第27話 お風呂バトル開始
くそ、こんな事になるとは……。なんで相手してやるなんて言ったんだよ、俺は。今からでもやっぱナシって事にできないもんか。
そんな事を思いつつ、俺はフェンリアに背中を向けながら浴室で椅子に座る。
「あら、ひょっとして『くそ、こんな事になるとは……。なんで相手してやるなんて言ったんだよ、俺は。今からでもやっぱナシって事にできないもんか』とでも思っているのかしら?」
「はあ!?んな事思ってねえよ!」
まったく、こいつはリーゼロッテと違って時々鋭い洞察力を見せやがる……。
「ただ、お前の遊びに付き合ってる暇もねえからさっさと済ませて欲しいだけだ」
「ふふ、あなたってどうしてそう強情なのかしら。あなたくらいの年頃の男の子なら、こういうシチュエーションに憧れるものなのじゃないの?」
「俺を育ててくれた人間の影響だよ。半人前のうちから女にうつつを抜かしてると、夢も叶えられなくなるぞ……って言われてきたからな」
「夢?」
俺の背後でフェンリアが首を傾げたのが分かった。
「
「まあな」
「教えて欲しいわね、その夢とやらを」
「悪いけど、こんな状況でその話をするつもりは無い」
「ふふ、それもそうね。それじゃあ……始めるとしましょうか」
そう宣言すると、フェンリアは俺との距離を詰める。そして……俺の体に、ふにゅりっとふたつの感触が触れた。
「ねえ、どう、アキトくん?この感触♥私、これに関しては自信があるの……。リーゼロッテ姫にだって負けてないでしょ?」
そのふたつの物体は、ボディソープの泡にしっとりと濡れて……俺の背中に心地よい感触を与える。それはまるで、蕩けそうな程に柔らかかった。そう、それはまるでスポンジのように……スポンジの、ように……。
「って、これ!スポンジだろ!」
「ええ、そうよ」
俺の前に手を回して、両手に持ったスポンジを見せるフェンリア。
「というか、体を洗ってあげるんだからスポンジを使うのは当然だろ?」
「いや、だってお前、これに関しては自信があるって……」
「そうよ。私の家が出資している会社で作らせたスポンジだもの。誇るのは当然でしょ?あら?ひょっとして……」
顔を近付けてくるフェンリア。その白銀の髪は湯気で濡れ、いつにも増して艶やかに輝いていた。
「もしかして、他のものを想像したのかしら?例えば……『む』ではじまって『ね』で終わるものとか」
「いや、それもう『胸』って言ってるだろ!」
「フフフッ……」
何がおかしいのか、フェンリアは俺の顔を覗き込んで笑う。
「アキトくん……あなたって、本当に可愛いわね」
「……馬鹿にしてんのか?」
「ええ、馬鹿にしてるわ。でも、ちょっぴり本気……かもしれないわね」
「何言ってんだか」
「まあいいわ。ほら、洗ってあげるから大人しくしていなさい」
フェンリアはスポンジを持ったまま俺の体に手を回すと、上半身から順番にゆっくりと洗っていった。俺はくすぐったさを覚えつつ、その感触に耐える。
「一応断っておくけれど……
「どこだよ、一番汚い部分って」
「それを私に言わせる気?それはもちろん、おちん」
「や、やっぱり言わなくていい!」
「ふふ、もちろん夫婦となった暁には
そんなやり取りを挟みつつ、フェンリアは俺の体を洗い終えた。さらにシャワーで俺の体に付着した泡を洗い流した後……今度は、シャンプーを手に取った。そしてフェンリアは、そのしなやかな指先で俺の頭皮をマッサージするようにしながら髪を洗い始めた。あれ、なんか、これ……。
「なんていうか……普通に気持ちいいな」
「あら、そう?それは良かったわ」
「お前、こういう事も得意だったのか?」
「違うわよ。私は大公の娘にして世界最高の魔術師、『魔導令嬢』よ?他人の髪を洗った経験なんてないわ」
「その割には……手慣れてる気がするけどな」
「まあ、
「え?わざわざ練習したのか?」
俺は驚きつつも心の底ではどこか納得する思いもあった。そうだ、フェンリアは高飛車な天才だが……目的を決めたら一切手を抜かない努力家でもある。
「ふふ、私が努力してまで
と言うや否や、フェンリアは俺の頭に滝の如き大量のお湯を頭から被せた。シャワーではない、魔術で生み出したお湯だ。
「あばばばば!おい、何すんだよフェンリア!」
「まあまあ、いいじゃない。ひとまずこれで終わり……という事で」
フェンリアがパチンッと指を鳴らすと、俺の頭に降り注ぐお湯は止まった。
「それではひとまず、私のターンは終わりという事で……次は
フェンリアは、俺に向かって両腕を差し出した。
体調不良のためいつも通りの時間に投稿できず申し訳ありません。
明日、明後日も夜の投稿になります。
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