飛行機雲を辿って

「ねえ、今どこにいるの?」


せっかくのデート日和。なのに私は一向に彼に会えず、仕方なくかけた電話越しに彼は笑って「空を見上げて」と言ってきた。

空? 見上げるものの、彼の姿はどこにもない。見えるのは、青空に白い線を引く飛行機だけ。


「飛行機雲、見えるだろ?」


それを見せたかっただけか。呆れながらも「見えるよ」と答えると、「その線を辿って」と言われる。言われた通りに白い線を見上げながら歩き出す。飛行機の唸るような声が間近で響いているのに、電話越しに笑う彼の声は私の耳によく届いた。


「もう、いい加減にしてよ」


からかわれてることに痺れを切らした私に、「ほら会えた」と言う彼の声が何故か2つになって聞こえる。

驚いて地上に視線を戻すと、楽しそうに笑う彼の姿が正面に立っていた。

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