長政記~戦国に転移し、滅亡の歴史に抗う
スタジオぞうさん
プロローグ 夜桜
月夜を桜の花びらが舞っている。
夜桜は美しく、妖しい。
静かに杯を傾け、花びらを散らす桜の樹を観る。
こんな風に穏やかに夜桜を観たのは、いつ以来だろう。
空いた杯に徳利から酒を注いでいると、廊下を歩く足音が聞こえた。
「まあ、このような所にお一人で。」
聞き慣れた声に振り向くと、妻が近づいてきた。
美しく賢い、自分には過ぎた妻だ。
「たまには一人で桜を見るのもいいかと思ってな。」
「何をおっしゃっているのですか。宴を主人が抜け出してどうするのです。」
「済まない。今から戻るよ。」
長い廊下を妻と並んで歩き、大広間へ戻る。
今日は戦勝の宴だ。戻れば家族や家臣が楽しく飲み食いしているだろう。
孤独だった元の世界の暮らしを思えば、今の状態は想像できないなあと思う。
アパートで戦国時代のゲームをしたり、調べ物をするのが、数少ない気晴らしだった。
元の世界は平和だったが、今は戦国の世なので、いつ命を落とすか分からない。
しかし、妻や娘たちを悲しませないためにも、生き抜かなければと思う。
大切なものを失うのが怖いが、失うものがあることは幸せなんだとも思う。
この戦国の世に来て、いろいろなことがあった。
歴史に刻まれた悲劇を避けるために悪戦苦闘して、どうにかここまでやってこれた。
頼りになる家族と家臣にも恵まれた。
大それた望みだが、亡き義兄の遺志を継ぎ、天下を統一して戦国を終わらせたい。
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