第2話

「初めまして!角山良介、D組ですっ!


あだ名はカクです。よろしくお願いします!」



あれは確か、一年前くらい。



文化祭が終わって、三年生は引退して、部活も落ち着いた頃。


あなたはなぜか途中入部で、写真部に入って来た。


「角山くんはこの前の美術の課題写真が都内二位に選ばれて、写真部に誘ったら入ってくれることになりました」


顧問の宮崎先生が私をチラッと見て笑う。


「と、いうわけで。

春日さん、色々教えてあげてね」


「えっ、私ですか?!」



自分を指差しながら聞くと宮崎先生は簡単に頷く。



「だって、まともに部活に出るのあなたくらいじゃない。


二年生は皆この時期、兼部の大会が忙しいからあんまり来ないしね」



そして宮崎先生が角山くんの肩を叩いた。



「彼、良い子だから。よろしくね」



どう考えても宮崎先生は私に彼を押し付けた。




彼のことは知っていた。



私の友人の、坂本鈴音すずねが入ってるバンドのベースを弾いてる人。



春日かすが結奈ゆな、C組です」



私が自己紹介すると、あなたは明るく笑っ。



「知ってる、スズちゃんの友達だよね?


ゆなちゃん!仲良くしてね!」



その笑顔は例えるなら、太陽のようだった。



「カメラとか持ってる?」



私が聞くと軽く頷く。



「もともと写真撮るの好きだったから中学の時、誕生日に買ったんだ」



そして私が持ってるのと同じ種類のカメラを見せてきた。



「結構良いやつでしょ?」



その時はまだ、この人を好きになるとかは全然なかった。


……いや、なり始めてたかもしれない。



そして、週一回しかない部活なのに、私は毎週どんどん彼を好きになっていた。


角山良介は明るくて楽しい人。

友達も多くて先輩にも好かれてる。



「カクー!俺の勇姿をしっかり抑えとけよ!」


「任せといてください!」



何度、隣でそんな会話を聞いたのかは分からない。

校庭に出れば話しかけられ、廊下を歩けば話しかけられ。


それなのに彼は何故か必ず、私についてくる。



「カク、別に良いよ?ついてこなくって」


「えー。一人じゃ寂しいよ」



そんなことを言われて、もしかして、私のこと好きなのかなって思ったときもあった。


だけど、違った。勘違いだった。

彼が好きなのは私じゃなかった。



「あっ、ゆなちゃん!

これをゆなちゃんに渡すように、美波先輩に頼まれたよ」


「ファンクラブ会員証……?」


「そっ!ギャラスタの会員証!」



彼が好きなのは星みたいに輝く、私とは程遠い人だった。

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