未練を断てなかった。sns中毒の闇。

星咲 紗和(ほしざき さわ)

第1話 居場所と、SNSの暗闇の中で

家庭でも、職場でも、自分の居場所が見つからない。そんな漠然とした孤独を抱えた私は、救いを求めるようにSNSを始めました。スマホの画面の中だけが、自分を肯定してくれる場所に思えたのです。


両親の毎日の怒鳴り合いの喧嘩。逃げ場のない家庭の中で、静かに身を潜めながら過ごしていました。職場でも、周りの私語や雑談が耳に刺さるように感じ、誰とも打ち解けることができなかった。そんな時、SNSは私を簡単に「つながり」の世界へと誘ってくれました。画面越しの言葉は鋭さを持たず、いつでも自分を受け入れてくれるように感じたのです。


初めて投稿したのは、他愛もない一言。「今日は疲れた」。たったそれだけの言葉に、知らない誰かが「いいね」を押してくれました。その瞬間、何かが満たされたような気がしました。次第に投稿が増え、通知の音が鳴るたびに心が躍るようになりました。朝起きるとまずスマホを手に取り、夜寝る前までタイムラインを眺める日々。自分の価値を、「いいね」やフォロワー数で測るようになっていました。


でも、次第に違和感が生まれてきました。たくさんの「いいね」がついても、心の中の虚しさは消えません。どれだけ投稿しても、どれだけ反応を得ても、どこか満たされないのです。自分の本当の居場所ではないと気づき始めた瞬間、SNSの画面が急に冷たく、遠いものに感じられました。


ある日、私は思い切ってアカウントを削除しました。「もうSNSに頼るのはやめよう」と決意したのです。しかし、完全に断ち切るのは想像以上に難しいものでした。数日後にはまた新しいアカウントを作り、再びタイムラインを眺める自分がいました。その繰り返しが、さらに私の心を追い詰めていきました。


今ではSNSを完全に辞め、執筆や創作に力を入れています。創作を通じて自分の中にある感情を整理し、少しずつ「本当の居場所」を見つけようとしています。それでも、SNSへの未練が完全に消えたわけではありません。時折、あの手軽な「つながり」が恋しくなることもあります。でも今は、その気持ちを抑え、前に進むための力に変えています。


私はまだ、本当の居場所を探している最中です。でも、その暗闇の中で確実に前に進んでいることを信じています。SNSを辞めたからこそ、こうして一歩を踏み出せたのです。

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