ここはホワイトな戦場です〜世界最強の受付VTuberになる

朝露颯

第1章『受付。VTuberになる』

【#1】プロローグ


──ダンジョンがこの世界に現れて30年の月日が経つ。

ただ人間という生き物は環境の変化を諸共せず順応していくもの。最初こそ世界に混乱をもたらしていたダンジョンは、今や世界情勢に深く浸透しダンジョンがある日常が全てとなっている。


ダンジョンが生まれる前の文化としてあった現代ダンジョン系の創作物に影響されこの世界は、ダンジョンに挑む探索者で溢れた。

探索者は世界一、危険な職業と呼ばれているように。

探索者はこの上なく危険なダンジョンに乗り込み浪漫を求めて突き進んでいくのだ。


──だが、実の所…1番ダンジョン関連で苦労しているのは、我々ダンジョン協会の社員だったりする。





◇ ◇ ◇ ◇





「ダンジョン協会はホワイトな職場でいいですよねぇ〜弊社もそういった姿勢を見習いたいと思いますー」


「…そうですかぁ?ありがとうございますぅ」


「──北神さん。お待たせしました!」


「あら、もう時間なのねぇ。受付君ありがとー」


「はいーどうもでーす」


「…姫川くんお疲れ様」


「…はい」



ダンジョン省のお偉いさんを懇切丁寧に接客し無事、お偉いさんの機嫌を損ねることなく上司にパスすることが出来て疲労困憊な俺、ダンジョン協会の3番受付担当姫川栞ひめかわしおりは安堵の息をもらした。


ただ義務業務が終わったからといって姿が見えなくなるまで気を抜いてはならない。お偉いさんの姿が見えなくなった後もそうだ。



……しかし。ただ一つ、心の中で言わせてくれ。



──誰がダンジョン協会は、ホワイトな・・・・・職場でいいですよね〜だ!


公務なのに給料も少ないし常に慣れない笑顔を振りまくのも御免だし上層部からはこき使われるだしで、ホワイトどころか真っ黒だよチクショー!


……え?ダンジョン協会って何だって?

まあ、しょうがないか。

君たち来たばかりだもんね?(誰に言ってるのだろうか?)

それならまずは、迷宮・・の事について話さなければならない。──それは30年前に遡る。










──地球に突如として現れた異世界に通じるゲート。

30年前に現れたとされるソレから溢れる魔は、世界人口の約三割を滅ぼし多大なる犠牲を払った。


しかし人間の順応速度といったら凄いもので、10年経った頃には、世界情勢の一部となっていた。


ゲートの先は、洞窟だったり草原だったり危険な溶岩地帯だったり凍えるような烈風が吹き荒れる雪山だったりとゲート事に様々な特色のある世界が、そこには存在した。


──やがてその異世界は、人間達から迷宮ダンジョンと呼ばれるようになる。


しかし何故、危険であるはずの迷宮が驚異の速さで順応して言ったのかと言うと『迷宮探索者』の存在が大きい。


……え?迷宮探索者って何だって?そうだな…


それは迷宮が現れて1年程経った頃、とある少年が不思議な力に目覚めたのだ。その力は、まるで当時流行っていたファンタジー物の力をそのまま現実世界に引き出したかのようで、現代兵器では全く太刀打ち出来なかった怪物も少年はいとも容易く倒してしまった。


それから連鎖するように超人的な力に目覚める者は次第に増えていった。後に覚醒者と呼ばれる彼らは迷宮に潜り摩訶不思議な素材で出来た武具や傷を一瞬で癒すポーション。それはもう宝物がザクザクと迷宮から発掘され覚醒者は莫大な富を得た。


かくして『迷宮探索者』は誕生した。

ここまでいいか?……よし。


──で、迷宮探索者が取ってきた素材を換金したり迷宮探索者のサポートをしたりする組織というのが、俺が働いている場所である『ダンジョン協会』だ。


…まぁ、脳内説明はこれぐらいでいいだろう。

誰に向かって解説してんのか分かんない独り言はやめて、さっさと持ち場に戻るとするかねぇ…はぁ(クソデカ溜息)






◆ ◆ ◆ ◆






「──駅前のダンジョンですね。…はい予約の確認が取れました。こちら返させて頂きます」


「はい!」


「ではご武運をお祈り致します。行ってらっしゃいませ」



俺は死んだ目で、新米探索者と思われる大学生くらいの女子に爽やか好青年MAXの笑顔のまま軽くお辞儀する。内心実は中指立てていたりするが先程の女子の例は、まぁよくあるパターンだ。


俺は自分で言うのもなんだが、顔はかっこいい系の部類に入っているであろう側の人間だ。

高校生だった頃は良く下駄箱にラブレターが詰まっていた物だ。外靴入れるの大変だった記憶あるもん。


……まぁ今は、万年彼女なし童○ですけど何か?


女子に関わらず面食いな奴は、俺の顔を見るなり食いついてくる。つまり受付目当てで探索者に志望する人を増やすため。

俺にとってはうんざりするにはするのだが、協会の方針的には嬉しいらしい。それに顔の良さは受付に抜擢された理由の一つに当てはまるから俺もとやかく言うわけにゃいかんのよ。


後、これは個人的な愚痴なのだが、俺の顔に見蕩れて…かは知らんけど肝心の説明を聞いていない問題に直結する。だからそれの対策として俺が、さりげなく注意し説明に意識を転換させ迅速に次の人に回す、という作業を何回も行っている。正直めんどい。


……まぁ、そんな事より俺はダンジョン協会の受付番だ。受付では珍しい男性の受付担当で、何故受付の人材は女性が多いのかと言うと……まぁ、隣の受付見れば分かるが、主に男性探索者が列を成していた。それは探索者の殆どが男なため誘い出す・・・・為にも受付嬢が多いというだけだ。…出会い目的といった部分もあるだろう。


もちろん女性が嫌いな人もいるし苦手な人もいるというわけで、俺にくる男性探索者の殆どがそれに該当する。

後は僕の顔に釣られた女性探索者くらいだろう。


「あの?」


……おや?

