どうしても海の中を知りたいから。

Chill_

第1話 鶯 芽生

とり高等学校一年、都内のそこそこ名門校。以前は男子校だったこの鳥ノ羽高等学校は、1999年1月30日午前、工事も着々と進行し男女共学の校舎に生まれ変わった。男子校が共学になる事よりも、ノストラダムスの予言が的中するのかどうかと周りは面白おかしくそわそわしていた。そんな中、その年にうぐいす 芽生めいは鳥ノ羽高等学校に入学した。


背丈156センチでローファーにセーラー服、ワンポイント刺繍の白色ソックスに、髪型は肩までのストレート茶髪。前髪はいつも海の生き物のヘアピンでとめていた。

高層マンションの建ち並ぶ都会の高校の入学式、芽生は緊張気味にも体育館にて新入生の中で比率の少ない女子生徒に話しかけると「緊張するね」と、仲良くなった友達とは同じクラスだといいなと思った。

パイプ椅子の並ぶ席順には全体で男女比7:3の何故か創立年には予想していた女子生徒が全体の3割しか入学しなかった。ほぼほぼ男子生徒で校長もどうしたものかと思ったようだ。

校舎は新たに女子トイレ、職員トイレ、プールまでへの男女別更衣室、視聴覚室、等々およそ共学になるに必要と有る物は増築され、万全の態勢で男子校から男女共学の県立高等学校、渋谷駅から徒歩30分の、鳥ノ羽高等学校は校舎の設立と共に創立七十九年を迎える。


体育館の舞台の横階段をスーツでネクタイを締めた鳥ノ羽高校の校長がゆっくりと足を踏み登り舞台に登壇すると、目の前のマイクに向かって新入生歓迎の言葉を話そうと口を開くが、一旦マイクの位置を微調整する為に布で擦れたようなくぐもった音が鳴った。


「.....え~、新入生一年生の皆さん、御入学おめでとうございます。我が鳥ノ羽高等学校は前年度から着々と男女共学の東京都内県立高等学校に生まれ変わる為の工事が進み、今年の春、今日ですね、無事に新入生の皆さん総勢142名の新入生を迎え入れる事が出来ました。え~、本日 三月二十三日平成11年度、第237回鳥ノ羽高等学校入学式を、この体育館に集まる総勢142名の皆さんと、この春のうららかな気候と共に鳥ノ羽高校、開校から七十九年また、新たな歴史を迎える事が出来た事を我々校長教頭教職員共々、心から嬉しく思います。.....創立七十九年、七十九は数字で十九 くを【く】と読みますね。鳥ノ羽高校、え~、とりく年、鳥の雛達が元気に鳴いている“微笑ましくも賑やかで”そして。“明るく暖かな”そのような皆さんでいてほしい。我が校でも【とりく年】なんて創立以来初めてです、このような特別な節目を目にされた貴方あなた方は新入生として、我が校に入学して戴いた皆さんは鳥に例えると、まだまだ雛の皆さんです。ですのでとり高校と共に成長し立派に大きな翼を広げ、皆さんのまだ見ぬ大きな社会に鳥ノ羽高等学校という学校から、どうか力強く、学園生活にて培った折れない翼でどうか力強く君達がまだ見ぬ社会へと羽ばたいて行って欲しい、......そのような気持ちを込めて、我がとり高等学校は創立されました。......それでは、皆さん、入学おめでとう。校長 漆原三郎」


10分程の原稿を読み終え、登壇から一礼をすると教職員席へと着いた。

校長先生からの新入生への言葉を、体育館の座る全員が静かに前を向いて聴いていると、その後各クラスは先生を先頭に体育館から退場し、芽生達も各教室への移動となった。

芽生のクラスは一年二組の教室で、その際校内のどこに何の教室があるのかを案内されつつ二組の教室に向かう。

席に着くと、教科書やその他様々な用品を机の列ずつ教師が渡して今日から春休み明けの新学期に時間割りの通り登校となる。

4クラスある教室は男子29名女子7名の、廊下側に女子の机が並べられ、教室では男子の多さに女子は慣れている生徒もいるが芽生はと言うとどちらともなく平然に多いなぁと多少どぎまぎしている様子だった。

入学式早々、芽生には仲良くなった子がいた。

クラスで芽生の後ろの席に座るさかき愛奈あいな

黒髪に赤いプラスチックの丸い玉が付いたヘアゴムのツインテールで、笑うとえくぼが印象的だ。

休み明けからの授業日程の描かれている用紙を列ごとに回している時、自分へ渡そうと後ろを振り返った芽生に話しかけた。


「ねぇねぇっ、あたし榊愛奈。....芽生...ちゃん?友達なろっ。仲良くしてねっ。」


ブレザーの胸に着けている名札を覗き見ながらにこっと笑顔を見せる。

「うん、芽生で良いよ。」

「じゃああたしもっ。愛奈って呼んで。....あっ、ねぇねぇっ、これ終わったら一緒に帰ろ。」


「うん。」

芽生は友達が出来て嬉しく思った。









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