第12話 海にぃ、倒れる

俺の名前は森内海もりうちかい

親に捨てられた貧乏な中学二年生の年代の男子。

同じく親に捨てられた貧乏な小学五年生の年代の森内緑もりうちみどりという妹がいる。


遊園地の十周年パーティーの代役を依頼されて、昨日リハをしてきた。

でもまあ、いろいろな大会に出て、人前に立つってことには慣れてるとはいえ、久しぶりだし。

あの有名人たちとパーティーをするってなると、やっぱしどろもどろ。

台詞をかんだりだか、ホント大失敗。

椿は明るく励ましてくれたけど、やっぱ心配。

だから、みどりんより早く起きて練習中。


誰もいないところでできたって仕方ないから、スマホで検索した出演者の方々の写真をコピーして、前報酬としてもらったテレビに映して練習している。

椿たちからもらったテレビは俺から見て結構でっかくて、画像もきれい。

すげえなって毎日感心しながら一分ほど見つめる。


「では次はこちら。みどりん、説明お願い。」


ココでみどりんが話す。みどりんって呼ぶのかと思ったけど、その方が個性が出るって。このモテモテ兄妹感を出したいって。椿が言うから。


「こちらは―――」


あれ、何だっけ。俺は見えなくしていた台本を拾い、台詞を確認する。

ああ、そうだった。

「こちらは難しいですね~。お話によると、遊園地のみなさんもあまり覚えていないとか。」

一応台本を見ながらできるけれど、ずっとみてっぱなしじゃかっこ悪い。

椿も見るし。なんだかんだ言って、椿のことが好きだったらしい。俺は。

一緒にいると、ドキドキして、楽しい。果林には悪いけど、モヤモヤもなく、とても楽しいんだ。だから、椿にはいいカッコ見せたい。

そう思いながら息を吸い込む。

「チクタク チクタク 答えはこちらです!」


「おはよう~~。」

「おっ。おはよう、みどりん。今日もいい天気だな~。」

「ね~~。」


みどりんが起き上がる。寝起きの顔が一番かわいい気がする。

空にも見せてあげてえな。今度、空達を呼んでお泊り会でもしようか。

そんなことを考えていると、みどりんがテレビを見る。


「いつ見てもすごいよね~。ほんと。」

「ああ。ほんと椿たちに感謝だよ。」


俺が返したら、みどりんがクスリと笑う。


「フフッ。椿さんが聞いたら喜びそうだね。にしても海にぃ。練習してたの?」

「ん?ああ。」

「熱心だなあ。尊敬しちゃう。」


みどりんに褒められるのは、悪くない。

みどりんはたったかとキッチンにかけていく。


トポトポ


お茶を入れる音がする。何だろ。

みどりんがお茶を持ってやってきた。


「練習するのもいいけど、ちゃんと休憩してね。海にぃ。」

「フッ。ありがとうみどりん。優しいなぁ。ほんと。」


そう、優しすぎる。俺は心の底から感謝しながら、カップを手に取る。



お昼になった。そろそろ休憩しようかと、思って机に向かう。

キッチンへ向かって、手を洗う。さて、何を作ろうか?

冷蔵庫をのぞいてみる。

――卵、牛乳、麦茶、納豆、レタス、ブロッコリー、キュウリ、ヨーグルト

なかなか材料はあるな。

卵と、フライパンを取り出す。まずは目玉焼きでも作ろうか。


サラダ油を捜してフライパンに薄く引く。

卵を常温にしてからわる。

弱火で焼く。7分ほど待って、完成!


卵焼きを大きなお皿に一つずつ入れる。いつもみどりんがやってくれるから、たまにはね。みどりんは自分の部屋で何かしている。

多分、今はハマっているというアクションゲームだろう。

レタスをジャパジャパと洗うと、ちぎってお皿に乗っける。

それにブロッコリーやキュウリを乗せて、マヨネーズをかける。

椿がくれた冷凍ご飯を、かなり年季が入ったレンジに入れて温める。

少しほぐしてからまた、お皿に乗っける。

コップに麦茶を入れて、完成!


みどりんを呼ぼうかな。

俺はみどりんの部屋へ行こうとして足を踏み出す。


フラッ


あれ、なんか今めまいがしたような,,,,

足がふらつく。どうしたんだろう、俺。


コンコン


みどりんの部屋をノックする。

「あっ、海にぃ。ご飯?ごめん!忘れてた!ちょっと待ってて!」

みどりんがあせる。

「大丈夫、みどりん。俺が、作った。」

「え!ありがとう!!」

みどりんはスキップしながら机へ向かう。

「わあ!すご~い!おいしそう!」

「食べよーぜ」

みどりんが喜んでくれて大満足。俺は椿が増やしてくれた椅子を引くと、座る。


クラッ


また、めまいだ。

みどりんは平然としている。


「いただきます!」


パクパクとみどりんが食べ始める。そして、俺の異変に気付く。

「どうしたの?海にぃ。大丈夫!?」

「いや、ちょっと、ふらついただけ,,,,」

強がるも、クラクラしてみどりんの様子がよくわからない。

俺は立ち上がって少し歩いてから転んで、壁にもたれかかった――


「海にぃ!?海にぃ!?」


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