伝説の剣豪を異世界召喚してみたが、これが全然言うコトを聞きません(仮)

道筋 茨

異世界召喚

 どうやらわしは死んだようじゃ。


 どうみてもここはわしのおった世界ではない。


 見たこともない景色に、異国の服を着た者たちがわしを見ておる。


 ここは天界であろう、アレほど人を斬って来たというのに地獄ではなくて天国に来るとはのう、分からんものじゃ。


 生前の儂は人から剣鬼けんきと呼ばれ恐れられておった。


 やりたい放題の人生であったが剣一筋に邁進できた、我が人生に悔いはない。


 そんな儂もとうとう死んだようじゃな、成仏せねばいかんのう。




 ん? 天上人が何か言っておる。


「異世界人よ、我が召喚にお命じ下さりありがたき幸せ、トルメキア王国へようこそおいで下さりました」


 なにを言っておるのかさっぱり分からんが、儂を歓迎してくれておるようじゃ。


 ここは天国ではないのか? だとしたら何処なのじゃ。


 儂は死んでおらんのか、わけが分からん、儂は神隠しにおうたのであろうか。


「異世界人様、どうぞこちらに」


 なにやら女人が出てきて儂を呼んでいる、何処へ連れて行くのだろうか。


 わけが分からぬまま連れて行かれた場所は、広い部屋じゃった。


 部屋の中央に偉そうな男が座っておって、その周りに何人かが居た。


「召喚者よ、ようこそトルメキアに、私が国王アルテミスである」


 なんじゃ、此奴は偉そうに。


 よくは分からんが、儂はこの世界に呼ばれたということか。


 なんじゃ、儂は死んではおらんということか。


「おい、お前、王に対して失礼であろう」


 お? 今度は違う女人が儂に絡んできおったわ、元気が良いのう。


 女戦士というわけじゃな。


「なんとか言わぬか、なにも言わぬなら斬り伏せようぞ」


 儂を斬り伏せるとな。


「ほう、おもしろい、やってもらおうか」


 儂は刀の鍔辺りに軽く手を置きいつでも抜ける体制をつくった、そしてその抜き打ちの体制のまま相手に気を飛ばした。


 ふん、どうした動けまい、一歩でも動けばお主の身体は真っ二つじゃ。


 お前が今いるところは儂の間合いの中じゃからのう、さあどうする。


「ミリア、おやめなさい」


 また違う女人か、今度はなんじゃ。


「召喚人よ、私はルナともうします、家来の無礼をお許し下さい」


「姫様、しかし」


「ミリア、お前は下がっていなさい」


 ルナという姫が一喝すると女戦士はおとなしく下がっていった。


 そしてルナ姫は儂の前にやってきた。


「お父様、私が話しをします」


「うむ、任せよう」


 ふーん、どうやら儂に話しがあるようじゃ。


「あらためて召喚人よ、我がトルメキア王国にようこそお越し下さいました」


「ん? 呼んだのはそっちじゃろう」


「そうですね、異世界人を召喚させていただいたのには理由があるのです、一年ほど前のコトなのですが我がトルメキア王国の東にある大樹林に魔王が降臨したのです」


「ほう、魔王とな」


「はい、それまで平和だった我が王国も、至る所で魔物が現れては悪さをするようになりました」


 魔王とか魔物とか、儂に退治させたいのであろう。


「私たちは騎士団を組み魔物たちと戦いました、そして直接魔王に戦いを挑みましたが全滅させられました」


「ほう、そんなに強いのか」


「はい、私たちの力ではとても敵いません、召喚者よどうか力をお貸し願えないでしょうか、お助けください」


「なぜ儂なんじゃ」


「異世界人だからです、その異世界人のなかで一番パワーの強い者を召喚したのです」


「ふん、そう言うことか、儂は強いからのう、人からは剣鬼と呼ばれておった」


「そうですか、では剣鬼さま、どうかお願いしますお助け下さい」


 女人からここまで頼まれて断る男はおらぬよ。


 儂はもとの世界では全国を巡り、とにかく強い男を探しておった。


 幼き頃より剣術の修行に励み、今では儂が思う高峰には辿り着いておる。


 剣術を極めておるので誰にも負ける気がしない。


「分かった、よかろう、儂に任せておけ」


 儂の言葉にルナ姫の顔が喜びに弾けるのが分かった。


「おー、剣鬼さま、受けて居ただけますか」


 ルナ姫は喜びの声を上げた。


「ところで剣鬼さまどのようなスキルを取得されましたか」


「スキル? なんのことじゃ」


 なんでもこの世界に召喚される時にはスキルなる特別な能力が備わるらしいのだ。


 しかし儂はいたって普通でいつも通り何も変わったところはない。


「儂にはそのような物は備わっておらぬよ」


 そう言うとルナ姫は落単の表情を見せた、失礼な女人じゃのう儂を信用しておらぬのであろうか、なので儂は言ってやった。


「そんなスキルなど儂には必要ない、コレがあるでのう」


 そうやって儂の愛刀を見せてやった。


「いえ、剣鬼さまの力を疑うわけではございません」


 ルナ姫はそう言うものの、あきらかに儂の力を疑うておるようじゃが、まあよいその内に儂の凄さがわかるであろうよ。


「難しい話はそのくらいにして剣鬼殿、我が国をあげてのおもてなしをさせていただこう、皆の者用意をするのだ」


 国王アルテミスの一言で周りの雰囲気がガラリと変わり、一斉に料理や酒が運ばれて来て、宴が始まった。


 まさかこのような世界があるとは思いもしなかった、そして儂はこの世界で生きておる、不思議だのう。


 儂の名は伊東一刀斎、いち剣術家である、人は儂を剣鬼と呼ぶ。

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