第11話 捜索開始

〈さて、これからのことなんだけど、僕はルナと約束してルナの飼い主を探しに行こうと思うんだけど、まるはどうする?〉


 僕はルナとの約束をまるに伝えて、反応を確かめる。


「もちろんオイラもついていくんだわん! もっと強くなって、今度こそ大切な人を守れるようになるんだわん!」


「いや、強くなりたいのは結構だけど、今度こそ大切な人を守りたいってどういうことにゃ? あんたの大好きな七色帷ななしきとばりは、そこの避難所セーフティーで元気に暮らしてるわよ?」


 臆病な性格を治したいまるは、もっと強くなりたいと格好よく宣言したのはいいが、いきなりルナに飼い主が無事だとカミングアウトされて固まってしまった。


「ほ、ほんとなのかわん? 嘘じゃないわん?」


「失礼ね。なんでわたしが嘘をつかないといけにゃいのよ。さっき、あんたを探してるときに見かけたから間違いないわ。なんか噂になってたにゃ。クモの侵略者アグレサーに襲われたんだけど、アリの侵略者アグレサーに助けられたらしいにゃ」


 へー、侵略者アグレサーに助けられた人間がいるのか。侵略者アグレサー同士でも争うことがあるのかな? なんてことを考えていると、じっとこちらを見つめるルナと目が合った。


〈どうかした?〉


「ミストさんって、進化してその姿になられたのですよね? 一番最初は何の侵略者アグレサーだったのですか?」


〈うん、メタルアントだね〉


「その時、車に乗ってた一家を助けたことはありませんでしたか?」


〈うん、そういえばそんなこともあったね〉


 ルナに聞かれて思い出した。確か、オーロラにそっくりな子が襲われていたから、思わず助けたことがあったんだった。もしかして、その一家がまるの飼い主だったのか?


「あ、ありがどうだぁわん。帷ぢゃんをだずけてくれて、ありがどうだぁわん」


 飼い主が生きていたことがよっぽど嬉しかったのか、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で、必死にお礼を言ってくるまる。うん、よかった。あの時助けられて。


〈それじゃあ、まるは元の飼い主さんのところに戻るかい?〉


 大好きな家族が生きているとわかれば、帰りたいんじゃないかと思って聞いてみたんだけど――


「帰らないわん。オイラは家族を守れるくらい強くなるまで帰らないと決めたんだわん!」


 どうやら、まるの強くなりたいという思いは本物だったようだ。ルナもさっきまで呆れていたのに、今はちょっと温かい眼差しでまるを見守っている。なんだかんだで、放っておけないって感じなのかな。


〈それじゃあ、まずはルナの飼い主さん達が向かったところに行ってみよう。ルナ、案内を頼むよ〉


「はい! 任せてください!」


 こうして、三人となった僕らはルナの家族が向かったという、千葉県にある大型のテーマパークを目指すことにした。



 ▽▽▽



(あの二人、言い争いばっかりしてるな。ちゃんと警戒してほしいんだけど……)


 空を飛んで移動する僕の眼下では、まるとルナがぎゃーぎゃー文句を言い合いながら走っている。基本的に、調子に乗ったまるがルナに突っ込まれては反論しているようだ。


 ルナは僕の前ではお淑やかなんだけど、まるには随分厳しいな。あ、メタルアントの一団がいる。まあ、あの程度の数であればレベルが上がった二人なら対処できるだろう。


〈おーい、二人とも三百メートル先にメタルアントの一団がいるよ。ケンカしてないで経験値を稼いでおいで〉


〈にゃ!? ミストさん! お恥ずかしいところを見せてしまいましたわ〉

〈ミストも何とか言ってほしいわん。ルナがいじめてくるんだわん〉


 二人からの念話が返ってきたけど大丈夫か? まあ、メタルアントに怯えた様子を見せないということは、戦っても勝てるという自信がついたということにしておこう。


「まる、あんた足を引っ張るんじゃにゃいよ!」


「オイラは強くなったんだわん! ルナこそ怖かったら隠れてていいんだわん」


「いったわね! じゃあ、どっちがたくさん倒せるか勝負にゃ!」


「受けて立つわん!」


 おいおい大丈夫か。遊びじゃないんだぞ。


 だが、僕の心配はよそに二人はメタルアントを次々と倒していく。まるが噛みつき、ルナが猫パンチを繰り出す。その度に、確実にメタルアントの数が減っていく。二人はあっという間に数十匹はいたメタルアントを全滅させた。


