第3話 お客さんかほとんど来ない温泉宿の起死回生策3

山奥に建つ、古びたというよりボロボロの温泉旅館だ。

 山と川の間にあるわずかな平地にへばりつくように建っており、台風や豪雨災害での土砂崩れの危険があり、現在は災害危険区域になっており、もう建て替えての再建はできない。補修しかないのだ。

 そういうわけで、かなり年季の入った木造の建物での営業が続いている。

 80歳の父と55歳の息子の2人で運営。

 川沿いにある露天風呂は混浴。男女別内湯も含めて、全てが源泉かけ流し。


 お湯だけは良いが、インバウンドを取り込むこともなく、赤字経営が続いていた。


 さらに、80歳の父親が2度も結婚詐欺に遭いそうになっていた。

 すんでのところで息子が止め、事なきを得た。


 「ちょっと相談があるんやけど、ワシ、今度こそ、騙されずに再婚しようと思ってるんや。」

 「えーっ!親父、また再婚?2回も結婚詐欺に遭いそうになったのに、ぜんぜん懲りてへんなあ。今度はどんな詐欺師や?」

 「詐欺師って決めつけんなや。相手は女将の派遣会社や。ワシのインスタにDMを送ってくれたんや。日本の温泉宿の再生をしている会社が女将を派遣してくれるんや。で、ここで一緒に苦楽を共にしてこの温泉宿の再生を目指すうちに、愛が芽生えるっちゅうわけや。今度は、カツラも通販で買うて、本気やで。お笑いが好きらしいから、このカツラネタで笑いも取れるし、カツラをいつカミングアウトするか、それを悩んどるんや。」

 「カミングアウト?はあ?結局、めちゃくちゃハゲとるやないか!」

 「まあ、ハゲとるのはしゃあない。それはともかく、今回は具体的にいろいろ用意しとくモノまでメッセージが来とるんや。今、メッセージのやり取りは、テレグラムでやっとる。」

 「あかん!犯罪の匂いしかせえへん!で、何を用意しとけって言われとるんや?」

 「まあ、ユニフォームにする着物を買うのに200万とか住み込み部屋の改装費用に200万とか、けっこうかかるんやけど、これで人気宿になったら、すぐもとは回収や。」

 「高い!詐欺の匂いしかせえへん」

 「この女将候補達の写真、ええやろ?」

 「いかにもどこか実在の女将の写真を適当にパクってきた感じやな。」

 「で、わからんのは、練炭を用意しとけということや。炭火で何か料理するのを売りにするつもりらしいけど。」

 「それ、絶対にあかんヤツや!親父、練炭自殺に見せかけて殺されるで!っていうか、オレ、犯人にされそうやわ!」


 女将が来ることはなく、男2人での経営は続く。

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