第21話 新兵器のお披露目
「ん……結界?」
少しザワッとしたけど、魔道士さんには、はっきりと感じられたらしい。
ルフィーアさんが、とんがり帽子のつばを持ち上げた。
何ということのない(?)普通のジャングルの木々の間を進んでいるだけなのだけど、結界が張られているということは……ここから先は魔族領なのだろう。
「さて……鬼が出るか、蛇が出るか……」
「どっちでもぶっ潰せばいいけど、出るのは魔族だろ? ただ叩きのめせばいいなら、楽なんだけどなぁ……」
「お手数おかけします……」
きゅうさんの戯言に、脳筋第二号のディアーネさんが、豪快に突っ込みを入れる。
私もその方が楽だなぁとは思うけど、どんな方々なのかを知らないと、対応を決めづらいじゃない。
そもそも、どんな姿をしているのかさえ、プレイヤーはまだ誰ひとり知らないのだ。
お姫様に「敵だ」と言われても……って感じ。
本当に忌むべき相手なら、何も考えずにジェノサイド! を宣言するんだけとなぁ……。
「大量殺戮兵器なんて……作ってないですよ、ね?」
フレイヤさんの盾の縁に、ツバメくんと並んで腰掛けたロリエーンちゃんが、一応尋ねる。
作ってませんって! 平和主義な妖精さんですよ? 私は……。
「さっきテスト仕掛けた『新兵器』を、先に見せて欲しいもんだ」
「そんなに物騒なものじゃないよ? ひとつは、火薬式の普通の散弾銃だし」
ロックさんに訊かれて、素直に答える。
拳銃、ライフル、機関銃は有るけど、散弾銃は無かった。
だいぶレベルは上がったけど、まだ照準に難がある私だから、作ってみた。
それを聞いて、シフォンが眉を吊り上げる。
「ちょっと、シトリン。あなたのポジションの前にいる前衛は、誰だったかしら?」
「やだなあ……。シフォンだってことくらい、訊かなくても解ってるくせに」
「後ろから散弾銃を撃とうとしていた人が、何を言ってるのよ。私のお洋服を穴だらけにしたら、ただじゃ置かないわよ?」
あ……。
そういう、フレンドリーファイアの恐れがあった。
ゲームだから、怪我をしても治せるし、死んでも、死に戻りできるけど、お洋服は直せない。
シフォンが怖いよぉ……。
「……これも、封印します」
「封印するくらいなら、俺に持たせてよ。自衛手段は何も無いけど、散弾銃なら、とにかく撃ちゃあ当たるだろうし」
万が一シフォンに当たっちゃった時のことを考えると、私は持ちたくない。
素直に、きゅうさんにプレゼントします。返却不要、代金不要。
小首を傾げて、フレイアさんが妖艶に尋ねる。うん、大人の色気ってやつだね。
「それで、もう一つは何を作ったの?」
「これだよ。他愛のない玩具です」
「まさか、マスターグレード・プラモデルのビームライフルとは言わないよな?」
ロックさんの言っていることは良く解らないけど、私が持っているから、このサイズになってるだけ!
自分で材料を鍛えて、部品を作ったんでしょう?
「お前はいつも、設計図だけ持ってきて、必要なスペックしか言わないじゃねえか。何を作っているかなんて、解るかよ?」
「そこは愛で解ろうよ」
「「絶対無理だろ(でしょ)!」」
ロックさんとシフォンの声がハモった。……酷い。
冷静に、ルフィーアさんが突っ込む。
「その愛……きっと一番欲しがるのは、運営」
そんなに、みんなで爆笑しなくても……。
どうせ、運営さん泣かせのモノばっかり作る、妖精さんですよぉだ。
キラキラっと、ロリエーンちゃんが飛んできて尋ねれる。
「結局、それはどういう銃なんですか?」
「ん? ロックさんがニアピン。ビームは撃てないけど、ただの魔導ライフルだよ?」
「ちょっと待って……魔導ライフルっていう言葉を、初めて聞いたのだけど?」
目を白黒させるフレイアさん。
実は私も、初めて言った気がする。
大げさに肩を竦めて、溜め息を吐くのはシフォンだ。
「あなたはいつの間に、そういうものを作ってるのよ……」
「魔法の矢羽根に目処がついたあと?」
せっかく作った『ラピュタの雷』も、「対運営用にしておきなさい」って、みんなに封印させられちゃった……。普通の銃では、帯に長し襷に短しだから、自分用の武器を検討してたの。
それなりに威力があって、実用的なやつ。
「説明してもらうより、実際に撃ってみてよ。ちょうど手頃なのが来た」
気軽にディアーネさんは言うけど、虎さんは手頃じゃないと思うの?
しかも、あんなに牙が長いのに。
赤いタワーシールドに半身を隠し、真っ直ぐ後ろに引いた右腕に斧を構えて待つ。
惜しい……武器がちょっと違うったら、もの凄くガン○ム。
実は私も、他人の事は言えなかったりする。
自分の顔くらいある、ペロペロキャンディーみたいなターゲットサイトを起こす。
なんとなく大きい方が、当たりそうな気がするじゃない。気分は大事。
手前のレバーをガチャガチャ動かして、魔法陣の属性を……期待に応えて、光属性にしよう。
サブグリップを起こして、両手持ちで確実に狙うよ!
「最初の攻撃を跳ね除けたら、撃ち抜いてよ!」
飛びかかってくる虎さんの長い牙を、続く左右の爪を、ガッチリとタワーシールドで受け止める。
横薙ぎにする斧を跳び上がって、虎さんは避ける。……うん、無防備。
何となく、あの長い牙は素材になりそうだし……心臓狙いで!
デュゥゥン!
魔法の光弾は、ちょっと外れたけど虎さんの横っ腹に大穴を開けた。
「キャイン!」
……ちょっと悲鳴が可愛い。でも、君はネコ科じゃないのか?
反動で木に叩きつけられたトラさんに、シフォンが止めを刺しに行った。
「サーベルタイガーも一応……獣なのかしら?」
「化石が見つかってるから、獣で良いんじゃないでしょうか。……それより、シトリンさん。それってマジで、ビームライフルでは?」
「今は、期待に応えただけだよ? 魔法陣を切り替えると、炎弾とか氷弾とか撃てるもん」
きゅうさんにドヤ顔で答えたら、みんな頭を抱えた。……なぜ?
「ファンタジーの世界だぜ……? 一番ファンタジーっぽい妖精が、独りで宇宙世紀に行くなよ……」
そのパーツを作ったのは、ロックさんでしょうに。
錬金術って、面白いや。魔力爆発を起こして、魔弾を撃つ機構の鍵になったのは、マリンメタルだ。
銃身の内側は、螺鈿貝で魔力をガイドしている。
どちらが欠けても成立しなかった武器だけに、錬金術師冥利に尽きるよ。
みんなの、呆れ返ってる眼差しが痛いけど……。
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