第6話 冒険者ギルドへの登録

 放課後、俺たち5人はダンジョン部に向かった。


 カインも誘ったところ面白そうだと興味を持ち、一緒に入部することになったのだ。


 部室に入ると他の新入部員も既に全員そろっており、早速ギルド登録に向かうこととなった。

 

 ちなみに俺達以外の新入部員は5人いて全て男子生徒だ。


 ダンジョン部だけあって冒険好きな男が集まるということか。男くさいがそれもまたいい。


 マール以外は全員男か・・・あ、ネオンも一応女だった。


 ギルドへ引率する先輩はセレーネとサーシャの二人。だがセレーネは5人の新入部員の男子生徒に囲まれていて、中々話しかけることができない。


「あの5人はどうやらセレーネが目当てで入ってきたようね。上級クラスの生徒もいるのよ」


 後ろからサーシャが話しかけてきた。


「あの子、美人で魔力も強いから上級クラスにも彼女を狙っている生徒が多いのよ」


 上級クラスの在籍者の中には、それほど魔力が強くないため当主候補から早々にはずれてしまって、婚約者がまだ決まっていない生徒たちがいる。


 そういった生徒は、自分の結婚相手として魔力の強い下級貴族を探すため学園に来ているのだ。


「あいつら、ダンジョン探索がやりたくて入部してきたのではないのか」


「そうね。去年もこんな感じでセレーネに粉をかけに入部してきて、脈なしと分かった途端さっさと部を辞めていく男子生徒がたくさんいたわ」


 俺は何とも言えないモヤモヤした気持ちを感じながら、男子生徒に囲まれるセレーネを見ていた。




 ギルドは街の中心部の繁華街にあり、昼間から冒険者や商人などで賑わっている。


 冒険者は稼いだ金を飲み屋や道具屋などの商店で消費するため、ギルドを中心に繁華街が自然と成長していく。俺達はそんなギルドの中に入っていった。


 ギルドに入って最初に目に留まったのが酒場である。


 テーブルでは、すでにいくつかの冒険者パーティーが酒盛りを始めていた。


 俺たちはその脇を通り過ぎて、部屋の一番奥のカウンターに並んでいる受付嬢たちの所に向かう。ここでギルド登録を行うのだ。


 いくつかある列の一つに並んで待っていると、やがて俺の順番が来た。


「次の方も騎士学園の生徒さんね。では学園での検査結果を出してください」


 俺は、今日の剣術実技の際に行った体力測定の結果を受付嬢に手渡した。


 普通の冒険者は登録時にギルド内でテストを行い、冒険者ランクを決めるそうだ。


 ランクはS、A、B、C、D、E、Fまでの7ランクに分かれており、ランクごとに受注できるクエストが限られている。


 だが、騎士学園の生徒は学園の測定結果を提出すればこのテストが免除され、自動的にDランクからのスタートとなる。


「騎士学園の生徒さんはみんな貴族だし、貴重な魔道師がたくさんいて大歓迎よ。ようこそ冒険者ギルドへ」


 俺は受付嬢からDランクのギルド証を受け取った。




「全員登録が終わったようね」


 サーシャが新入部員全員を集めた。


「来週、新入生歓迎ダンジョンの予定だけど、せっかくギルドに来たし試しに簡単なクエストを受けてみましょうか」


 クエストか。なんだか楽しそうだな。


 俺達はカウンター横に設置されている掲示板に向かい、手ごろなクエストを探す。


 Dランクのクエストには魔物討伐の依頼もいくつかあったが、その多くは目的地が遠方で日数がかかるものばかり。


 放課後に日帰りでできるクエストは限られているので、選択の余地はあまりなく簡単に決めることができた。



  「ボロンブラーク街道沿いの森にいるコボルトの討伐(ランクD)」



「これでいいかな?」


「「異議なし」」


 依頼書をカウンターに持っていき受付嬢から説明を受けていると、セレーネが声をかけてきた。


「アゾート達はコボルト討伐のクエストにしたのね。あなたたちなら問題ないと思うけど、初めてのクエストは先輩も随行することになっているの。私がついて行ってあげるわね」


 そうセレーネが申し出てくれたが、例の5人組が横から声をはさんできた。


「セレーネさん。薬草採取のクエストを受注したので、ぜひとも我らの随行をお願いしたい」


 5人組を代表して一人の男子生徒がキザったらしく片手を差し出し、


「もし魔物が襲ってきても、我らがしっかりセレーネ様をお守りします。ご安心を」


「あのちょっと待って、私は・・・」


 断ろうとしたセレーネを、5人組が強引に連れて行ってしまった。


 俺達があ然と見送っていると、


「もう、仕方ないわねあの人達。じゃああなた達には私が随行しますね」


 そう、サーシャが苦笑いした。






「このあたりが目的地よ」


 ボロンブラーク領の城下町から続くボロンブラーク街道を東に向かって歩いていくと、やがて森が見えてきた。この森に生息しているコボルトを討伐するのが今日のクエスト内容だ。


