第3話、もしかして希望のあるスキル?

 ステータスの数値的に、私が弱いのはわかった。

 でもダンジョンハンターとしてやっていくなら、ステータスばかりじゃない。スキルだって重要なはずだ。

 それくらいは、素人の私にだって想像がつく。


「お姉さんさ、私のスキルって名前だけ見た感じ、よくわかんないんだけど。これって、どうやって調べんの? もしかしたら、めちゃ強いかもよ?」


 私のスキルは『ウルトラハードモード』らしい。この名前だけじゃ、何がどうなるスキルなのかさっぱりだ。

 でもウルトラだからね。なんか強そうな感じはある。


「実際に使ってみたらいいわよ」

「えっと、どうやって使うとかある? 使ったことないんだけど」

「それはそうね、基本的にスキルはダンジョンでしか効果が出ないから。ただ、スキルは人それぞれだから何とも言えないわ。よくあるパターンだと、普通にモンスターとかの標的に向かって、スキル名を叫んだり念じる感じかな」


 必殺技を繰り出す感じか。でも私の『ウルトラハードモード』は、そういうのとは違う気がする。なんとなくだけど。


「ほかには、どんなのがあんの?」

「そう言われてもなー。ホントに人それぞれなのよね。分類的にはさっき言ったのがアクティブスキルで、何も意識しなくても勝手に常時発動するのがパッシブスキルって感じかな。ほかにもいろいろあるけど、基本的なことならパンフレットに書いてあるから読むといいわ。ほら、そこの本棚にあるから」


 なるほど、まあ自分で試してみればいいのかな。

 私のスキルは強そうな名前の気がする一方で、わかりやすい攻撃系のスキルとは違いそう。

 そうすると、やっぱりダンジョンハンターは向いていないのかな。


「うーん、どうしよ。結局、ステータスは弱いみたいだしなー。私のスキルが攻撃系じゃなかったとしたら、ダンジョンで稼ぐには向いてないってことだよね。まいったね、こりゃ」

「葵ちゃん、荒稼ぎしたいとか言ってたわね。お金が欲しいの?」

「うん。ちょっとでいいから稼ぎたいんだけど、ほかにあてがなくてさ。どうしたもんかな」


 お姉さんは私のみすぼらしい格好に気づいていながらも、個人的な事情に関与するつもりはないらしい。

 同情してご飯くらいおごってくれてもいいのに。


「第一階層じゃ稼げないけど、レベル上げでもする? レベルを上げて第二階層に進めるようになれば、お小遣いくらいは稼げるわよ。最高に運が良ければドロップアイテムが取れることもね。これはまあ無理だろうけど、ほかにあてがないならとりあえず行ってみたら? この東中野ダンジョンの第一階層だけなら、特に危険はないし」

「ドロップ?」

「葵ちゃん、何にも知らないわね……」


 呆れた顔のお姉さんに、追加でなんやかんやと教えてもらい、小難しい説明を受けたり誓約書に署名をさせられたりした。

 ついでにこんなもんで本当にいいの? といった感じの軽い講習も受けた。どうやら私が中学でダンジョン学の授業を取っていたことで、講習が簡易なものになったらしい。


 いや、授業内容なんて全然覚えてないんだけど、それでいいのかな。まあいいか。

 でもって、とりあえずダンジョンに行ってみることにした。スキルも試したいし、お金を稼がなきゃね。


「あ、そういや武器とか持ってないや」

「第一階層のモンスターなら大丈夫。靴で踏んだら倒せるから」

「そうなん?」


 楽勝じゃん。


「ちょっと大きなダンゴムシみたいなモンスターなんだけど、葵ちゃん、虫とか平気?」

「余裕。ところでさ、ほかに誰もいないの? このダンジョン過疎ってる?」

「ここが人気ないのは事実だけど、さすがに誰もいないってことはないわよ。それにこの時間から入る人はあんまりいないから」


 そろそろ日付が変わりそうな時間だし、それもそうか。


「ただ、入る人はいないけど、出てくる人はいるかもね。深い階層まで行く人や、終電間際まで粘る人たちはいるから」

「あー、帰ってくる人たちね。まあいいや、とりあえず行ってきまー……あれ、ダンジョンってどこから入るん?」

「ダンジョンはあっちの奥ね。迷わないと思うけど、第一階層の地図も渡しとく。くれぐれも第二階層に行ったらダメよ。葵ちゃん、ステータス弱いからレベル上がってもちゃんと準備しないと死ぬからね。もしスキルが強くても油断はダメよ。あと寝不足は美容の大敵だから、ほどほどにねー」

「ほーい」


 どうやらダンジョンへの入り口は、この建屋の中にあるらしい。

 向かう途中でちょうど仕事終わりっぽいハンターたち数組とすれ違った。終電に合わせて帰るつもりなんだろう。遅くまで仕事熱心な人たちだ。

 そんな彼らからは、こんな時間にソロでダンジョンに入ろうとしている私が珍しいのか、ジロジロとうっとうしい視線を向けられた。

 別に気にしてないけど、おひとり様でもいいだろうが。


 微妙に気分を害しながらも進んでいくと、地下に向かって伸びる大きな階段前に到着した。ぽっかりと地面に空いた穴が、なんだか不気味だ。

 さすがにちょっと怖い。でも行くぞ!

 お金、お金、お金!

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