第五話:盗賊団壊滅クエスト 中編

 夜の闇に包まれた野城。その外観は荒れ果てているが、内部には確実に命を狙う牙が潜んでいると感じさせた。


 リーゼロッテは剣を握りしめ、息を潜めて仲間たちと潜入を開始した。クラン員たちも同様に緊張の色を浮かべている。


 昼間打ち合わせた作戦通りに、見張りがいるであろう正面入り口を避けて、東側の山沿いの壁をつたって突入を試みる。


「ここから侵入しましょう。罠には気をつけて」


 しかし、彼女の警告も虚しく、先行した中庭でいきなり鋭い音が響いた。先を見つめると、隠されていた罠が発動し、先行したメンバーが倒れているのがかろうじて確認できた。



「伏せろ!」



 仲間の叫び声とともに戦闘が始まった。




 盗賊たちの行動は、まるでこちらの侵入を予測していたかのようにスムーズだった。城内の地形を熟知している彼らは、魔術師の配置や罠を効率的に設置し、完璧な迎撃態勢に思えた。


「どうして!こんなに数が多いなんて!」


 リーゼロッテは、ギルド長から得た情報が間違いなのではないかと頭の隅に思いながらも、目の前から迫る敵の多さに対応しきれないでいた。

 

 リーゼロッテは必死に剣を振るい、応戦するが、次々と仲間たちが倒れていく。


 諦めたクランメンバーたちの中には命乞いする者もいた。しかし、盗賊たちは殺しを愉しんでいるかのように、容赦なく武器で串刺しにしていった。


 やがて、クラン員たちは残りわずかになり、最後に残されたのはリーゼロッテを含む数人の女性だけだった。盗賊たちは、彼女たちを「お楽しみ」として残し、抵抗する間もなく気絶させていった。


―――――――――――――――――――――――


 盗賊の廃城に近付くにつれ、根城からは剣戟の音と、悲鳴と歓声、命を掛けているであろう様々な音が耳に入ってきた。


 ユウは城外にいる門番たちを静かに始末し、正面入り口の扉から悠々と城内に足を進めていった。


 城内には勝利に湧き上がる盗賊たちの喧騒があった。辺りを見渡すと、そこここにギルド員と思われる人たちの壮絶な最期の姿があった。久しぶりに体験する異様な光景に、ユウは自分を抑える事が出来なかった。


「用意が周到すぎるな。誰に雇われた?」


 盗賊のボスと思われる大男に、ユウは問い掛ける。


「なんだお前は?」


 盗賊のボスが不審げに尋ねた。ユウは抑えが効かず、震える拳を必死になだめながら、盗賊たちに最後のお願いを試みた。


「俺はただの通りすがりだが、話し合いに来た。女性たちを解放してくれないか?」


 盗賊たちは一斉に笑い出した。


「おいおい、状況を分かってんのか?そこで転がってるやつらみたいになりてえのか?」


「いや、転がるのは君たちだ」


 ユウの冷たい声が響く。その瞬間――。




 ボスの周りにいた、油断しきった盗賊たちをまず仕留めた。魔力を小刀に通して、鋭い切れ味で盗賊たち数名の首を落とす。


「……!」


 その一瞬の光景に、その場にいた盗賊たち全員が凍りついたように停止した。慌てて盗賊たちが一斉にユウがいた場所を見るが、もう彼はそこにいなかった。


 ユウの動きはまるで闇そのものだった。


 盗賊団の魔術師たちが、魔法を使う対象を視認出来ずにユウの一撃によって絶命していく。刃をどこに振るえばいいかわからないまま、ボス以外の盗賊団員全員がこの世を去った。


 震えるボスただ一人を残すと、最後にユウはボスの前に姿を表した。


 ボスは最後の抵抗を試み、大きな斧を振りかぶってユウに襲いかかる。しかし、その瞬間、ユウが隠し持っていた小刀が閃き、ボスの胸を貫いた。


「一体、お前は……」


 血を吐きながらボスが声を出した。ボスが倒れていく姿を目で追いながら、ユウは冷静にあたりを見渡した。


「話し合いに応じていれば、こうはならなかった」


 ユウは冷たく言い放つと、未だ気絶している女性たちの拘束を解き始めた。夜冷えの中、このまま放っては置けない。敵味方関係なく、亡くなった者たちにも何か掛けてあげる毛布が必要だと思った。


―――――――――――――――――――――――


 ユウは倒れた盗賊たちの装備、城内の部屋を調べた。そこで目に入ったのは、ギルドから支給されたとみられる物資の数々だった。今回の作戦の要項までが盗賊の手に渡っていた。


「やはりか……」


 ユウは深い溜息をついた。ギルドの腐敗が、今回の事件の背景にあることは明白だった。そして、彼は自身の静かな日常よりも、この事実を放っては置けないという気持ちで動き出していた。

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