第6話 クライマックス!

 あっぶなかったぁ……いまのはただただ運がよかっただけだった。何も考えずにもう一度はやるべきじゃないな。ただ、得るものがあったのは確かだ。


 まず、奴らは視力が弱いか見えていない。確実に何度もこちらを見ていたが、反応すらしなかった。まあスライムのときと同じように何かのトリガーがあるのかもしれないけど。


 次に、奴らが俺に気づいたタイミングから音に反応したわけではない。ただし、これも同じ理由でトリガーを踏んでいないだけの可能性がある。


 そして最後、俺が苦し紛れで行った上着を投げるという行動、その結果に起こった出来事、それらを合わせると奴らはスライムと同じように一定のラインを超えたものに襲いかかる、もしくは俺の匂いに反応しているのどちらかなんじゃないかと考えられる。


 まあ俺がその2つしか思いつかなかっただけで他にもなにかあるかもしれないが、思いつかないんならしょうがない。それを前提にして動くしかない。


 その結果、こうなった。


「もうどうにでもなれ!」


 右手に肌着、左手にはズボン、装備は尊厳パンツのみ。尊厳プライドを守るため尊厳パンイチになった悲しき男の姿である。


 説明をさせてほしい。


 何も俺は好きでこんな姿になったわけではない。高校生になって露出に目覚めたわけでもない。


 嗅覚で認識している可能性があるゴブリンに汗が染み込んだ洋服を投げつける。俺にできるのはそれしかない。そうなるとこうなるしかないじゃないか! 尊厳パンツだけは許してほしい!


 0:12:56 83%


 時間も少ない。


 一回のアタックで%も7ぐらい上がっている。


 正直、止まっているとヤバいのでずっとモジモジしている。平常時ならトイレを我慢して我慢してそれぐらいだろう。


 ゴールまで目算100m。そこまで行くだけでもギリといったところか。


 俺は覚悟を決めて叫ぶ。


「よっしゃいくぞ!」


 ヤケクソってこういう事をいうんだろうなぁ




 俺はさっき見つかったラインから少し後ろで左腕を振りかぶる。狙うは右奥で壁を見つめてるゴブリン!


「ギー!」


 飛んでいったズボンに飛びついていくゴブリンたち。


 その隙に俺はゴブリンがいなくなった右奥から扉へ向かう。


 視界の端に上着の切れ端のようなものが見える。俺の考えが間違っていた場合、俺がああなるまで殴られ失禁することになるだろう。だが先程襲ってきたラインを超えてもゴブリンたちはやってこない。


 残り50m。


 ズボンがボロボロになり、スボンから遠い位置にいるゴブリンが俺の方に向かってくる。それを確認すると同時に右手に持っている肌着を投げつける。


「くそっ早すぎんだよ!」


 薄い肌着だ。ズボンよりも時間は稼げないかもしれない。それに俺の歩みは亀のように遅い。このままじゃ……。


 残り30m。


 スボンも肌着ももう切れ端、一部のゴブリンがこっちに向かってきている。


 逃げられはしない。訳では無い。


 やれることはない。いや、やりたくはない。


 もう何もできない。と思いたい。


 つまりは、しかたない。


 俺は、尊厳パンツに手をかける。


 尊厳プライドを守るために尊厳パンツを投げ捨てる。この状況を打破するためにはそうするしかないのである。


「なんで、なんでぇぇええ」


 なんで俺は全裸でおしっこを耐えつつ叫びながら歩いているんだろうか?


 ゴブリンたちが俺の尊厳パンツに群がる。


 それを見て俺はどう思えばいいのだろうか?


 残り10m


 あと少しで扉に届く!


 残り5m


 ゴブリンの一匹が向かってくる。


 残り1m


 ようやく扉に手が届いた!


 だがしかしゴブリンが棍棒を……


 残り……


 振り抜いた。

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