第13話 決起の夜


♢♢♢


少年が鍛錬を積む時と同時刻。アドニスはミレアを宮廷医師の元へと連れて行く。彼女の折れた鼻骨と片腕。その二つは完治していた。


ミレア「...ありがとうございます。」

アドニス「気にする事は無いさ。それに君の身体の事だ、気に掛けないわけが無いだろう?」


彼女は痛みも無く全快した自身の身体を見る。ここまで早く治るものかと驚くばかりだが、それと同時に胸騒ぎがする。またあのメイド達と仕事をしなくてはならない。

だがそれはメイドとして必然。至極真っ当な事だろう。彼女はそう割り切りながらアドニスに礼を言った。


ミレア「そうですか...本当にありがとうございます。」


彼女はそう言って頭を下げる。そんな彼女を見て、彼は呟いた。それは微かな問いで、彼女以外には聞こえない物だった筈だが、彼女の耳にはそれがハッキリと聞こえる。


アドニス「ミレア。君は...メイドとして職を続けるのかい?」

ミレア「えっ...?」


唐突に問われるその問い。その意味が理解し難く、彼女は思わず声を漏らす。だが彼は真っ直ぐな瞳で彼女を見据えていた。ミレアは何故そんな事を聞くのか不審に思いながらも答える。


ミレア「もしもメイドを辞めたら...ご主人様とは離れ離れですよね...?」

アドニス「あぁ。残念だがそうなってしまう。僕とジョアノが彼を王宮に引き留めようとするだろうからね。」

ミレア「...そうですよね。まぁでも、私が王宮で働く理由はご主人様の御傍に居る事ですから...仕事を辞めようとは考えていませんけど...。」

アドニス「そうか...。済まないね、変な事を訊いてしまった様だ。」


そう言うと彼は扉を開いた。


アドニス「ミレア。君は部屋に戻ってくれ。僕はこれから...やるべき事が有るからね。」

ミレア「...分かりました。失礼します。」


彼女はそのまま部屋を出ると、自身の部屋に向かって歩き始める。その間も彼の問いの意味を考えていたが、何れは分かる事だろうと考えを捨て去るのだった。

部屋に戻るの後ろ姿をミレアを、アドニスは悲哀の目で見詰めていた。


アドニス「...話をつけようか。」



♢♢♢

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る