第22話 お披露目
「あなたたち、発表日が決まったわ。」
事務所の会議室で、智香が三人に言う。
今日はダンスのレッスンもあるので、三人はジャージ姿だ。
会議室は真夏でもガンガンに冷房が効いていて、ジャージ上下でもちょうどいい温度だ。
「発表って、メンバーとグループ名の発表ですか?」
巨乳優等生の爽香が聞く。
「ええそうよ。アイドルプロジェクトに選考された3人のメンバーの名前とグループ名、デビュースケジュールのお披露目よ。」
「あの、私は名前は野間奈美でいいんですよね?」なじみが確認する。
「もちろんよ。野間奈美。愛称はナージャ。それは決定事項よ。奈美、新学期になったらウィッグをつけてメガネの地味な女の子でね。」
「はい。ありがとうございます。」
「ノイセレ(Noisy Serenity)の発表は8月26日。奈美の次の雑誌が出る一日前ね。
それから、コミックスターに独占グラビア提供することにしたわ。
雑誌の発行は28日ね。
ただ、雑誌のインタビューは26から順次受けるわ。
コミスタはあくまで写真だけ。他の出版社にも気を使わないとね。」
「月末はすごく忙しくなるんでしょうか?」 なじみが尋ねる。
「そうね。発表前に、奈美はエイティーンの撮影があるし、別に3人でコミスタのグラビアも撮ることになるわ。」
「まさか水着ですか?」 ちょっとびびった顔で、長身巨乳女子の爽香が尋ねる。
「いいえ。普通の着衣グラビアよ。しかも写真だけで、名前とプロフィール以外の情報は載せない。それを条件にしても、コミスタは喜んで受けたわ。
大増刷の準備も始めたようよ。」
智香は笑顔で答える。
「ちょっと安心しました。」爽香が答える。
「ボクは水着でもいいけど。」小柄な杏奈が言う。
「こういうのは出し惜しみするのが定番よ。飢餓感を煽るのよ。あと、あまりエッチなイメージはあなたたち二人にはつけたくないし。」
「え、私はエッチな売り方をされるんですか?」なじみが驚いて尋ねる。
「いいえ。当分は水着は封印ね。ナイスバディのモデルということにするわ。ただ、あなたの水着姿は武器になるから、限定プロモーションでは使うかも。」
智香がちょっと含みのある言い方をする。
「え。それって何ですか?」
「未定よ。あくまで可能性。あまり男に媚びると女の子に嫌われるからね。モデルは、女の子の憧れでないとね。」
「…わかりました。」なじみは答える。
「両方の雑誌の発売は月末だから、新学期の学校でも話題になるわね。」
「なるほど~イイね!」杏奈が喜ぶ。
「それから少しずつビデオとか雑誌で露出をかけてくわ。デビュー曲のメジャーリリースは11月1日。こうすると、来年の賞レースになるからね。その時までに、振付を含めて最低でも4曲は完成しないとね。」
「えっ?4曲もですか?」なじみは驚く。
「何言ってるの。デビューライブでのセトリは普通は8曲くらいあるのよ。」
優等生の爽香が言う。
「あの…せとりって何ですか? 古本屋で本を安く買ってオークションで売るやつですか?」なじみがおずおずと尋ねる。
「ナージャ、何言ってるの。セトリはセットリスト。披露する曲の順番を含めた一覧の事だよ。覚えておいてね。」
杏奈が解説する。
「デビューシングルは2曲のシングルCD,カラオケとボーナストラック付きになるかな。3曲か4曲のレコーディングね。」
「あの、曲は、定番アイドルソングを使うんですか?それとも新曲? 新曲出来てるんですか?」爽香が尋ねる。
「まだよ。いま、4人の作曲家に依頼しているから、来週には4曲できるわ。それに作詞家に詞を書いてもらって載せて、まあデビュー曲のタイトルは8月では決まらないわね。
4人のうち前山川さんは作詞作曲両方やるから、早いかもね。
うまくいって仮歌のデモが月末に出来て、曲を決めるのはまあ9月半ばね。
レコーディングとプロモビデオの作成にも時間がいるから、10月頭には完成しないと間に合わないわね。」
「あの、完成って?」なじみが聞く。
「歌って踊ることよ。曲が決まったら、振付は3日であげてもらう。それまでに歌を暗記して、ダンスは2日くらいで決めて、すぐレコーディングよ。」
「…間に合うんですか?」なじみが聞く。
「間に合わせるの。それがあなたたちのミッションよ。時間がないから合宿生活なの。わかる?夜はあなたたちは8時までしかオフィスにいられない。
