りたたみの椅子とロープを持ってひと気の少ない公園へやってきた。
もういいや。
遊歩道からすこし外れた茂みのなか。
ここなら、朝になれば誰かが発見してくれるはず。
それよりさっきから少し離れたところでバカップルがいちゃつく音が聞こえる。
夜の公園とあって声は出していないが、服の擦れ合う音まで聞こえてくる。
非常に迷惑だが、いまさら後に引けない。
適度な高さで、おとなの体重に耐えられる太い枝にロープをセットして椅子を蹴る。
ああ。
これで楽になれる。
つまらない人生だったな。
もし人生をやり直せるなら、次こそはうまくいけるはずなのに。
「カラ男のヤツ。俺が仕掛けた罠でまんまとクビになってやんの」
「感謝しなさいよ。あんなチビの彼女役をやってあげたんだから」
「わかってるって、ご苦労さま」
「もう……じゃあ、あと1回しよ?」
は?
聞き覚えのある声。
ふたりとも俺のよく知っている人物だ。
元カノ今野咲良(こんのさくら)と元上司の本庄拓弥(ほんじょうたくや)。
また行為をはじめる二人。
だまされてた?
彼女のフリ?
俺がクビになったのは本庄の罠?
ロープで首を絞めつけられていて、声を出せない。
頭の中がめちゃくちゃなまま、俺は意識が遠のいていくのに気づいた。
コイツら、
「うわぁぁぁぁっ!」
跳ね上がるように飛び起きた。
自室アパートのベッドの中。
今しがた公園で首を吊っていたのに?
っていうか、なんだかおかしい。
部屋の模様が変わっている。
──いや、見覚えがあると言った方が正解かも。
ベッドの上で充電しているスマホに触れると2コ前のものだった。
日付を確認すると7年前の入社日の当日になっていた。
夢、か?
テレビをつけてもだいぶ前に見たCMが流れていた。
チャンネルを変えても同じ。本当に7年前に戻ったらしい。
んー。
なんだこれ?
視界の左上の端っこ。
何回まばたきしても消えない小さな下向きの矢印「▼」みたいなのがある。
目に力を入れてその矢印を凝視するとステータスウインドウが開いた。
──────────────
名前:甲田蓮
年齢:23歳
身長:160センチ
股下:70センチ
魅力:58点
年収:288万円
資産:51万円
身体能力:61
メンタル:123
説得力:111
問題解決:137
リベンジ:0P
──────────────
自分の情報が数値化されている。
7年前に戻った挙句、ワケのわからない能力まで身に着けている。
夢、ではなさそう。
鏡を見ると、当時の髪型ですこし若返った自分が写っていた。
すこし考えてみた。
だが、当然答えなんてすぐに出るものじゃない。
もうこんな時間か……。
時計を見るとそろそろ準備をはじめないと入社式に間に合わなくなる。
いったん悩むのをやめて、会社へ行く支度をはじめた。
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