〈さすがレベルが上がっただけあるね! 二人とも随分強くなったよ!〉


〈これもミストさんのおかげですにゃ。ありがとうですわ〉

〈オイラは強くなったんだわん! もう昔のオイラとは違うわん!〉


 うんうん、今ので二人ともひとつずつレベルが上がって8から9になったようだ。この調子でいけばもっと強くなれるだろう。


 と二人の様子を見守っていたら、強い侵略者アグレサーが探知にかかった。真っ直ぐこっちに向かってくる。こいつは少々強敵のようだ。今の二人には荷が重いだろう。


〈北の方から強い侵略者アグレサーが接近中。僕が相手をするから二人は下がってて〉


〈わかりました。ミストさんも気をつけてください〉


〈大丈夫だわん! 強くなったオイラが蹴散らしてやるわん!〉


 なんと、ルナは僕の警告にすぐ従ってくれたんだけど、まるは強くなって調子に乗ってしまっているのか、相手もわからないのに北へ向かって走り出してしまった。


〈こら! まちにゃさい! ミストさんの言うことを聞きにゃさい!〉


 まるを追ってルナも駆け出す。これはまずい。僕も急がないと。ちなみにこっちに迫ってきている侵略者アグレサーはというと…… 


種族 ブラックウルフ

名前 なし

ランク F

レベル 16

体力 224/224

魔力 0/0

攻撃力   41

防御力   37

魔法攻撃力  0

魔法防御力 25

敏捷    48


スキル

噛みつき

ひっかき


 相手はオオカミの侵略者アグレサーか。空を飛んでいる僕にはもう肉眼で見えている。だけど、地上を走る二人は建物が障害物になっていて見えていないようだ。くそ、まるもルナもレベルが上がったせいか、結構足が速くなっている!


 夢中で走っているからか、こっちの声も届いていないようだ。しかも、接敵は向こうの方が先っぽい。頼む、一撃で死なないでくれよ!


「ぎゃあ!? オオカミだわん!? 怖いわん」


 黒いオオカミを視界に捉えたまるは、オオカミの大きさにびびったのか急ブレーキをかけた。


 ぼふ


 その背中にルナが激突する。


「ちょっと、急に止まるにゃ!」


 ルナがぶつけた鼻をさすりながら文句を言う。


 ガァァァァ!


 その時、瓦礫を飛び越えブラックウルフがまるとルナの目の前に降り立った。明らかに怯えているまる。毛を逆立てて威嚇するルナ。もう少しで到着するから、頼む、僕が到着するまで死なないでくれ。


「ちょ、ちょ、待つわん。危険があぶないわん!」


 ブラックウルフが先制攻撃とばかりに、まるめがけて飛び込んでいく。まずい!? 間に合わない!?


 ドン


「気をつけるにゃ! びびって固まってる場合じゃないにゃ!」


 ルナが体当たりをすることで、辛くもブラックオオカミの噛みつき攻撃を避けることができた。よくやったルナ!


「ありがとうだわん! この恩はいつか絶対返すんだわん!」


「余計なこと言ってないで、さっさと逃げるんだにゃあ!」


〈二人とも後ろに飛んで!〉


 今度は僕の声が届いたようだ。二人が慌てて後ろへ下がる。


「ストーンニードル!」


 ようやく追いついた僕はすれ違いざまに、ストーンニードルを五つ放った。相手はランクもレベルも僕より上だけど、ステータスはむしろ僕の方が勝っている。これが進化の素晴らしいところなのだ。


 空中からの攻撃に、ブラックウルフは避けることしかできない。しかも、僕の魔法攻撃力はブラックウルフのステータスを遙かに上回っている。最初に一つはかろうじて躱すことができたようだが、残りの四発は全て命中した。


 一発は前足に、二発は胴体に、そして最後の一発は眉間に当たった。もんどり打って倒れるブラックウルフ。どうやら致命傷を与えることができたようで、びくびく痙攣した後動かなくなった。


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