サードライフ

アスパラガッソ

一章『転生編』

第1話 【廃人のような生活】

 毎日決まった時間に起きなくて良い、ただそれだけで羨む人も中にはいるだろう。そして俺はそれに加えて、一日、つまり二十四時間を好きに使って良いのだ。


 ということでなんでも自分の学びたいことを学んでも良いし、制限無くゲームを楽しむのも良い、外にだって行き放題で日程を考えずに悠々自適に一人旅も良いだろう。


 だが、俺の性格はと言うと、自発的に外に出掛けるような外向的な性格ではなく、むしろ内向的で、一つのことに全力をけるタイプだった。


 そして、こんな生活を送る前からプレイしているゲームが


 それは『セカンドライフ』というゲームで、名前の通りディスプレイの中で第二の生活を営めるというものだ。まぁ、俺からしたら現実世界の方がセカンドライフなんだがな。


 そして、ここまで聞いて察した人もいるだろう。そう、俺はニートをやっている。

というか、ニートはやるもんじゃない、なるもんだ。いや、それも変か。知らんけど。


 兎にも角にも、俺のセカンドライフ第二の生活もとファーストライフ第一の生活は、ある日突然終わった。そう、現実世界での終わりのようにあっさりとね。


 まぁ早い話。セカンドライフを運営していたワールドライフというゲーム会社が、突然倒産したのだった。


 元々インディーゲーム会社だったワールドライフが開発したゲームたちは、初期の頃から圧倒的人気を誇っていて、さまざまなオンラインシミュレーションゲームを輩出していて、ワールドライフの創った世界ワールドにハマった、所謂いわゆる中毒患者を量産していた。俺もその中の一人で、随分とのめり込んでいた。


 だが、俺がハマっていたセカンドライフは、まるでゲームとは思えない地道な作業を何度もす、所謂で、俺みたいな異常者でもないと、楽しみを見出せず最序盤で売ってしまうだろう。セカンドライフが本格的に面白くなってくるのは中盤辺りだからな。


 そしてそれと同じくらいの原因がもう1つある。


 それは、ワールドライフのたび重なる人気ゲームの量産で、運営側がきっと今回のセカンドライフも当たるだろうと思い込み、サーバーのほとんどをセカンドライフに回し、まだサービスが続いていたゲームのサービス終了を告知。その後セカンドライフの発売と同時にサービス終了が実施されたため、多くのユーザーの反感を買い前述した原因でライト層が離れ、昔からワールドライフのゲームをプレイしていたヘビーユーザーたちも、最終的にはほとんどが離れていってしまったのだ。


 そういった選択ミスの数々をおかしたワールドライフは、ついにサーバー代もまともに払えなくなり、更に会社の維持もままならなくなってしまった。それでもなんとか費用を捻出ねんしゅつしようと、社員からも資金をつのっていたようだったが、最悪なことに、それと同時期に社長の不祥事ふしょうじが発覚。資金捻出に立ち上がった社員たちからも見放され、ズルズルと倒産にまで追い込まれてしまったのだった。


 これによって、一時期SNSでは『ワールドライフ難民』や『ワールド崩壊』などがトレンドに上がっていた。そしてそれは俺も同じで、セカンドライフがプレイできなくなると知ったその日から、なかば廃人のような生活を送っている。友人が言うにはその前から廃人のような生活を送っていたらしいがな。


 ニートという社会的に弱い立場にいる俺は、唯一の心のり所を失い、更にサービス終了に伴っての燃え尽き症候群の発症、それらによって俺は本格的に、ただ生きているだけの肉塊にくかいになってしまった。


 相変わらず決まった時間には起きないが、以前まで最低限やっていた生活もほとんど出来なくなった。例えば風呂なんかも入れなくなったし、本当に朝起きて何かしらを食って寝ての繰り返しだった。オーバーイーツが便利過ぎたのも一つの要因かも。


 ネット友達の『猿ヴェージ』とか言うふざけたネーミングセンスの野郎からの心配メッセージや電話も時々来ていたが、俺にとってはもう生者せいじゃからの追悼ついとう句にしか聞こえなかった。


 そのくらい心にダメージを負っていた俺は、そこから数年経ったある日、スマホに届いた一通のメッセージを開いてしまう。それは、あの頃の健全な精神(笑)だったら詐欺さぎメールだと一蹴いっしゅうしてしまうような、そんな文言もんごんが書かれたメールだった。そこにはこう書いてあった。



―――

――――――

―――――――――


ご当選おめでとうございます!


全人口約80億人の中から、我々からの正式な選別を経て、

アナタは名誉ある転生者に選ばれました。


この権限を使って、を楽しむ権利を受け取りましょう!


※このメールを送られた日付から、五日後にはその権利が失われます。

ご注意ください。


―――――――――

――――――

―――



あの悲劇から随分と時間が経過し、ようやく心の傷や燃え尽き症候群が治まり、重い腰を上げ新しいゲームを探していた俺は、心底馬鹿馬鹿しいと感じメールを迷惑メールのフォルダーに追加しようとしたが、やはりくだんのゲームの名前に似ているあの単語が俺の心を引き留める。



「サードライフ」



俺は自然にその単語を口に出していた。

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