三國志再演義

@dain25

第一章 劉備夢を見て鮮卑と戦いその名を上げる

第1話 劉備夢を見て奮起す

涿郡涿県楼桑里

この物語はこの地で劉備(字は玄徳)がある夢を見るところから始まる




「…き…」


ん?母上か?悪いがもう少し寝させてくれねえか?


「…きろ…にき」


いやこれ男の声か?なら憲和か。

っち…うるせえなぁ、もう少しゆっくりさせてくれよ。


「起きてくれよ!兄貴!!」


うるせええええ⁉︎

誰だお前⁉︎


「⁉︎兄貴、寝ぼけてるのか⁉︎俺だよ益徳だよ!張益徳!」


大声で起こされたかと思ったら俺を兄貴と呼ぶ知らねえ奴が筋肉質な強面には似合わねえ怯えた面して俺に訴えかけてきやがる。

…いや本当に知らねえが、あの面見てるとこっちが悪いように思っちまうから誤魔化すか。


「お、おう益徳すまん。どうやら寝ぼけていたようだ。悪い悪い。」


「なんだよ、驚かせて!ほら玄徳兄貴、皆待ってるから早く来てくれよ!」


俺が寝ぼけたフリをするとさっきまでしょぼくれていた顔がパーっと明るくなった。犬みてえだなコイツ。

というか玄徳って言ったなコイツ。玄徳は俺の字だが、俺はコイツを知らねえ。そしてよく見るとここは俺の家じゃねえ、どこだここ?


ここから判断すると…こいつは夢だな!

と来れば夢から覚めるまでこの夢を楽しむか!


そう考えた俺は益徳と名乗る男に言われるがままその後ろを歩いていった。


そこからはもう何があったか俺も詳しくは覚えてねえがとにかく長い夢だった。


まず集まっていた連中と義勇軍を率いて後漢に対する反乱鎮圧を行った。

董卓って奴が都にて自分の好きな皇帝を擁立し暴政を働いたので奴を倒すために義勇軍を率いて参陣した。

董卓が呂布って奴によって殺されたら元々縁があった公孫師兄(公孫瓚)の下で戦って、ある時徐州の陶恭祖(陶謙)の援軍に向かったら気に入られてそのままお世話になって、あの人が死んだら俺が徐州を収めることになった。

結局徐州は呂布に奪われて俺たちは曹操の下について呂布を破ったが奴が漢の簒奪を図ったと思った俺は奴から離反した。

まぁ普通に曹操に敗れて袁本初(袁紹)の下に逃げ込み、袁紹が死に袁家が分裂したから劉景升(劉表)の下に逃げ込み、劉景升も死んでその息子は劉表に降伏したので今度は孫権の下に落ち延びた。

赤壁で曹操を孫権らと共に破り俺たちは荊州を切り取り次いで益州も得た。

そしたら孫権が難癖つけて来て奴らとも揉めるようになった。

そんな中で俺は陣頭指揮を取り漢中を得て漢中王を名乗った。

劉性ってだけの貧乏人がここまで来たもんだと涙ぐんじまった。もうこれが夢だってのを忘れるくらいにな。


まぁそこからは下り坂だ。雲長(関羽)が孫権…呉によって殺され仇を討とうとした矢先に益徳まで殺された。

そして夷陵で俺は兵も将も失った。皆火で焼かれちまった…。

そして俺は惨めな最期を迎えようとしている。


ごめんな皆…こんなボロボロな国を残して逝っちまうなんて。

ごめんな雲長…益徳…俺みたいな奴と義兄弟になったばっかりにあんな最期を迎えさせちまって…。


「…き…い!」


そうして俺は悔いながら目を閉じたが誰かが俺を呼んでいるようだった。


「起きなさい!玄徳!!もう日は上りきってるよ!」


「うわあ!!なんだ母上か。」


俺は母上に叩き起こされた事であの出来事が全て夢だったと再認識出来た。

それにしても長い夢だったな…。えらく鮮明に覚えているし…これは予知夢かもしれない。


そう思うとヤル気がみなぎって来たぞ!

途中キツかったし最期はあんなんだったが俺みたいな奴でも王になれる!それだけでももう怖いものはねえ!


「なんだいあんた急にそんなやる気出して、気持ち悪いよ。」


「流石に酷くないか?母上。」


そんな俺を見て母上は酷い事を言うがまぁ今までが今までだったか、仕方ないな。


「まぁそんなにやる気があるならちょうど今兵を募集してるみたいだから行ってみたらどうだい?」


そんな俺に母上はこんな提案をして来た。

これは…夢に出て来た漢に対する反乱に対する義勇兵の募集だな!

俺は渡りに船だと思い家を飛び出した。

ここから俺の成り上がりは始まるんだ!




こうして劉備は志願し代郡高柳に集まっていた軍に参加した。

彼を知る者達は劉備の急な志願に驚いたそうだ。


このとき熹平6年、西暦177年

つまり劉備が夢で知る乱よりも前なのだがこの時の彼はそれに全く気付かずにいた。


「これより我らは不埒なる鮮卑共を討ち偉大なる漢の平安を守る!褒章は思うがままぞ皆励め!」


彼が自身の過ちに気づいたのは軍を率いる将軍のこの宣言を聞いたときであった。


本来なら参加する事もなかった戦に参加することとなった劉備、彼はこの戦を生き残ることが出来るのだろうか?

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