第25話 守護者を助けよう

〈まる、ルナ、準備はいいかい?〉


「オッケーだわん! いつでも出発できるわん!」


「おかげさまで、昨日は幸せな時間を過ごせたにゃ。もう大丈夫なのにゃ!」


 一夜明けた次の日、僕らは早朝から入り口に集まっていた。まる曰く、昨日はあの後、守護者ガーディアン達に追い回されて大変だったらしい。どうやら、まるとルナがゴブリン戦で魔法を使っているのがバレていたらしく、何とかまるとコミュニケーションを取りたかったみたいだ。


 しかし、まるは人間の言葉を理解しているが発音はできない。念話でもできれば別だが、結局、言葉が通じないから逃げ回っていたそうだ。


 一方、ルナは飼い主さんのところに隠れていたから守護者ガーディアン達には見つからずに済んだみたい。久しぶりに大好物のお刺身をいただいたそうだ。うん、普通にうらやましいぞ。

 お別れはちょっとつらかったみたいだから、飼い主さん達が寝ている間に出てきたってさ。


〈それじゃあ、まずは埼玉方面目指して行きますか。途中で出遭った侵略者アグレサーはできるだけ倒していく方向で〉


「任せるわん!」

「了解ですにゃ」


 二人の元気いっぱいの返事を貰ったところで、僕は先導するためにスイッと飛び立った。




「何かが戦ってるような音が聞こえるにゃ」


 侵略者アグレサーを倒しながら進むこと数時間、昼食を食べている最中にルナが何かを感じ取ったようだ。探知を一瞬だけ広げたけど、僕が感知できる範囲外だったようで確認できなかった。


 ただ、ルナもまるもレベルが上がるとともにステータスも上がっている。身体能力が高くなった分、ルナの聴覚やまるの嗅覚はとんでもない高性能になっているようなのだ。そのルナが言うのだから間違いないのだろう。


〈どっちの方向かわかるかい?〉


「もちろんですにゃ。案内するにゃ」


〈ちょっと待つわん! これだけ食べさせてほしいわん!〉


 まるの訴えを無視して、ひらりと身を翻し、タッと走り出すルナ。さすがは猫。動きに無駄がない。


 一方まるは、ガッと食べ終えて、ガッと頭を上げて、ドドドッと走り出す。うん、勢いがあってよろしい。


 二人の動作を見届けた後、僕は四枚の羽をブイーンと動かし、シュッと飛び立った。


(あれは……人間と侵略者アグレサーが戦ってるみたいだ。侵略者アグレサーの方は……メタルスコーピオンって出てるな)


 ルナについて行くこと数分、ようやく僕の探知に侵略者アグレサーがかかった。名前はメタルスコーピオンと出ている。もしかしたら、毒持ちかもしれないね。


〈ルナ、まる、相手はメタルスコーピオンだ。尻尾に毒があるかもしれないから気をつけて〉


〈情報ありがとうですにゃ〉

〈オイラが尻尾をかみちぎってやるわん!〉


 僕からの情報を得た二人は、さらにスピードを上げて戦いの場へと向かっていく。


「くそ! 何で避難所セーフティーの近くにこんなに強い侵略者アグレサーがいるんだよ!」


「無駄口を叩くな! 死にたいのか? 集中しろ!」


 戦場にたどり着いた僕らが見たのは、一体のサソリ型の侵略者アグレサーと戦う二人の若い男性だった。


 サソリの名はメタルスコーピオン。メタルアントと同じくらい銀色で、姿形は普通のサソリとほとんど同じだが、その大きさは比べものにならないくらい大きかった。全長二メートルほどあり、もたげた尻尾は二人の男性の背丈を優に超えている。


 一方二人の男性はというと、二人とも手には槍を持ち簡素な鎧を着ている若者だった。一人は黒髪の中肉中背で槍を両手に持ち、必死にメタルスコーピオンの攻撃を弾いている。

 もう一人は、茶髪の細身のスラッとした長身の男で黒髪の男性より少し年上に見える。メタルスコーピオンが黒髪の男性を攻撃している間に、横に回り込み槍を突き立てようとしているように見えた。


「ぐは」


 しかし、茶髪の男性が攻撃するより早く、黒髪の男性がメタルスコーピオンの猛攻に耐えきれず、吹き飛ばされてしまった。


「サトル!? ちくしょう! これでも喰らえ!」


 ガキン!


 黒髪を吹き飛ばすことでできたメタルスコーピオンの隙を突くように、茶髪の男性が槍を突き出した。その先端は確かにメタルスコーピオンの胴体に当たったのだが、見るからに硬そうな外骨格を貫くには至らなかったようだ。それどころか、乾いた金属音が響き、茶髪の男性は衝撃で槍を落としてしまった。


 ゆっくりと振り返るメタルスコーピオン。茶髪の男性には恐怖の時間だろうね。


〈ルナ! まる!〉


 まずは二人に攻撃を任せる。


〈任せるわん!〉

〈はい、ダークアローにゃ!〉


 ガキィィィィン!


〈痛いわん。硬すぎるわん〉


 尻尾を噛みにいったまるは、あまりの外骨格の硬さに歯が立たなかったようだ。顔を抱えてうずくまっている。


 ブシュ!


 一方、ルナが放ったダークアローは、メタルスコーピオンの尻尾の付け根に突き刺さりそのまま両断してしまった。相手の特性を読んで魔法で攻撃するあたり、状況判断はルナの方が上手だね。


〈ミストさん、トドメをお願いしますにゃ!〉


 さらにはレベルの低い僕にトドメを譲ってくれる余裕すらある。ルナなら、このまま一人でも倒せるだろうに。


〈ありがとう。それじゃあ遠慮なく、ウォーターアロー!〉


 せっかくのルナの厚意だ、ありがたく受け取っておこう。


 僕が放ったウォーターアローは、メタルスコーピオンの胴体を貫通し、地面に深い穴を開けて消滅した。


「犬に……猫? はっ!? サトル!? 大丈夫か!?」


 まるとルナの参戦に唖然とした表情を見せていた茶髪の男性だったが、吹き飛ばされた相棒のことを思いだし、心配そうにかけよる。


〈ミストさん、この男性、頭から血を流してるにゃ。どうするのにゃ?〉


 サトルと呼ばれた男性の状態を見たルナが、心配そうな目で僕を見つめる。


〈うん、大丈夫。助けてあげよう。まる、その黒髪の男性の様子を見てくれるかな?〉


〈うぅぅ、オイラの噛みつき攻撃が……わん? 任せるわん! オイラが様子をみるわん!〉


 落ち込んでいたまるに役割を与えることで元気になって貰う作戦だ。そして、まるが男性の顔をのぞき込んだタイミングで治癒魔法をかけた。


〈ミドルヒール!〉


 サトルと呼ばれた男性の頭の傷がみるみる治り、すぐに意識を取り戻したようだ。


「うぅ、ここは……あっ!? ハヤト! メタルスコーピオンは!?」


「……えっ? あっ、あれだ。メタルスコーピオンはそこで倒れてる。この、犬? と猫? が倒してくれたんだ。それにお前の傷もこの犬が……ええ!? 何だこの犬と猫は!?」


 予想外の急展開にハヤトと呼ばれた茶髪の男性は絶賛混乱中のようだ。その隙に僕らはこの場を離れるとしよう。


 守護者ガーディアンの二人が状況を確認し合っている間に、僕らはそっと埼玉避難所セーフティーに向けて移動を再開するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る