あとは部屋で練習よ。」
「四曲もですか?」爽香が尋ねる。
「最低でも三曲ね。CD分3曲は必要だし。無理ならボーナストラックはリミックスかフリートークでごまかすけど、それはファンには一発でわかるわ。」
智香が釘を刺す。
「あと、学業もあるからね。とくに奈美。成績は維持しなさいよ。授業で全部理解する。そうすれば時間の節約だから。」
「…頑張ります。」なじみはひきつりながら答える。
デビューへの道はかなり険しいことを、3人とも実感した。
毎日のボイトレとダンスレッスンにも気合が入る。
なじみは、エイティーンの撮影をする。
大塚カメラマン、甘楽が一緒なのは予定通りだ。
撮影に付き添いで来た伊藤編集長と智香が話している。
「情報解禁は記者会見リアタイとします。
ですから、リークは無しでお願いします。
インタビューはリアタイでネット中継します。そこで情報をウェブにもリリースします。
エイティーンには、『アイドルユニットデビュー―も決まってますます絶好調!』とその時点から情報解禁で予告を出してください。コミスタも同時リリースをお願いしています。」
「わかりました。その代わり、翌月には特集組ませてくださいね。できれば3人で。」
伊藤編集長は答えている。
(自分の知らないところで、いろんな事がどんどん決まるんだなあ。)なじみはしみじみと思う。
翌日は3人のグラビア写真撮影だ。
こちらはコミックスターに載ることになっている。
3人に対してスタイリストとメイクがそれぞれ二人ずつだ。ヘアメイクも二人いる。
「大人数ですね。」なじみが感想を言う。
「ええ。当然費用だってかかってるわ。それだけあなたたちに期待をしているのよ。 むしろ失敗は許されないわ。」 智香が厳しい顔で答える。
「…頑張ります。」
三人とも神妙な顔でそう答えるしかない。
8月26日に無事にデビュー発表を行った。
大手芸能事務所のアムールが主催したアイドルユニット募集結果の発表は高級ホテルで大々的に行われ、テレビ、ウェブ、雑誌、スポーツ新聞などが一斉に集まった。
その結果、つまりメンバーの顔と名前、そしてNoisy Serenityというユニット名は各メディアで大きく報じられた。
発表とほぼ同じタイミングで、なじみのエイティーンの予告がリリースされ、翌日に発売された。
またその翌日は3人のグラビア写真が載ったコミックスターが大増刷発行された。
もう後戻りはできないし、するつもりもない。 3人で、道を切り開いていくしかないのだ。
一方、リリースの晩、オーディションで会ったギャルの永伝美沙から、デビューを祝福する連絡があった。
「デビューおめでとう。返事こない理由わかったよ。解禁まで秘密だったんだね。うん、許す!
あと、あーしも今日発売のサンキャンに載ったから見てね!」
なじみが何とかサンキャンを4軒目のコンビニで手に入れて、三人でサンキャンを見ると、明るく笑うギャル、美沙がモデルとしてデビューしていた。
「お互い頑張ろうね~」エールを交換しあう4人だった。
ちなみに、ノイセレの詳細は載っていないが、エイティーンもコミスタも通常の号の倍を刷り、即完売となった。
「ボクたち、いいスタートを切ってるね。」ニコニコ顔で杏奈が言う。
「そうね。でも、だからと言って気を抜いたらダメよ。不断の努力が必要なんだから。」
まとめ役っぽい長身巨乳の爽香が言う。
「うん、こういう時はリーダーがしっかりする必要があるよね。リーダー、頑張ってボクたちをまとめてね。」杏奈が言う。
「本気で頑張りましょうね。」爽香が気合を入れる。
三人は固い握手をしあうのだった。
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こんにちは、お急ぎですか。
〇〇〇〇が戦えと言ってる。
作者です。
やっとデビュー発表しました。
これは「デビュー」なのかどうか?
一応、音楽リリースがデビューと考えています。
続きは…待つ間に★や💛でもつけてくださいね(笑)
お楽しみいただければ幸いです。
ハート、★、感想いただければ幸いです。
特に★が増えると作者は喜びますので、まだの方はお気軽にお願いします。
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