鬼神に涙は似合わない
永寝 風川
一話「あの子はきっとここに居て」
「はぁ!?て、転勤?!」
俺の名前は
正義感が強い20歳の男性だ。
しかし、昔から体が大きいのと、目付きが少し悪いせいで他の人から少々怖がられる事がよくあり、どうしようかと日々悩んでいる。
そんな俺は無事警察学校を卒業して、本来新人として配属されるはずだった交番に着いた途端。交番所長、簡単に言うと交番で一番偉い人に呼び出され、急な転勤を言い渡された。
「いやな...ほら、お前が住んでいた村があるだろ?」
「あ、ありますね?」
俺は警察学校に入学する前、とある田舎で親と共に暮らしており、中学3年の三学期に親の事情で都会までやってきたのだが、その田舎の暮らしの事を警察学校の同級生に話していた事があり、それが上の人の耳に届いたのだろうと思った。
「その村の唯一の交番で長年、1人で勤務していた城川さんが亡くなったそうで、その交番に配属する人を探していたのだが....田舎だからなのか、そこに行きたい人が居なくてね」
「だから僕に白羽の矢がたったと?」
「うん。それに君は成績もいいし、自習先でもいい結果を出したと聞いているからね。もちろん上は時給を少し高めるつもりだし、それに住むところはこちらで用意すると言ってたよ」
「住むところに関しては心当たりがあるので大丈夫ですけど...本当に俺でいいんですか?成績がいいとしても、俺新人ですし...」
「心当たりがあるのならありがたい...それで仕事に関することは、1人勤務という事もあって、書類とかは簡単でいいと言ってたね。あ、でももちろん犯罪に加担しちゃ行けないし、悪いことはしないようにね?」
「もちろんです!」
「いい声だ。それじゃあ、今日の所は帰って、少なくとも明後日には出勤できるように準備お願いね」
「分かりました」
そんなことがあって、現在俺は朝っぱらからある程度の荷物を積んでいる車を周りが畑一面の道路で走らせていた。
荷物は僕が住む予定の、俺のおばあちゃんが元々住んでいた家にもう送られているらしく、今日はそれをすこし整理したあと、久しぶりの村を探索しようと考えながら、車の窓を開けて横目で景色を楽しむ。
気持ち良い風が車内に入り込んで、久しぶりの感覚に心が少し疼く。昔の友達は今元気だろうか、あの場所は今もまだ残っているのだろうか、そんな考えで頭がいっぱいになる。
俺は楽しみになりすぎて、早く家につかないかなと時々呟くのだった。
家につき、鍵を開けて玄関を開く。
懐かしい匂いが鼻腔をくすぐり、久しぶりに亡くなったおばちゃんの手料理がだべたくなる。車の後ろのドアを開いてダンボールに梱包されている荷物を持って家の中へ入ると、所々誇りぽい所が多く、先に掃除しようと荷物が置かれている広間に荷物を全部置くと、掃除を始める。
まずは掃除機、次に雑巾がけ、そのあと細かいところのホコリや汚れを掃除して一段落する頃にはお昼になっていた
「昼食どうしようかな...」
そういえば近くに小さな飲食店があったのを思い出す。確か、おばちゃんとおじいちゃんのふたりで、経営していて村の中で片手で数えるのほど飲食店の中でトップクラスに美味しかったはずだ。
くぅーーとなるお腹を抑えて、早く行こうと思いすぐさま戸締りをすると、頭の中で道を思い返しながら周りを景色を懐かしみながら歩いた。
目的地に着くとそこには『おっこも』という字が大きく書かれてる看板が掲げられている飲食店があった。俺がもう少し近づくと営業中という看板がたけられていたのを見て、心から心をなでおろす。
俺は戸に手をかけて横に「ガタガタ」という音を立ててスライドすると、スタイルのいいお姉さんが顔をひょこっとだして、中から挨拶してきた。
「いらっしゃいませー!」
髪はいわゆるウルフカットという物で黒髪だった。そのお姉さんは俺の方をじっと見て、考え込むように顔を引っこめた。
「...あれ?おじいちゃんとおばちゃんが経営してたよな...?」
俺が中に入りそう呟いた声に驚いて、お姉さんは料理の下準備をしていた手をピタッと止めて聞いてくる。
「...その声、つかむん?」
「....あっ!|花道《 はなみ》!」
花道、俺が小学校から中学校の仲で、確かクラス内では決して目立つタイプではなく、常に地味な服装に目が見えないほどの黒い前髪に三つ編みのおさげ、そしてメガネという、
昔ながら真面目という雰囲気を漂わせており。実際そのような性格なのだが、内気で弱気なので、よくいじめられていたのを俺と...あれ?誰だっけ...?とりあえずあと一人によく助けられていたはずだ。
「久しぶり。つかむん」
花道はそう言って静かに微笑む。
つかむんとは、俺のクラス内でのあだ名。仲が良くも悪くも俺の子供時代を知ってる物は全員つかむんと呼ぶ癖がなぜかついていた。
「おう、久しぶり!!あ、思い出話の前に先に注文していいか?もう腹減っちまって...」
「う、うん!わかった!」
花道はどこか慌てた様子で、返事をした。
俺はそれが少し気になりながらも、席に座って後ろの壁にたけかけてある板に書かれたメニューを見る。
カツ丼、カレー、唐揚げ定食、ハンバーグ定食、和食定食などなど定番のメニューが沢山書いてある、左下に小さく値段が書かれていた。
うーん...今は魚の気分だから和食定食を頼み、それと同時に花道さんに疑問を投げかけてみた。
「お前、ここ引き継いだの?」
「う、うん。私...他の人の笑顔が見れる職業に着きたかったんだけど...知らない人に話しかけるのが苦手だから悩んでたの。その時にここのじいちゃんとおばあちゃんがうちで働かないって言ってくれて...まぁ...亡くなっちゃったけど...」
