第二部 

第一章

リュヴェレット王国の戦士たち①

 「まずは、なんとか味方と合流して状況を知りたいところだ」

 リシャールはベルナデットに相談する。――ベルナデットとリシャールは戦う決意を固めたところで、今後の動きを話し合うことになった。

「味方がいる場所の心当たりはあるの?」

 ベルナデットは尋ねた。

「陛下は直々に騎士や魔術師など、戦力になる者全てに各地に偵察に行くように命じたんだ。だから、今回の強襲を逃れた味方が町や村の外れにいるかもしれない」

 ふとそこで、ベルナデットはあることに気付く。

「あの、これは戦いに詳しくない人間の思ったことなんだけど…」

「何だ?」

「その命令って、王都にいる兵士さんたちの数が減って危険なんじゃ…」

 そこでリシャールは目を伏せた。

「陛下は王城の警備が手薄になることも承知の上で、偵察の命を出したんだ。…覚悟はしているつもりだ」

 リシャールの言葉に、ベルナデットは何も返せなかった。陛下――女王はリシャールの実母である。表には出さないが、きっと不安で仕方がないはずだ。それでも第一王子としての役目を果たそうとしているリシャールを、何とか支えたいとベルナデットは密かに思った。

「…他に何か質問はあるか?」

 リシャールはベルナデットに尋ねた。ベルナデットは小さく首を横に振る。

「それでは、夜が明ける前に移動しよう。そちらの方が見つかりにくい」

「うん」

 二人は荷物を持って洞窟を出た。ベルナデットはちらりと村の方を見る。炎は消え、気味が悪い程静まり返っていた。村人たちの無事を今は祈るしかないことに歯がゆさを感じつつ、リシャールについて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る