サクラサク

海野雫

第1話

「あれ?あの人、どこかで見たような」


 友達とカラオケに行ったその日の帰り。近道をして家に帰ろうと公園を通り抜けようとするとベンチに座って俯いている男の人が目に入った。なんとなく見たことがあるけど、誰だったっけ?


 俺はその人の前を通り過ぎる時、少し気になりチラリと視線を向けた。容姿端麗な顔に長い前髪がはらりと落ちて妖艶さを醸し出している。


――え?泣いてんの?


 彼の頬には涙が伝っていた。


 桜満開のこの公園で家族づれが楽しそうな声をあげている中、ただ一人、暗い雰囲気を纏っていた。


――彼女にフラれたってとこか?


 かわいそうに、ご愁傷様。


 心の中で慰めて通り過ぎた

――あれ?国語教科の担当の先生に似てるなぁ。


 他人の空似かもしれない。ポケットに手を突っ込んでまだ肌寒い公園を早足で通り抜けた。

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