 コボルトは繁殖力が強く集団で旅人を襲う危険な魔獣であるため、普段からなるべく数を減らしておく必要がある。


 つまりコボルト討伐はギルドへの依頼が常に出されている、定番クエストである。


 サーシャの指導のもと、いよいよ初めてのクエストが始まる。


「それじゃあ目的地の森に入る前に、パーティーメンバーの役割の確認をするね」


  カイン  前衛物理

  ダン   前衛物理(魔法攻撃(水))

  アゾート 後衛魔法攻撃(火・土)

  ネオン  後衛魔法攻撃(火・土)

  マール  後衛魔法回復(光)


  サーシャ 後衛魔法攻撃(水・風)


「うーん。前衛が二人で後は後衛魔法ばかりね。このままだとバランスが悪いから、アゾートとネオンのどちらかに前衛を頼めるかしら?」


「なら俺が受け持ちます」


 役割が決まり、コボルトを討伐すべく俺たちは森に足を踏み入れた。


 森といっても木々の間隔は適度に離れた林の様な場所で、所々に木々のない広場の様な場所さえ見かける。


 そんな森の奥へと進んでいくと、およそ100メートル前方にコボルトの群れを発見した。


 向こうも俺たちに気づいたようで、こちらに襲いかかってきた。


「私はサポートに徹するので、まずはあなた達だけで戦ってみて」


 サーシャがそう言うと、俺は仲間たちに指示を出す。


「了解。それではまず俺とネオンが火属性魔法で先制攻撃。それである程度数が減るはずだから、前衛3人で突撃。マールは適宜回復を頼む」


 俺の作戦を聞いてサーシャは、


「え? 詠唱している間にコボルトが来ちゃうんじゃない」


 と呟いたが、その次の瞬間に放たれた二つの炎がコボルトの群れの先頭に着弾し大ダメージを与える様子に驚愕した。


「ええっ! な、なんで?」


「よーし初弾命中! アゾート、もう一発いくぞ」


 ネオンが一番張り切っていた。



  【焼き尽くせ】ファイアー



 再び放たれた二つの炎が、混乱するコボルトの群れの、今度は中段あたりに着弾し炎が燃え上がった。


 全部で20匹ほどいたであろうコボルトは、そのほとんどが4発の火属性魔法の炎に飲まれ、のたうち回っている。


 学園とは異なり森には魔法防御シールドが展開されていないため、実際に魔法が発動して炎もちゃんと発生するのだ。


 一方、魔法攻撃はネオンに任せて突撃を開始したものの、コボルトの群れにたどり着く前にほぼ決着したため、途中で走るのをやめた俺とダン、カインの3人。


 カインが両手を腰に当て、呆れるように言った。


「おいおい全部倒すことないだろ。俺達の分までちゃんと残しておいてくれよ」


「悪い。ネオンのやつが調子に乗りすぎた」


「てかちょっとまずいんじゃないのか、これ」


 ダンが不安そうに言ったのも無理はない。


 炎が森の木々にも広がりはじめ、煙がもうもうと上がってきた。


 ・・・ちょっとやばいかも。


 ダンがあわてて水魔法の詠唱を開始したが、その直後に俺たちの頭上を大量の水が飛んでいき、木々に燃え広がった炎の消火を始めた。


 サーシャの魔法だ。


「俺たちがやりすぎてすまん。今から火を消すからちょっと待ってろ」


 俺は土魔法ウォールで生成した土のかたまりを、炎にかけて火消しに回った。




 なんとか火が消えて、焼け死んだコボルトから証拠となる右耳を回収。初クエストでいきなりみんなに迷惑をかけてしまったな。


「加減がわからず、すみませんでした」


 俺とネオンが謝るが、サーシャは怒っている様子もなくむしろ目を輝かせて尋ねて来た。


「ねえ! さっきの魔法ってどうやったの? ほぼ無詠唱で発動したように見えたんだけど」


 俺は昨日ダンたちに説明したことを、サーシャにも説明した。


「ちょっと信じられないけど、詠唱時間がこれだけ短縮できるのはかなりのアドバンテージね。私にもできるかしら」


「ええ。発音が難しいですが練習すればたぶん。ただ早く魔法が発動する分、調子に乗って連射するとアッと言う間に魔力を使いきってしまいますよ」


 そうは言ってみたものの、前世で経験済みだが外国人が話す日本語はどうしてもイントネーションに違和感が残る。


 セレーネやネオンは子供の頃から練習しているのできれいな日本語で詠唱できるが、サーシャやダンたちは今から勉強してどこまできれいな日本語の発音ができるようになるか未知数である。


 そう考えれば、もしこの世界に某公営放送のアナウンサーが転生したら、俺よりもよほど強力な魔法が使えるんだろうな。


 結局俺は最初の2発の炎魔法とその後消火活動に使った土魔法のおかげで、MPの大半を使い果たしてしまった。


 だから今日はなるべく魔法を節約し、前衛物理として戦うことにしよう。




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