店内がしんみりする。
「...後で線香あげていいか?」
「うん、いいよ。それとここが繁盛してないのは」
「分かってる。夜の方がじいちゃんばあちゃんが沢山来るんだろ?」
「あ、昔ここ近くに住んでたから分かるのか」
そう言って花道さんはクスリと笑う。その仕草に可愛いと思ってしまったのは内緒にしよう。
「そういえばイメージ一気に変わったな」
「そ、そう..?あ、たしかに昔は髪伸ばしてたし...そうなのかな?」
「うん、髪切ってるし、メガネつけてないし、なんか大人のお姉さん的な雰囲気出してるし....一瞬わかんなかった」
「髪とメガネは、ほら、料理の時に邪魔になったりするでしょ?あと、そんなに大人の女性の雰囲気出してるのかなぁ...」
「なるほど...確かメガネは曇るし、髪は短くしないといけないもんな」
「そうそう...あ、そういえば。なんで、つかむんは帰ってきたの?確か親の転勤で...都会の方行ったんじゃなかったっけ?」
「あぁ、それの事何だけど、俺警察官になったんだ」
「えぇ?!す、すごいやん!!」
花道さんはそう言って、俺の方に顔を寄せた。
「まぁ、本来はさ都会の方の交番勤務だったんだけど...」
「あ、あの交番のおじいちゃん、急になくなっちゃったから...」
「そうそう」
「正義感強いつかむんなら、安心やわ。この村は安全になったも同然やな」
「それは言い過ぎだよ、ほらあいつも...あいつ...も...」
脳内のとある記憶が映像のように流れた。
恐らく帰り道で、俺に大きな犬が襲いかかってきた時、目の前に当時の俺(恐らく小学三年生ぐらい)の前に立って、その犬を威嚇し返して助けてくれた。
「もう、あん...は...!たちむか...のも...いけど!」
その少女は日本人なのに白く整えた長い髪を靡かせ俺に説教した。
そこで記憶が途切れる。
「あいつ?つかむん。あいつじゃわかんないよ?」
その声にぴくりと体が跳ねて、キョロキョロとあいつが居ないか周りを見渡すが、店内には俺と花道しかいなかった。
俺は慌てて花道にさっき思い出したあいつの事を聞いてみる。
「白い髪の...同級生の子いなかった?」
「? いなかったけど...アニメとか漫画とかのキャラと勘違いしてるんじゃない?」
「そ、そうか...」
俺はそれを聞いて少し落ち込む。何故だろう、あいつがいないと思ってしまうとここに来た意味がなくなってしまうような...そんな気持ちがあった。
花道は俺がさっき言った見た目に、心当たりがないか考え込んでいて、少ししてハッとした顔で花道は言ってきた。
「鬼様じゃないの?」
「....まさか...」
俺はその言葉にいやいやと首を横に振る。
鬼様とは、この村で信仰されてる神様なのだが、村人の皆が盲目的に信仰している訳ではなく、鬼と言うには少し意外な、守り神見たいな扱いを受けている。
昔学校の授業で調べた時に知ったのだが、そのような扱いを受けてる理由は、昔に鬼がここに現れたのだが、とある村人の1人に惚れて、この村に住み着くようになり、村の人々を害獣や妖から守ったり仕事を手伝ったり...
等々をしてくれたので村人はその鬼を神様という扱いにして恩返しをしたという感じだったはず。
見た目はあんまり書かれておらず分かっているのは白い髪に鬼の角を生やしてるぐらいだった。
「はい、和食定食」
1人で考えていると、その声が聞こえると共に机に和食定食が置かれる。
内容はツヤツヤのご飯に、おかずは焼き鮭におつけ物。野菜は千切りキャベツがこんもりあり、汁物は具たくさんのいい匂いをただよわせてる味噌汁だった。
「...美味しそう」
「残さず食べてね?」
「もちろん。いただきます」
ひと口食べると...なんだこれは!!
感想を食べると、白ご飯はお米という食べ物を最大限引き出しており、焼き鮭は噛みごたえ抜群で味付けもちょうどよくご飯が進む!
鮭の1口サイズで白ご飯がご飯が一気に半分ぐらい減るぐらいに!!
そしてキャベツの千切りもシャキシャキしてとても美味しい!!これは野菜なのだろうか?そう思ってしまうほど、味がとてもいい、キャベツでご飯が進む!漬物もすっぱさがちょうどよく...んまぃ!!最後に汁物を一気を一気に口の中に流し込む!!
「はっ...!」
いつの間にか、机に置かれた和食定食は姿形なく、米粒ひとつ残さず無くなっていた。
「....ご馳走様でした」
「いい食べっぷりだったよ、そんなに美味しかったかな...?」
「あぁ...今まで食べた事ないぐらい美味しかった。いつも食べたいくらいにな...」
「あ、ありがとう..!!」
花道さんの耳が少し赤い気がしながらも、素直な感想がそんなに嬉しそうでよかったと思う。その後、俺は花道さんと共に二階に上がってお線香を上げると、代金を払って店から出るのだった。
「さて...あいつを...探すか」
店を出て、俺は次の目標を定める。
あの子を見つける、姿はほぼ思い出せず、名前さえも起こった出来事さえも忘れてしまった、そんなあの子を見つけるために歩き出す。忘れ恐らくまだこの村にいるはずだ。俺の感はこういう時に役に立つし大体あってる。
俺はチラッと山の麓を確認する。
あの子の思い出せる情報を花道さんに聞いた時、鬼様と言っていた。
つまり、鬼様が祀つられているあの山の麓にある神社に情報があるはずと、俺は思い歩き出した。
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