いつか振り向いてくれますか。

乙葵

00.「好きです今日も!!」

「好きです!!橘さん!」


ここは江戸、城下町の一角。ムードとゆうものなど無く大衆の面前で告白の声が響いた。何々?と人だかりができるわけでも無く、ここに居る人達は「毎日よう来るわ」と呆れたような顔をする。

橘さんとは、ここ城下町の端にある呉服屋の若旦那で歳は二十歳くらい。背が高く町一番の美男子と呼ばれているほど。性格は穏やかな人で、どこをどうとっても完璧。


『七瀬くんったら、毎日毎日飽きずに来て凄いね』

『でも、ごめんなさい』

七瀬の告白はたった一つの微笑みで交わされた。一瞬むっとした顔をしたが、ぐっと拳を握り

「僕は諦めませんからぁーー!!」

そう言って呉服屋からバタバタと出ていった。


「あらあら、橘くんったらまたあの子に告白さちゃってぇ〜。そろそろ良い返事あげても良いんじゃない?」

と呉服屋で長年働く柳さんは微笑ましそうに話す

『ふふ、可愛いものですねぇ。本当僕のどこが好きなのやら…』算盤をパチパチと弾き今月の売り上げを計算しながら、懲りませんねあの子も。と微笑んだ。


一方、七瀬は自分の家が営む茶屋へ突っ走って帰ってきた。この時間帯はいつも人が多く、ほとんどが顔見知り。あそこにドンと座っている強面の男は高島さん、その横で爆笑してるのが臼井さん。この2人はほぼ毎日この茶屋に居座る。


2人はしょぼくれた七瀬を見つけ次第、臼井さんは「お!茶屋の坊主!まぁた、若旦那にこっぴどく振られたのかいなぁ!」とゲラゲラ笑い、「お前も飽きないな。若旦那もお前も男同士だってのに」と高島さんはいつも言う。


「お前も良い歳だ。そろそろ現実を見たらどうだ」

その言葉に七瀬は余計しょぼくれる。

「そうだぞ坊主〜お前も17?18?だろーが」

『良い加減年くらい覚えてください!僕は16です!』

あぁそーだったなぁ!とガハガハ笑う臼井さんを見て七瀬はむすっと顔を歪ませた。


「何で男が好きなんだ」「現実を見ろ」「お前も男なんだ女と結婚しろ」みんな決まってこう話すからもう聞き飽きた。

そりゃ最初の頃はただの憧れだと感じていた。「橘さんみたいになれたら」って思ってた。でも毎日会いに行く中で「好き」って感情を知ってしまったから。


「橘さーーん!好きです!!今日も!!」

次の日もまた次の日もその翌週も。

毎日毎日呉服屋に通っては振られの繰り返し、もちろん良い返事を貰えるわけもなく。だが、七瀬はめげる事なく橘に愛を伝える。


♡七瀬 魁斗

年齢 16

性別 男

職業 茶屋の茶運び

性格 諦めが悪く人当たりが良い


あるきっかけで橘を好きになり、それから毎日橘に告白しては振られるの繰り返し。町では顔は可愛いのに…と噂が立つ。城下町のイジられ役。


♡橘 亮

年齢 20

性別 男

職業 呉服屋の若旦那

性格 穏やかで面倒見が良い


いつからか七瀬に告白されるようになる、本人は気づかない内に七瀬に惹かれている。町一番の美男子と呼ばれ噂が絶えない。

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