神之児戯

田澤 邑

第1話異世界の管理者

「どこだ、ここは?」

 いおりは気づくと真っ白な空間にいた。

 辺りを見渡していると、突然、真横から強い光が現れ、目が眩みそうになりながら見ていると真っ白な人形のシルエットが現れる。

「すまんな。どうやらお前は手違いで死んでしまったようだ」

「……えっ⁉」

 庵は驚きのあまり思わず大声を上げる。

 死んだ? 俺が? いつ? 全く記憶がない。

「私はお前たちの云うところの神だ」

 神は驚く庵の様子に構わず告げる。

「……あの、俺はどうして死んだんですか? まったく覚えてなくて」

「聞きたいか?」

 そう言う神の顔は変わらず真っ白で見えないが、言われた瞬間に庵は悪寒が走り聞いてはいけない事を聞いたような気がした。

「いっ、いえ!」

「その方がいい、あまり良い死に方ではなかったからな」


 あっ、そういう……。


 余程ひどい死に方をしたのだろうと庵は首を振り考えるのを止めた。

「さて、今回はこちらの手違いという事もあるので来世にお前の望む願いを一つ叶えてやろう」

 そう言って神が両手を上にかざすと庵の身体が光に包まれていく。

 来世か……、思えば今世はよくない人生だったな。およそ青春とはほど遠い学生時代、大人になってからも職場と家の往復の毎日……。


 楽しみと言えば休日の異世界アニメ……⁉


「ちょっ! ちょっと待って下さい!」

 庵が大声で叫ぶと身体を包んでいた光が失われる。

「どうした?」

「あの、こういう時に異世界に転生したりとかできないんですか?」

 庵は休日に観ていた異世界転生もののアニメを思い出す。

「……異世界に転生?」

 神はかざした手を下げると、まるで初めて聞いたかのように聞き返す。

「あのですね……」

 庵は異世界転生について神に丁寧に説明する。


 数分後。

「なるほど、つまり現実とは違う剣と魔法の中世の世界に行きたいと?」

「はい」

 また、つまらない人生を送らされるくらいなら異世界のほうがマシだ。

「はっきり言うが、異世界なんてないぞ」

「えっ⁉」

 庵は再び驚き先ほどより大きな声を上げる。

「その異世界というのは人間が想像した理想の世界であって実在するものじゃない。少し考えれば分かるだろう?」

「……そんな」

 異世界転生の夢を打ち砕かれ庵は膝から崩れ落ち両手を地面につけて落胆する。

「……そんなに望むのであれば、お前がその異世界を作ってみるか?」

「えっ?」

 そういう神の言葉に庵が顔を上げ再び神の顔を見ると、表情は変わらずわからないが何か楽しそうに笑っている様に見える。

 しかし、夢にまで見た異世界生活だ。諦めるくらいなら。

「やります!」


 それから庵は神に提示された条件で異世界制作を開始した。


 まずは惑星の環境。

 神によって異次元に用意された惑星。環境は地球と同じだが大気に手を加える事で世界に様々な恩恵をもたらす事ができるそうだ。

 わかりやすいものだと魔法だろう。


 だが、俺は生前に異世界転生もののアニメをいくつか観ていて思った事がある。

 なぜ、異世界イコール剣と魔法の西洋ファンタジー世界なのか。

 刀と異能の和風ファンタジー世界があってもいいんじゃないかと。

 人間は、ほぼ日本人で服装は和服で装備も日本の甲冑を主流にして武器は刀や槍や弓矢など。

 異能は陰陽道の五行思想を引用しモクキンスイの五行説に特殊なフウを足した六つを採用する。

 ファンタジーなので敵も出てくるが鬼や妖怪や魑魅魍魎など日本に伝わる怪物ばかりだ。

 その他にも日本の物をいろいろ設定に加えながら一ヶ月間夢中になって作り続けた。

 途中気分が高揚して勢いのままに変な物を作ってた気もするが。


 ある程度、設定を作り終えたら後はこの世界の人間の自主性に任せる。

 これも神に提示された条件だが、無闇に手を加えると、この世界の人間が考える事を止め文明が衰退してしまうらしい。


 よし!


 設定を作り終え世界の時間を数百年単位で進めながら俯瞰していると、大陸に転々と町や村のようなものが形成されていき人々が活発に活動しているのがわかる。


 早速、俺は作った世界に降り立つ準備を始める。

 目的は悠々自適な異世界生活だ。

 他人のプレイするゲームを傍らで眺めているほど詰まらない事はないからな。


 町や村から多少離れた小高い崖に雷が落ちると、そこに庵が姿を現す。

 現れる様子を見られない様に危険な雷を落とし人を遠ざけるための処置だが、大袈裟すぎたか?

 そんな事を考えながら次元収納から手鏡を取り出し自分の姿を確認する。

 ちょうど十五歳だった時の自分だ。日本では明治時代まで元服といって十五歳で成人とされていたので、この世界でもそれを採用した。


 続いて自分の装備を確認する。

 身に付けているのは日本の戦国時代の胴丸どうまるという要は軽く動きやすいように兜などがない甲冑かっちゅうだ。


 そして腰の刀。

 正宗まさむねなどの業物って訳では無いが俺専用に作ったものでタングステンで作ってある。


 装備を確認しながら崖の先に立ち辺りを見渡すと川沿いに小さな村が見えた。


「おおっ!」

 今まで俯瞰していた光景が目の前に実在する事に庵は興奮し声を上げる。


 早速、庵はその村に向かって歩き出した。

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