第30話 vs サハギン

 ダンジョン内に土魔法でドームを作って休憩する作戦は上手くいった。この方法なら、かなり安全に休めることが証明されたわけだ。過信はできないけどね。


 休養を十分取ったことで、まるもルナも元気いっぱいだ。早速、ダンジョン攻略を再開しようと思う。


 なんとなく半分くらいまで到達している気はしたが、再開して最初に出遭った侵略者アグレサーが二体のサハギンだったので、その感覚もあながち間違いじゃないと思えてきた。


 サハギンは簡単に言えば二足歩行の魚だ。形は人間に似ているが、全身鱗で覆われ、手には水かきもついている。顔はほぼ魚だが生意気にも武器を持っている。あれは農家にあるピッチフォークに似ているな。


 身長は大人くらいあって、ゴブリンよりもワンランク上の侵略者アグレサーだ。


〈まる、ルナ、ゴブリンよりも強いみたいだ。気をつけて〉


「おいらに任せるわん! けちょんけちょんにしてやるわん!」


「まる、余計なことは言わないにゃ!」


 相変わらず調子のいいまる。だが今回の相手はそのまるの言葉を理解していたようだ。短い雄叫びを上げて、二体ともまるの方へと走り寄ってきた。


「なんでだわん!? オイラばっかり狙うなわん!?」


 突然、二体のサハギンに追いかけ回され慌てて逃げ回るまる。これを機に『口は災いの元』ということわざを覚えて貰いたいものだ。


「丁度いいにゃ。そのまま、囮になるにゃ」


 ただ、この状況はルナにとっては都合がよかったみたい。まるを追いかけるサハギンの背後に忍び寄り、その首元を鋭利な爪で切り裂いた。


 ギョォォォォ


 後ろを走っていた仲間の叫び声に思わず振り返るもう一体のサハギン。


「隙ありだわん!」


 その絶好のチャンスを逃さずに、反転してこれまた首元へとかみつくまる。


 グギャ


 首から体液を流し、倒れ込むサハギン二体。よし、格上相手にちょっと厳しいかと思ったけど、余裕だったね。これなら、まだしばらく手を出さなくても大丈夫そうだ。



 そこからさらに三階層進んだところで、ついにサハギンの上位種が現れた。


〈ルナ、まる、ちょっとストップ。サハギンの上位種だ。ここからは僕も戦闘に参加するね〉


 姿を見せたのは、サハギンジェネラル二体とサハギンウィザード一体だ。流石にこの三体相手に二人じゃきつい。


 つまり、いよいよ僕の出番というわけだ。


「わかったわん! 任せるわん!」


「ありがとございますにゃ! ちょっと厳しいと思ってたにゃ」


 ルナの方は鑑定スキルを持っているわけじゃないのに、およその強さがわかるようになっていた。すごいね。


 まるも元気があってよろしい。


 僕は二人にサハギンジェネラルの相手を頼み、サハギンウィザードの相手をするべく飛び立った。


「ギャギャギャ!」


 サハギンウィザードも僕を敵だと認識したようで、ギャーギャー騒ぎながらウォーターボールを用意している。であれば……


(ストーンウォール!)


 僕は自分の目の前ではなく、サハギンウィザードの目の前に土の壁を創り出した。ウィザードが放ったウォーターボールがその土の壁に当たりはじけ飛ぶ。さらにはその壁が目くらましとなって、ウィザードは僕の姿を見失ったようだ。


 その隙に、右へと旋回しストーンニードルを準備する。土の壁を崩し、僕を見失っているウィザードめがけてストーンニートルを飛ばした。


 ギュルルルル!


 ウィザードが気がついたときにはすでに、高速回転したストーンニードルが目の前へと迫っていた。


 ギョォォォォ!


 ジェネラルに比べ、身体能力が低いウィザードが避けられるわけもなく胸にストーンニードルが突き刺さった。しかも、ただ刺さっただけではなく回転しながらめり込んでいき、ついには胸を貫通してしまった。


 その一撃で絶命するサハギンウィザード。


 後は二体のジェネラルだけだ。さて、まるとルナはどうなっているかな。僕は二人が戦っている方に目を向ける。


 ルナの方は危なげなくサハギンジェネラルを翻弄していた。持ち前の敏捷の高さで的を絞らせず、相手の攻撃が空振りして態勢が崩れたところを狙ってダメージを与えている。


 一方、まるはというと、こちらは多少傷がつきながらも正面から堂々と渡り合っていた。回避は必要最低限にして、攻撃に重きを置いているようだ。一撃一撃が確実に大ダメージを与えている。


 頼もしい二人の仲間をしばらく見守っていたが、先にまるがジェネラルを倒し、その数分後にルナも無事にジェネラルを倒しきった。


「オイラの方が先に倒したわん! つまりルナよりオイラの方が強いってことだわん!」


「あら、にゃにを言ってるのかしら? あんたは自分の身体を見てみるといいにゃ。わたしと違ってその傷だらけの身体をどう説明するのにゃ?」


「こ、これは名誉の負傷だわん……。勝敗には関係ないわん……」


「そもそも、侵略者アグレサーと戦うのはあんたとの勝負のためじゃないにゃ。そこを勘違いしないことにゃ」


 うん、やっぱりまるがルナに口で勝てるわけがない。言い負かされてしょんぼりしてるけど、今回もルナの言うことが正しいからね。まるも勉強になっただろう。


〈二人とも強くなったね! この調子でレベルを上げていけば、もっと強くなれるはずだから頑張ろう!〉


 それでも二人とも頑張ってジェネラルを倒したことに違いはない。僕は二人を労って、まるの傷を治してあげた。


「やっぱりミストはわかってくれてるわん! 一生ついていくわん!」


「もう、あんまりまるを甘やかさないでほしいにゃ」


 まるが調子に乗りそうになったら、ルナがしっかり釘を刺してくれるから大助かりだ。この調子でどんどんレベルを上げて、ダンジョンを攻略してしまおう!

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