エンタメ作品のための創作理論

森野一葉

はじめに

 創作をやる人間なら、誰しも自分なりの創作論を持っているはずだ。

 それを厳格な法律のように遵守する人もいれば、ささやかなポイント程度に押さえている人もいるだろう。

 その創作論は創作をしたり、他人の作品をインプットする内に、次第に進化を遂げているものと思う。


 私の場合、自分なりの創作論はあるものの、以前からふたつの課題を抱えていた。

 ひとつは、きちんと言語化できていない創作論が多く、自分なりのルールすら守れていないことが多いということ。

 もうひとつは、創作論を他人に話す機会がほぼないため、自分ひとりの思想で凝り固まりすぎてしまっていること。


 この凝り固まった創作論を世にさらけ出す過程で、上記ふたつの課題を解決することこそが、本稿の最大の目的である。

 加えて、私が愛読している創作指南書『ローレンス・ブロックのベストセラー作家入門』において「創作論のコラムを書くことが得難い経験になった」という旨のことが書かれており、そういった刺激を私自身に期待している部分もある。

 また、私はこの手のエッセイや小論文的文章をまとめることを今まで避けてきたため、こういった文章を書くスキルを高めたいという目的もある。


 創作論を世にさらすことには、一抹の不安がないでもなかった。

 もしこの創作論をさらしてしまったら、私がわずかなりともライバルに対してリードしている部分がなくなってしまうのではないか、という不安である。

 鼻で笑って欲しい。自分ごときの創作論をさらした程度で不利益をこうむる可能性があるなど、思い上がりも甚だしい。

 大抵の書き手はここにたどり着くことすらないだろうし、運悪くたどり着いて読んだとしても、顔をしかめるか苦笑いをして去っていくのがほとんどだろう。

 自分程度の実績のものが書く創作論など、そのあたりが正当な評価だ。


 念のため明記しておくが、ここでまとめていく創作論が無責任で無意味なものだ、と言っているわけではない。

 私が創作の柱とする部分を記載しているので、少なくとも私自身は信じ、実践している――あるいは実践しようと意識している――創作論であることは確かである。


 ただ、私の創作論が必ず正しいとも思っていない。

 他の方が見れば浅く、視野の狭い節もあろうかと思われるので、もし思うところがあったらぜひ指摘していって欲しい。

 また、私が書く小説のジャンルが偏っているため、専門外のジャンルの話についてはまったく当てはまらないこともあると思う。

 私の好みの問題もあり、創作論の多くはエンタメ小説――それも主にライトノベルやミステリ――向けの内容に偏っていることはご容赦いただきたい。


 最後に。

 自分ごときの創作論なんて大抵の書き手の方には参考にならないと思うが、もし行き詰まってここに行き着いてしまった方がいたら、話半分で耳を傾けてくれたら嬉しい。

 もし、悩める作家のあなたにほんの一筋でも希望の光が差し込んだのなら、私も嬉しい。

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