第31話JTコーポレーション



JTコーポレーションと言うのは、智香の会社だ。正確に言うと、智香と甘楽の会社なのだが、智香はそれを甘楽には明かしていない。


JTとは、タバコとはもちろん関係ない。上新智香のことだ。どこかで改名するかもしれないし、ジャパン何とかだという言い訳もできるように考えている。


智香の指示で、代理人の会計士と弁護士がいろいろできるようにしている。

先ほど電話したのは会計士だ。



甘楽の父親は、自分の経営する会社の株を売却して、大金を手にした。


株金持ちになった甘楽の父親が、成人している智香に対し、かなりのお金を預け、その金で設立したのがJTコーポレーションだ。


甘楽の両親の指図なくてもお金動かせるので、実質的には智香のお金、智香の会社と言っても良い。


相続税や贈与税をできるだけ小さくするような工夫もいろいろしている。


マンションの購入もその一環だ。実は、寮にしているマンションの部屋も、JTコーポレーションの持ち物なのだ。それをアムールが寮として賃借している。


甘楽は、マンションは親の名義だと思っているが、実際はJTの名義である。


それだけではない。実は、JTコーポレーションは、甘楽となじみたちが通っている学校に

多額の寄付をしている。 


ここは私立の学園で、高校と大学がある。

大学のレベルもそこそこ高く、卒業すればそれなりのステータスがある。


もともとは甘楽一人が高校から、エスカレーター式に大学まで卒業できるようにと言うつもりでの寄付であったが、今回寄付を増額し、甘楽と3人の授業料を免除するように、理事長と話をつけているのだ。


なじみの授業料を、場合によりアムールが肩代わりするという契約も、今となっては有名無実なのだ。なじみの成績が最優秀でなくても、特待生という名目で学費免除になる。


ちなみに、これも甘楽には秘密である。もちろん、なじみにも。


智香は、理事長だけに事情を説明している。なじみの正体を学校側で知っているのも、理事長だけだ。


理事長の力で、転校してきたノイセレの二人は、なじみと甘楽と同じクラスにさせた。


高校卒業までそのメンバーは同じクラスになる。


寄付は単年度ではない。今年を含めて7年間。つまり、1年生の皆が、大学を卒業するまで、授業料は免除になる。


というか、それを勘案しても、完全にお釣りが来るような金額の寄付を確約しているのだ。


これも、実は甘楽の父からの依頼である。



甘楽が成人になり、大学を卒業するまでは、少なくとも大きなお金は持たせたくない。だから、智香が管理してほしい。


ただ、甘楽がやりたいことがあるならば、それを最大限サポートできるようにというのがリクエストだ


父は、海外に出る前に智香に言った。


「甘楽をまともな大人にしてくれ。それが、私たちの智香に対するお願いだ。金持ちのドラ息子に育てないでくれ。彼に、自分で生きる力をつけてやってほしい。」


「もとよりそのつもりです。私は甘楽が大好きだけど、スポイルするつもりはない。ちゃんとした大人にするのが、私の務めだと思ってます。」


智香はきっぱりと答えたのだった。


だからこそ、智香は甘楽に家事を続けさせ続けた。

ハウスキーパーなど使わせない。


自分のことは自分でやらせる。

他人の分も自分でやらせる。

そんなモットーだった。


甘楽が、好きなことに没頭するのはいい。

でも、どこかでそれをどうやって仕事とできるか、そしてどうお金を稼ぐかを考えさせる。


そうやって育ててきた。


今回のプロジェクトに参加させるのにも、そういう理由がある。


カメラマン、映像クリエイター、アイドルを管理する側の仕事、プロモートする仕事、ウェブマーケティングの仕事。プログラミングの仕事。


いろいろ経験させている。


智香のひいき目ではなく、甘楽にはいろいろな才能がある。いまは様々な現場を経験させて、自分の好きなことを選んでほしい。


それが「保護者」としての「建前」でもある。


本音は別にあるのだが、それはまだ自分でも口にしないし、智香はそれを考えないようにしている。


智香自身がまず、自分のすべきことを成し遂げる必要があり、まだ道半ばだからなのだ。


何物でもない自分が、甘楽に偉そうなことは言えない。智香はそう思っている。



なお、智香は、淀橋家の養子になることが決まっている。これは、甘楽の両親が、智香を自分の娘として育ててきたことの証明でもあるが、加えて相続税の軽減のためでもある。

ただその辺は、甘楽が卒業してから話し合おうと思っている。


というわけで、今回の買収資金は、甘楽の両親から預かった、二人のために智香が自由に使っているお金が原資である。


ただ、もちろん智香も、実質二億五千万円支払った今回の買収で損をするつもりはない。この会社を使って、ノイセレを大きく発展させていくつもりである。


「これでウェブサイトの権利は私が持つことになるし、あの邪魔な上島専務を黙らせることができるわね。」


智香は笑みを浮かべる。



ちなみに、後日、ノイセレのプロジェクトのウェブサイトの費用は、今までアムールが全体のウェブサイトの運営費用として昨年払った分と同じ位の費用がかかることになった。


だが、智香はそれを気にしない。

システム担当の上島専務と話をつけたのだ。


「キックバックをもらっていた事は、業務上横領と背任になるわね。警察に言えば刑事事件になるし、アムールの社長に言えばあなたは懲戒免職ね。会社にお金を戻せとも言われるわ。


これ以上、お金を取らないんであれば、黙っていてあげるわ。そのかわり、ちゃんと、システムの費用は払ってあげなさい。」


上島専務は、しぶしぶ了承した。 智香としても、これ以上は何も言わない。


そういう取引をしたのだった。


これにより、ウェブ会社のエザリコの経営状況は劇的に改善することになる。

アムール本体の仕事でも料金を上げ、他社と同じくらいの費用を請求できるようになったことと、キックバックが無くなったことが大きい。


値上げについては上島専務が承認したので問題ない。


余裕もできたエザリコは、その後採用を増やし、他の仕事もどんどん受けるようになる。


最新のウェブテクノロジーを駆使したアムールのサイトを構築、運営しているという実績が大きいのだ。


売上が上がり、エザリコの企業価値も上がり、結果として株主であるJTコーポレーションの投資も回収できるどころ、あ含み益をもたらすことになるのだ。



☆彡


「ウェブのお膳立ては済んだわ。後は、ちゃんと稼ぐことね。


エザリコだけでなく、甘楽にも頑張ってもらわないと。


もちろん一番頑張るのはあの3人だけどね。私たちスタッフは、成功の後押しをするだけ。


私たちの力で、あの子たちをトップアイドルに押し上げてガンガン稼ぐわ。そうして、JTコーポレーションも大きくする。」



智香は、ひそかに闘志を燃やすのだった。




====

こんにちは。お急ぎですか。


…バイトしてる子もいるよ。



作者です。


今後の予告がリリースされても、もう同じものは見ないぞ! (独り言9


JTコーポレーションのことがある程度説明されました。

4人の学費なんか問題ないくらいの寄付をしてるんですね~


まあ、これも、智香の戦略の一つなんです。


JTコーポレーションをどうやって大きくするかは、智香の長期戦略に関わってくるので、すぐに実現するものではありません。



それはさておき、お楽しみいただければ幸いです。


ハート、★、感想いただければ幸いです。もちろんレビューも。

特に★が増えると作者は喜びますので、まだの方はお気軽にお願いします。





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