1人の男性迷宮探索者が、俺の受付までやってくる。

はマニュアル通りに挨拶した。当然、死んだ目で。



「初めまして。こちら三番受付を担当しております、姫川栞と申します。以後お見知りおきくださいませ。それでは、探索者カードを拝見致します」


「あ、はい」



カバンの中をガサゴソと漁り見つけたのか俺に恐る恐る手渡してきた。



「……はい。木村さんですね」


「あの…」


「……どうして初対面な人だと気づけたか、ですか?」


「!?」



たまにいるのよね。

わざわざそんなこと聞いてくるやつ。



「別にここに来た人の顔と名前を覚えていただけですよ。これくらい受付なら当然でございます」


「す、凄い」


「ありがとうございます。先に探索者カードは返却しますね。忘れて帰られては困りますから。では、こちらの端末にDフォンをかざしてくださいませ」



Dフォンとは、ダンジョン省から探索者登録と同時に無料で配られる最新機器の事であり色々な用途に使われる。

例えば魔物の詳細を見ることができたりダンジョン協会の依頼ボードに貼られている依頼を端末から直接受けることができたり、それこそ配信することができたりできる。


探索者がDフォンを取り出しスキャンする端末にかざすと目の前のウィンドウから探索者が受けた依頼と依頼された内容に該当するダンジョンの詳細がズラリと並ぶ。


ちなこの探索者はDランク探索者でありそこそこ強いといったところ。依頼内容は薬草採取ということで、そこまで高くない依頼報酬。小遣い稼ぎしにきたのかな?


「はい。予約の確認が取れました」


探索者が依頼を達成するまで5つの手順が存在する。

1.依頼を決める。

2.ダンジョン協会の受付にて予約する。

3.ダンジョン前の受付にて予約確認を済ませる。

4.ダンジョンに潜る。

5.依頼達成のためにダンジョン協会にて換金を行う。


つまりダンジョンに行くには、予約が必要ということ。

そうダンジョンは完全予約制なのである。

めんどくさいが、迷宮探索者としての義務である。


──何故ならこれは、ダンジョン品の不当入手、不当使用を防ぎ、自己責任とはいえダンジョンで起こる事故の即時対応が見込めるからである。


昔はこの制度がなく行方不明者が多発した事で、色々と悶着があったというのが建前で、本当は『ダンジョン省に準じてダンジョン協会は探索者のダンジョン内での身の安全を干渉できる範囲で可能な限り保証するよ』とダンジョン探索者という職の売れ込みといった裏の目的もあるのだが。



「──ではご武運をお祈り致します。行ってらっしゃいませ」


「ありがとうございます!」



いつものセリフで探索者を送り返す。

これが受付の仕事。


「姫川くーん」


そして響く、同僚の声。


「はいはーい。どうしました〜リーダー」


同僚の彼女、裏坂さん。

受付番のリーダーにして1番受付を担当されている受付嬢。受付番の中では一二を争う人気を誇る。



「えっと、姫川くん。怒らないで聞いてほしいのだけど」


「……まさか」


嫌な予感がする。


「そのまさかと言った方がいいかなダンジョン省から──」


「みなまで言わないでください。吐き気がします」



聞きたくなかった名前が飛び出し途端に死んだ目になる俺。裏坂さんはそんな俺の様子に申し訳なさそうに返す。



「いつもごめんねぇ…タダでさえ忙しいのにダンジョン省の雑用やら任せちゃって」


「あっちも人手不足なんでしょう。で、何処です?」


「あはは…石垣ダンジョンと聞いているわ」



石垣ダンジョン…中位規模ダンジョンだな。

裏坂さんが言うように俺はダンジョン省から雑用全般を任されているといっていい。


──ダンジョン省は、探索者を全面的にサポートするダンジョン協会とは違い。ダンジョンと探索者を管理する組織だ。ダンジョン省の役割としてダンジョンの生態や情報を管理し…探索者登録、Dフォンの配布に加えクラン登録に至るまであらゆるダンジョン関連の情報を管理している。


そして管理する内容が内容だけに常に人手不足であるダンジョン省は、元探索者で危険から身を引いたはずの俺に頼るしかないぐらい張り詰めているらしい。


そういった背景を知っているから俺も善意で引き受けてはいるが、流石にちょっと図々しいというか…


……今更かそれ。



「それで…引き受けてくれるかな?」


「今に始まった事でもないですしね」


「ありがとう姫川くん。あっ、それと姫川くん。君に朗報があります」


……?


「…なんですか?」


「ふふっ姫川くん。先週から夏休みでしょう?私から皆に頼んで夏休みの間だけ休暇取れるようにしときました!」


「本当ですか!!」


「受付番の皆、君に感謝してるんだよ?横暴な探索者の鎮静に一役かってるからね!私が頼むまでもなく二つ返事で応じてくれたよ!」


「そんな…とっても嬉しいです!皆さんに後でお礼参りしなきゃいけませんね!」


「…そんなところだと思うなぁ」


「どうしました?」


「いやなんでも」



仕事で夏休み埋まるかと覚悟してたけどこんな良いこともあるんだな。


やっぱり善行って大事。


────────────────────

初めまして朝露です。

初投稿失礼します。とりあえず第1章は書き終わりました。初心者ですのでどうか暖かい目で応援してくれると幸いです。

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