第九話-2:大人なエリス【性的表現有】

 その日の午後、街を統括する貴族が衛兵たちを従えてユウの店を訪れた。妻と共に紅茶と菓子を求めて来たようだが、彼の態度は冷淡だった。


「こんな店が人気だなんて、笑わせるな」


 嫌味を言っては、ユウズカフェの人気メニューの砂糖菓子を頬張る。だが、紅茶を音を立てずに飲む姿勢は、さすが貴族だと思わせた。


「そんな事言って。あなた美味しそうに食べてますわよ?」


 妻からのからかいにも貴族は未だしかめっ面を崩さなかった。外で待たせる衛兵たちを眺めて、貴族が言った。


「ギルドが役立たずだから街がこんな状態なんだ」


「モンスターの件が街で噂になってるが、何かあったのか?」とユウが尋ねても、貴族は鼻で笑って我関せずな様子で答えた。


「そんなもの知るか。ギルドにでも任せておけ」


 国家から街の統治を任せられている貴族たちだが、その役割は失われているように感じた。


 店内のあちこちに難癖をつけ、街を守る衛兵たちと一緒に、貴族はユウの店を去って行った。


―――――――――――――――――――――――


 貴族御一行を見送った後、誰にぶつけていいかわからない苛立ちを感じながら、ユウは小皿に塩を用意していた。


「エリス、塩をまいておいてくれ」


「え、何で?」


 不思議そうなエリスを横目に、はっきりとした言葉で答える。


「あんな奴らが二度と来ないようにな」


「塩で追い払うの?変なのー」


―――――――――――――――――――――――


 夕方になり、落ち着いた店内で夕食の支度を整えていると、エリスが近付いてきてからかうように言った。


「お兄ちゃん。昨晩もお姉ちゃんとお楽しみでしたね」


 ユウは夕食の支度に集中しようとしていたが、エリスの言葉に全身が凍りついた。彼の心臓は激しく鼓動し始めた。


「……何のことだ?」


 返すユウの声は、どこかとってつけたようだった。


「……お兄ちゃん知ってるのです?ここの家、壁が薄いのですよ?」


 エリスの言葉に、ユウの頭の中が真っ白になった。


――まさか。


 顔が熱くなるのを感じながら、ユウは必死に平静を装おうとした。しかし、手元の包丁が震えているのを止められない。視線をエリスから逸らし、目の前の野菜に向けるが、うまく切ることができない。


――どうしよう。

――何て説明すればいいんだ。


 言い訳を考えようとするが、ユウは頭が真っ白で何も言葉が浮かんでこない。


「え、えっと……」


 自分の声が震えているのを感じながら、ユウは何とか言葉を紡ごうとした。しかし、エリスの視線を感じるたびに、さらに動揺が増していく。


「あ、あのな……」


 何か言わなければと思いつつも、適切な言葉が見つからない。ユウは自分の反応が、エリスの思惑通りになっていることに気づいていた。それでも、この状況から逃れる方法が見つからず、ただ立ち尽くすしかなかった。


 心の中で「冷静になれ」と自分に言い聞かせるが、恥ずかしさと焦りが勝っていた。



 エリスはユウの動揺を見て、さらに追い打ちをかけるように身体を近付けた。ユウの耳元で囁くように言う。


「お兄ちゃん、そんなに慌てなくていいのです。エリスも大人なのです」


 ユウの体が震えるのを感じ、エリスは満足げに微笑んだ。彼女の指先がユウの腕をなぞり、ゆっくりと胸元へと移動する。


「エ、エリス……やめろ」


 ユウは震える声で言ったが、体は硬直したままだった。エリスの指先が彼の胸を軽くつつく。


「お兄ちゃんの声、可愛いい」


 エリスの手がさらに下へと移動し、ユウのズボンの上から軽く撫でる。ユウは息を荒げ、抵抗しようとするが、体が言うことを聞かない。


「ほら、お兄ちゃんのここ、苦しそう」


 エリスはニヤリと笑いながら、ゆっくりとユウのズボンのジッパーを下ろした。ユウは頭の中で止めようとしているのに、体は熱く反応してしまう。


「や、やめろって……」


 ユウの言葉とは裏腹に、エリスの手が彼の下着の中に滑り込む。柔らかな指先が敏感な部分に触れると、ユウは思わず小さな呻き声を漏らした。


「お兄ちゃん、嘘つきなのです。体は正直なのです」


エリスはそう言いながら、ゆっくりとしゃがみこむ。ユウは息を呑み、目を閉じた。


「お兄ちゃん、エリスだけ仲間外れなのは嫌なのです。だから……」

「エリス……」


 ユウの声が震える中、エリスの唇が彼の敏感な部分に触れる。温かく湿った感触に、ユウは思わず腰を震わせた。


 エリスの舌が器用に動き、ユウの理性が少しずつ崩れていく。彼は必死に声を抑えようとするが、快感に耐えきれず小さな喘ぎ声が漏れる。


「ん……エリス……」


 ユウの手が無意識のうちにエリスの髪に絡まる。エリスはさらに動きを加速させ、ユウの感覚を昂ぶらせていく。


 ユウの呼吸が荒くなり、体の緊張が高まっていく。エリスの巧みな動きに、彼の理性は限界を迎えつつあった。


「エリス……もう……」


 ユウの声は掠れ、切迫感に満ちていた。エリスは一瞬動きを止め、上目遣いでユウを見上げた。その瞬間、ユウの心臓が激しく跳ねた。


「お兄ちゃん、我慢しなくていいのです」


 エリスの囁きとともに、彼女の唇が再びユウに触れる。今度はさらに情熱的に、リズミカルに動き始めた。


 ユウは目を強く閉じ、歯を食いしばった。快感の波が押し寄せ、もはや抗うことはできない。


「あっ……エリス……」


 言葉にならない声を上げながら、ユウは限界を迎えた。全身が震え、頭の中が真っ白になる。


 エリスは最後まで離れることなく、ユウの全てを受け止めた。


 しばらくの間、二人は動かなかった。ユウの呼吸が徐々に落ち着いていく中、エリスがゆっくりと顔を上げた。


「お兄ちゃん、美味しかったのです」


 エリスの悪戯っぽい笑顔に、ユウは言葉を失った。恥ずかしさと快感の余韻が入り混じり、彼の頬は真っ赤に染まっていた。


「エリス……君は……」


 エリスはユウの動揺を見て、にっこりと微笑んだ。彼女は立ち上がり、ユウの服装を整えながら、優しく囁いた。


「すぐ大人な女性になるから、お兄ちゃんとなら結婚してあげてもいいよ」


 その一言に、ユウは返す言葉を失った。彼の頭の中は未だ混乱状態だった。


 その時、遠くから街の騒がしい声が聞こえ始めた。


「なんだ……?」


 ユウは我に返り、窓の外を見た。どこか異様な空気が漂っている。モンスターの気配なのか、それとも別の何かか――ユウの胸に、不穏な感覚が広がった。


 先ほどまでの甘美な空気は一瞬で消え去り、緊張感が部屋を支配した。ユウはエリスを見つめ、彼女の安全を確保しなければという思いが湧き上がる。


「エリス、ここにいて。俺が様子を見てくる」


 ユウは決意を固め、玄関へと向かった。エリスの告白と、迫り来る危機。この異常事態の中で、ユウは新たな問題に立ち向かおうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る