第43話「王宮からの召喚状」
ミリアは、商店の業務に追われながらも、変わらぬ日常を過ごしていた。
発注書の確認、商品の分配、業者への指示出し——すべてを効率的にこなしていた。
しかし、その平穏は突然訪れた王宮からの使者によって破られることになる。
***
その日、ミリア商店の前に一台の馬車が止まった。
商店の従業員たちが戸惑う中、馬車から降り立ったのは、リーフレット王国の第五皇女、サラ・リーフレットだった。
「こちらにミリアさんはいらっしゃいますか?」
透き通るような赤い髪が陽の光に照らされ、優雅に揺れる。
従業員の一人が駆け寄り、丁寧に答えた。
「はい、店内におります。お呼びしましょうか?」
「いえ、これをミリアさんにお渡しください。」
サラは落ち着いた口調で言い、ひとつの筒状の封筒を手渡した。
それには、王宮の印がしっかりと押されている。
用件を告げると、彼女はすぐに再び馬車に乗り込み、王宮へと戻っていった。
従業員はその筒を手に、店の奥へと急いだ。
「ミリアさん、王宮の方からこれを預かりました。」
「誰が持ってきたの?」
「赤い髪の女性でした。」
赤い髪——ミリアはすぐに思い当たった。
(もしかして……サラお姉さま?)
ミリアは手紙を受け取り、慎重に封を開けた。
中には、父であるレイヴァン・リーフレット国王からの書状が収められていた。
ミリアへ
この手紙を見ているということは、以前の書状を受け取ったのだな。
王宮の資金難が再び深刻化しつつある。
この状況を打破するため、お前の知識と経験が必要だ。
至急、王宮に来てくれ。
——レイヴァン・リーフレット
「……やっぱり、そうなったのね。」
ミリアは手紙を握りしめ、深いため息をついた。
本来の目的であったリーフレット王国の資金難問題——その解決策を見出せないまま、時間だけが過ぎてしまっていた。
(でも、まだ完全に解決できたわけじゃない。)
ミリアは、王宮へ行くかどうかを迷った。
しかし、王国の未来を考えれば、自分の知識が少しでも役に立つなら……。
「……行くしかないわね。」
ミリアは決意を固め、商店の従業員たちを集めた。
「みんな、突然だけど、王宮に行かなくちゃいけなくなったわ。お店のことは副店長を中心に、みんなで協力してお願いね。」
「ミリア店長、気をつけてください。」
従業員たちはミリアを見送り、彼女は王宮へと向かった。
王宮の門には、いつも通りの兵士たちが立っていた。
ミリアは首にかけていた王宮の紋章を見せ、門を通る。
かつては日常だったこの場所も、今では遠く感じる。
(久しぶりの王宮……やっぱり広いわね。)
まるで別世界に戻ってきたような感覚だった。
ミリアは一人、父が待つ大広間へと向かう。
しかし、この時のミリアはまだ知らなかった。
自分を待ち受ける出来事が、単なる資金難の相談だけでは済まないことを——。
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