おはなし会

第41話

午後から子供向けに「おはなし会」が催された。

子供向けであるが、大人の参加も多い。

やっぱり癒されるからかも知れない。



内容は〈手あそび〉〈大型紙芝居〉〈素ばなし〉〈読み聞かせ〉〈工作かい〉と盛り沢山である。



〈手あそび〉は子供たちの異様なハイテンションの中、あっという間に終わった。勿論付いていけなかった…(;-_-+



〈大型紙芝居〉は「だるまちゃんとてんぐちゃん」。懐かしい世界が36インチ大の大きさで繰り出される。思わず見入ってしまった。大人なのに…汗



そして〈素ばなし〉。「モチモチの木」というお話だ。大人もいるからだろうか、取り上げられるモノも懐かしい見知ったモノばかりである。



いよいよ〈読み聞かせ〉である。出てきたのは、いつか「ぐりとぐら」の絵本を穴が空くほど見つめていた男性だった。



患者さんじゃないんだ…



私がぼんやり見つめていると子供たちが口々に「あ―っ!イケメンだっ!イケメンっ!イケメンっ!」と連呼し始めた。

全く最近の子供は「イケメン」を「仮面ライダー」か何かだと思ってるんじゃないか?!という位の騒ぎ様である。

確かに彼は美形である。そして御坊さまヘッドでもある。モロ私のツボである。汗

しかし、この様に子供たちの情操教育的、神聖な場で不謹慎な邪念である。いかんいかん。ソレというのも、子供たちが「イケメン」コールなどするからだ。



ってか彼の場合、本来自身にプラスに働くであろうその容貌が、完全に仇になってしまっている。

もう〈読み聞かせ〉どころの騒ぎではない。

結局、彼は強制撤収された。



何だったんだ、今のは…



やがて「おはなし会」は興奮する子供たちをモノともせず、無理矢理〈工作かい〉へと流れていった。

恐るべしっ!「おはなし会」スタッフ。



彼はどうしただろう…

子供たちの為に、あんなに「ぐりとぐら」の絵本を見ていたのに…



気が付いたら探していた。



彼は休憩所の自販機の前の長椅子にいた。

少し不貞腐れたみたいに両足を投げ出して。

声をかけようかと思ったが…止めておいた。

何だかそういう彼も、もう少し見ていたかったからだ。



午後の日差しの中、御坊さまヘッドが妙に眩しい。

コレはコレで、ある意味有り難くて癒されそうだ…

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