第16話 利用方法

あの地下室で作られた剣は凄かったけど、この村の特産品としてあの剣を売ることはできない。そもそも使える人間が限られているし、取り扱いを間違えれば一大事だ。


利用するとしたら武器ではないものを作った方がいいだろう。熱を発することを利用したものはいつくか思いつくけど、作れるものや優先順位を考え出すと何を頼めばいいか分からなくなる。


ソフィアとリオンくんは剣の稽古で忙しそうだから、頼むのはひとまず後回しにしよう。いまは何を作るか考えるのはやめて、なんとなくレオナに困っていることがないか聞いてみた。


「困ってること?うーん…なんだろう。いきなり言われると咄嗟に出てこないな〜。………あっ!それなら村の人に聞きに行こうよ!何かあるかもよ!ちょうどお客さんもいないし、いいでしょお母さん!」


無事にクレアさんの許可が降りて僕たちは村人に話を聞きに行った。しかしいきなり聞かれても何も思いつかないのはみんな同じだった。


「結局その場で解決できるようなことしかなかったね。家具の配置を変えるとか重い荷物を運んで欲しいとか。でもみんな喜んでたしいいか〜。ねぇ、次はどうする?」


「うーん…あっ!次は宿屋に行ってみよう!泊まったお客さんからの要望を店主のロバートさんが聞いてるかもしれない。そこから何か困り事がないか探ってみよう!」


宿屋に入るとロバートさんが暇そうにしていた。


「おっ!どうしたんだお二人さん!サボりか〜?」


「違いますよ。いま村のみんなに困ってることがないか聞いて回ってるんです。ロバートさんも何かないですか?」


その質問をすると期待とは裏腹に、ロバートさんも他の村人と同じように返答に困っていた。


「ちょうど暇してたから話相手が来てくれて良かったけど、困ったことか〜。特にないな〜。逆に聞くけど何かない?」


僕たちは宿屋を見て回ったけど、建物のシンプルさゆえに改善点を見つけるのは難しかった。


宿屋の談話室に戻って話しているとロバートさんが何か思い出したみたいだった。


「………あっ!あった、あった!思い出した!去年ストーブが壊れたんだ。今のうちに治しとかないとな。ちょっとこっちきてくれ。」


ついていくと煙突のついた薪ストーブが部屋の隅に置かれていた。


「冬は冷えるからね〜。一階の談話室に置いてあるんだ。

ここね。薪を入れる扉のところ。閉めても………空いちゃうんだよね〜。」


「えっ?これだけですか?これならソフィアに頼めばすぐに治せると思いますよ。他に壊れてるところないんですか?」


「………ない。」


薪ストーブから煙突を取り外して、メンテナンスも兼ねてソフィアの家に持って行くことにした。


「重いけど大丈夫か?……おおー。ユウゴくん力持ちだね〜。じゃあ頼んだよ〜。」


ストーブの役目は部屋を暖めることだ。そして昨日まさに周囲の温度を上げる炎の剣を見たばかりだった。程度の違いはあるけど機能は同じだ。ストーブに利用できるか聞きに行ってみよう。


ソフィアの家に行くとリオンくんと剣の稽古をしていた。剣術大会に出ると言っていたからなのか、かなり激しく剣を打ち合っていた。


「頑張ってるね〜。修行の成果はどう?順調?」


「まだ始めたばかりだが……リオンは器用さはあるが、度胸が足りないな。まあ戦っていけば自ずと身につくから大丈夫か。半端なところで終わらせるつもりはないから覚悟しとけよ。」


「分かってますよ。遠慮せず鍛えてください。そっちの方が気が楽ですから。それでユウゴさんは稽古を見にきたわけじゃないですよね。そのストーブどうしたんですか?」


持ってきたストーブを置いて壊れているところをソフィアに説明するとあっという間に直してしまった。


「ネジが緩んでただけだな。すすのせいでちゃんとしまってなかった。こまめに掃除しろってロバートに伝えとけ。」


「ありがとう。もう一つ頼みたいんだけどいいかな?昨日見せてもらった炎の剣をストーブに応用できないかなと思って聞きに来たんだ。忙しいなら後でもいいんだけど……」


「はぁ?ストーブに応用?………ストーブか。」


言ったそばからソフィアは頭の中で何か考えているようだった。


「これ改造していいんだよな。それなら……だいたい3日だな。3日後また来い。リオン!修行は一旦中止だ。」


後回しにしてもらってもよかったが、思いついたらすぐにやるのがソフィアの性格だ。僕が何か言う前に2人は作業に取り掛かった。


そして3日が経ってソフィアの方から酒場にストーブを持ってきた。


「おーいっ!持ってきたぞ!これが『マジックストーブ』だ!」


見た目は大きく変わってはいなかったが上下にスライドできて数値を変えられるところがあった。その目盛りの上には火、氷、風と記されていて見ただけでどうなるかわかった。


「最初に目が行くところはそこだよな。今からやるから見ておけよ。」


ソフィアは0に合わせてある目盛りを上にずらして1にした。そしてストーブからは少し熱が発せられてきた。


「剣を鞘から抜くのと同じ構造だ。これを上にずらしていくと中に入っている熱源が露出する。その割合を10段階で変えることができるぞ。わかっていると思うが、こっちを上げれば冷気を放つ。そして風の目盛りを上げていけば風量の調整ができる。どうだ、完璧だろ。」


もはやストーブというよりエアコンだった。安全面もちゃんと考えられていて、火がつくような温度にはならないらしい。


あの地下室は武器もつくれるが、家電製品も作れるのか。他にもいろいろ応用できそうだけど、今は言葉に出すのはやめておこう。


さっそく『マジックストーブ』を宿屋に持って行った。


「おー!直してくれたか〜。ありがとな〜。………あれ薪を入れる扉無くなってるじゃないか。どこから入れればいいんだ?ここか?それともここか?煙突を刺す穴もないぞ?」


「あっ!改造する前に確認するのを忘れてました。とにかく説明しますね。」


僕がこのストーブの使い方を教えると、ロバートさんはとても喜んでくれた。


「おいおい!最高じゃないかこれ!こんなにやってもらって申し訳なくなるな。本当に受け取っていいのか?何も返せるもんないぞ。」


「では実際に使ってみて感想を聞かせてください。問題がなければ他の家のストーブも無料で改造してくれるらしいです。武器を作るよりも簡単だって言ってました。」


「わかった。特に問題は無さそうだけど、使ってみてわかったことがあったら教えるよ。それにしてもこのストーブ良いな。使いやすいし置く場所を選ばなくていい。全部の部屋に置きたいぐらいだよ。」


「……それいいですね。そうなったらもっと泊まる人が増えますよ!人気の宿屋になったら僕も嬉しいです!今度ソフィアに聞いておきます!」


今回僕のやったことは困っている人とそれを解決できる人をつなげるとで、直接何か作ったわけではない。

だからといって達成感みたいなものがなかったわけではない。喜んでくれる姿を見るとこっちも嬉しくなる。


僕ができることは少ないけど、この方法ならよりみんなの役に立つことができる気がする。普段から村の人と話をして困っていることや得意なことを把握するようにしよう。

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