クラーケン

 ここまで来るのに四月もかかった。


 当初の予定では一月で魔王のところまで行けるはずだと言われて居ったから、食料とかも一月分しか用意されてなく、今では狩などをして食い繋いでいた。


 トルメキア王国のルナ姫などは、儂らはもう死んだと思うて居るだろう。


 この四月の間に皆んなかなり強うなったはずだ、ミリアなどは相変わらず風呂がどうのとかほざいて居るが、儂との対峙など平気で一刻は耐えられるようになって居る、汗さえかかなくなった。


 アルは尋問じんもんをするのが病みつきになって居る、尋問をする時は全部自分に任せろと言う。


 その代わり情報を聞き出すのは上手い、相手が何をされるのが嫌なのかを熟知して居るのだ、先ほども偵察兵ていさつへいを捕まえて尋問をしたのだが、有力な情報を掴んでいた。


 偵察兵の死体はそこら辺に転がっている。


 その情報でクラーケンの居場所がわかった、他にもクラーケンの身体的特徴だとか行動パターンまで聞き出して居た。


 驚いたことにクラーケンは絶世の美男子らしい、儂はタコだと思って居たのだが……


 それを聴いて何を思ったかミリアがクラーケンは私が殺ると言い出した。


 誰が殺っても良いのだが、儂はクロエが殺るべきだと思うて居る。


 儂らは夜を待ってアルが尋問で聞き出した地下通路を通り、北の炭鉱内にあるクラーケンの居室へ向かって居る。


 こんな通路があるとは、アルの尋問手腕も大したものだ。


 誰にも会わずにクラーケンの居室へと来てしまったが、何とも簡単で拍子抜けしてしまう、しかしこのような時はきっと後からしっぺ返しを喰らってしまう気がする。


 そのまま寝室に入るとベッドの中にクラーケンが眠って居た。


 ミリアが進んでいって眠って居るクラーケンの顔の前に剣を突きつけた。


「クラーケンよ、そのまま動かずにゆっくりと目を開けよ」


「ふふふ、ネズミが私の寝室に忍び込むとはな」


 そう言うとクラーケンはゆっくりと目を開けた、そしてミリアを見た。


「ほう、美しいネズミも居るのだなあ」


 ミリアは表情も変えない、ただ冷たい瞳で見下ろして居るだけだ。


「お前が今までして来たことは許されることではない、私の剣のサビになりなさい」


「はははは、面白いことを言うじゃないか、どうやってやるのかやってもらおうか」


「おだまりなさい、お前の……?……か、身体がうご……かな……い」


 ん? どうしたのだミリアは、剣を突き付けた体制のまま固まって居るのか。


「ミリア、何をされた、だいじょうぶか?」


 今度は飛び出して行ったアルが途中で動かなくなった。


「剣鬼さま、ヤツの目を見てはいけません、目を合わせると動けなくなります、これはヤツの魔力です、気を付けてください」


 ミネルバは目を閉じたままで言った、それを聴いたクロエが慌てて目をつぶった。


「ふふふ、よくわかったなネズミよ、しかし目を閉じたままでどうやってこのクラーケンと戦うのだ」


 いつの間にかクラーケンは立ち上がって居て、目を閉じたミネルバに近づいて行く。


「目を閉じていては動けないことと同じではないか」


 そう言ってミネルバの頬を思いっきり引っ叩いた、その反動で目を開けたミネルバは動かなくなってしまった。


 なるほどのう、儂はクラーケンとバッチリ目が合うて居った。


「ん? なぜだ爺い、このクラーケンと目が合っても何ともないのか」


 そう言えばさっきから一部始終を見て居るし、今も目がバッチリと合うて居るが何ともないのう、それよりも……


「儂を爺いと呼んでただで済んだ者は居らぬのだがのう」


「だまれ爺い、オーク隊を殲滅させたのもキサマらの仕業だな」


 また儂を爺いと呼び居った、どうやらただ斬るではなくお仕置きが必要じゃのう。


 まず儂はクラーケンの目を二つ刀の先で突いてやった。


「ぐわっあああ!」


 このことでミリアたちは動けるようになった。


「剣鬼さま、ありがとうございます、あっ」


 自分でやっておきながらひざまづいて両目から血を流しているクラーケンはグロいのう、ミリアたちは驚いているが、アルはコーフンしておるようだ。


「おのれ、私の顔を……おのれ、おのれ、おのれ」


 ブツブツ言っているクラーケンの身体がだんだん大きくなって行く。


「お師匠さまクラーケンが……」


「わかっておる」


 大きくなって行ったクラーケンが最後には巨大な大ダコに変身した。


「やっぱりタコではないか」


 八本の足が飛んで来てアルとクロエが巻きつけられた。


「うわー、なんだこれは、く、苦しい」


 儂は足を斬ってやり、アルとクロエを解放してやった。


 するとその足は直ぐに再生した、なんだこれはこれでは斬っても斬ってもキリがないではないか。


「ふはははは、どうしたオレには勝てまい、オレはネームド(名前持ち)なのだ、強いのだ、お前ら全員生きては帰さんぞ。


「なんじゃ、ネームドとは?」


 それをミネルバが説明して聞かせてくれた。


「ネームドとは名前が付いてるということで、普通の魔物には名前もありません、この名前が付くと言うだけで魔素が莫大にアップするのです、自分より遥かに強い者からしかネームドして貰えないはずです」


「と言うことは魔王からネームドして貰うたということじゃな」


「おそらくは……」


 足を斬っても直ぐ生えてくるので意味がない、だったら頭の部分を斬ってみるか。


 儂は迷わず直ぐに実行に移した、クラーケンの頭の部分まで飛んでいって、めった斬りにしてやった。


 まあ、儂の速さに敵うヤツはおらぬので、呆気なく見えただろうが儂は一瞬の間に20太刀は入れて居るからのう。


 さっきまで大口を叩いて居ったクラーケンはもう動かない、死んだのじゃ。


 他の者たちも呆気にとられている。


「なんじゃ呆気ない、弱すぎたのう」


「いえ、剣鬼さまが強すぎるのです」


 皆んなが声をそろえて言った。

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