最下の星 𓂃⋆ ꙳

第1話


誰かに初恋を問われたとき、いつも上手く答えることができない。


言葉にできないんだ。その代わり頑丈に鍵をかけて奥底に仕舞っていた記憶が、昨日のことのように…昨日のこと以上に、鮮明に蘇ってくる。



そうなればもう早い。引っ張り出さなくてもすぐに浮かんでくる、彼と過ごしたたった1年間ともうひと夏の残像。


それは時間が経った今でも、最下の人だとしても、一番大切だった。



身体も心も成長なんてまるでしていなかったあの頃、まぶしくて、考える間もなく気づいたら惹かれていた。未熟ながら、強く、強く。



幼い制服姿のまま血色に染まる拳。彼の足元に転がる玩具みたいな個体。免許を取れる年齢でもないのに自由に落書きしたバイク。道から逸れたポケットに忍ばせていた刃物。先を向けて脅しのために吸っていたような煙草。



自分よりも他人を傷つけて、誰も信じないまま誰かに嘘をついて、遠ざけるために笑っていた。



最低で、最悪で、巨悪な……だけど、焦がれる夢を今でも見る、たくさんの記憶がある人。




わたしが、初めて好きになった人。



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