第19話 ギルド

僕たちは荷物を失ってお金も全く持ってなかった。そんな状態で町に着いたところでできることなんて何もない。


「大きな町だね〜!人がたくさんいるし祭りでもあるのかな?それでこれからどうするの?」


「まずはお金を稼ぎましょう。それで…お金ってどうやって稼げば良いんですか?」


僕の知識ではお金を稼ぐには仕事をするということしかわからない。具体的にどうすれば良いのかソフィアさんが答えてくれた。


「この町にはギルドがある。そこで依頼をこなせば報酬がもらえる。だいたいこんな感じだ。簡単だろ?」


ざっくりした説明だけど、ソフィアさんは昔ジークさんとパーティを組んでいたんだ。きっと難しい依頼もたくさんこなしてきたんだろう。


ギルドの前について中に入ろうときた時だった。


「ここからはお前1人でいけ。この町の依頼ならリオンの実力があれば十分対応できる。じゃあ頑張れよ。」


「えっ、1人でですか?初めてだから全然分からないんで、受付までは一緒に来てくださいよ。ソフィアさん。」


「最初は分からないのは当たり前だろ。子どもじゃないんだからそんなこと言ってんなよ。さっさと依頼受けてこい。」


14歳は子どもじゃないんですか?と言い返したところでソフィアさんがついて来てくれるわけがない。だからと言ってレオナさんに頼むわけにもいかない。


僕は1人でギルドの扉を開けた。


中にいた冒険者はみんな2人以上のパーティを組んでいる。羨ましそうに見たところで状況が変わるわけではない。受付に向かった。


「あの〜ここで依頼を受けれるって聞いたんでど、どうやれば良いんですか?」


「初めての方ですか?緊張しなくても大丈夫ですよ。説明しますね。まずは登録から始めましょう。」


ガサツなソフィアさんの近くに長くいたせいか、受付の女性の丁寧さが心に沁みた。ギルドの説明を聞いて、渡された紙の項目を埋めて提出するとすぐに対応してくれた。


「確認しますね。あちらに掲示板があるのでよかったら待ち時間にどうぞ。」


掲示板を見に行くと依頼の紙がたくさん貼られていた。討伐系と採集系がほとんどでCランクまでの依頼が貼られていた。Bランク以上は受付に直接確認するようになっているみたいだった。


しばらく掲示板を眺めていると後ろに気配を感じた。


「おい!リオン!何突っ立ってんだ!Cランクなんて修行になんねえぞ!」


「あっ。ソフィアさん。レオナさんはどうしたんですか?」


「なんか子供たちと遊んで、そのままどっかに行った。」


「えっ?レオナさんどこにいるか分からないんですか?ちゃんと把握しといてくださいよ!」


「大丈夫だって……たぶん孤児院だよ。なんか手伝いに行くみたいなこと言ってたよ。私は金も無くなったし暇だったからこっちに来たんだ。」


「………金!?残ってたんですか!?何で言ってくれなかったんですか!しかも無くなったんですか!?この短時間に!?」


「増やそうと思ったんだよ!思い出したらまたムカついて来た〜!負けたからって私の腕を疑うんじゃないぞ!たまたまだからな!」


賭け事か……僕が絶対に反対するから言わなかったんだな。責めたところでお金が返ってくるわけではない。いまは依頼をこなすことだけ考えた。


「さっきCランクが修行にならないって言ってましたけど、僕はまだBランク以上の依頼は受けれないですよ。」


「お前だけならな。私は違う。さっさと受付行くぞ。」


ソフィアさんの口ぶりから僕の代わりに受注してくれるみたいだ。あくまで受けてくれるだけで依頼は1人でやることになる気がするけど。

ソフィアさんの言葉通りBランク以上の依頼を見せてもらえることになった。


「Bランクは流石に難易度の高い依頼が多いですね。でもギリギリいけそうな気がします。どれが良いですかね。」


本来まだ受けられないランクの依頼だから難しいのは当たり前だけど、ここでつまずくわけにはいかない。Bランクの中でも自分のできそうなやつを選ぼうとした時、またソフィアさんが余計なことを言った。


「おい、受付嬢。Bランク以上って書いてあったのに、Bランクしかねえぞ。どういうことだ?」


「この町の周辺ではBランクが最大ですね。Aランク以上の依頼はないです。」


Aランク以上があったとしても今の僕では無理だと思う。もしあったらソフィアさんが絶対受けていた気がするからなくてよかった。僕が依頼の紙を眺めている横で、まだソフィアさんは食い下がっていた。


「出してないのとかあるんじゃないのか?とにかく暴れたいんだよ!Bランクの雑魚モンスターで満足できるかよ!」


ギャンブルで負けたことをまた思い出して怒っていた。もう僕の修行のことは忘れて、自分の鬱憤を晴らすために依頼を受けようとしている。


受付嬢さんを困らせているんじゃないかと思って止めようとしたけど、予想外の答えが返ってきた。


「わかりました。難易度を正確に設定できないのですがAランクもしくはSランク相当になるような依頼が1つあります。」


僕たちは誰もいない奥の部屋に通されて、さっきまでの笑顔が消えた受付嬢さんに依頼内容を聞いた。


「討伐対象はこの町の領主ローガンです。彼は先代領主である父親ドミニクが死ぬと圧政を敷くようになっていきました。財政難だと理由をつけて補助金を打ち切り、より多くの税を取るようになっていったんです。」


来たばかりの僕たちには分からなかったけど、この町は大きな問題を抱えているらしい。


「好き勝手できる理由の一つに先代領主のドミニクが有能すぎたせいもあります。この町は彼の裁量でかなり自由に決められることが多くありました。いまはそれが仇となっているみたいです。」


ずっと黙っていたソフィアさんが痺れを切らして声を出した。


「結局のところそのローガンっていうやつを倒せば良いんだろ?何で誰もやらないんだよ、この町の奴らは!」


「この町の人々は長い間、権力者に反抗しなくてよかったんです。だから悪政に対してどうすれば良いかわからず、気づけば反抗する気力もなくなるような状況に陥ってしまったんです。なので外部の冒険者に依頼することになりました。」


僕はこの話を聞いて断る気持ちは全くなかったけどある疑問があった。


「この依頼の話をするのは僕たちで何組目ですか?」


答えるまでに少し間があったけど、おそらく嘘をつかずに答えてくれた。


「3組です。全員がローガンを殺したと報告していきました。しかし確認するとローガンは死んでおらず、その後その冒険者たちは行方不明になりました。」


その冒険者が買収されたのかと考えたけど、この受付嬢さんがそんな人に声をかけるとも思えない。


「この話を聞いてもこの依頼を受けますか?」


単純に強力なモンスターを倒す内容ではないから、本当にどうなるか予想がつかない。しかもこの依頼を任されるような冒険者が3組失敗していることを考てると、経験不足の僕なんかに務まるかわからない。


それでも僕に断る選択肢はなかった。


依頼を受けると準備資金としてある程度まとまったお金を渡された。

これが初めてで最後のギルドでの仕事にならないようにしよう。

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