不良男子の放課後

斗花

本当は

第1話

高校に入ってから、もうすぐ三ヶ月。

彼氏が出来てしまいました。



「はぁー?!

菅野保すがのたもつと付き合うーっ?!」



きーん、と耳に響く声で友達の菊乃が叫ぶ。



「そんな叫ばなくっても……」


「叫ぶよっ!

だって菅野保って、あの菅野保でしょ?!」



あのって一体どの菅野保くんだろう。



「多分、その菅野くん」


「暴走族の頭張ってて、毎晩クラブ通ってて、女の子とホテル行きまくってるって噂の、あの菅野保?!」



……うーん。


その菅野くんだけど、その菅野くんじゃない。



「それは全部、ただの噂なんだよ」


「そんなの分からないじゃん!」



菊乃がそう叫んだ時、菅野くんが教室に来る。



椎夏しいかいる?」


「あ、菅野くん!」



教室が少しざわめくけど、その光景にも最近はだいぶ慣れました。



私が菅野くんの方に行くと優しく微笑む菅野くん。



「おはよ、椎夏」


「いま来たの?遅刻だよ!」



菅野くんを見上げると軽く頷いた。



「知ってる」


「じゃあダメだよ!」



じーっと見てくるので少しビビった私に明るく笑う菅野くん。



「はーい、気をつけまーす」



そんな菅野くんを廊下を歩くみんなはチラチラと横目で見る。



「じゃ。とりあえず鞄教室に置いてくる。

何なら次、二人でサボる?俺は全然かまわないけど」



私は構うので首を振ると、また明るく笑った。



「だよな。椎夏がサボりなんて有り得ないもんな」



手を振る菅野くんに手を振り返す私を見て、菊乃が後ろから肩に手を置く。



「わ、菊乃、」


「本当に付き合ってるね。

しかも、なかなかうまくいってるね」


感心する菊乃に私は笑いかける。


「だって菅野くん、すごく優しいもん」


だけどやっぱり皆は誤解してるみたい。



菅野くんは何だかんだですごく優しいし、いつも私のことを考えてくれてる。


……と思う。分からないけど。



学校に来ると必ず私の所に来てくれるし、部活が終わるまで待っててくれる。



「……ノロケ?」



部活で眞冬先輩に菅野くんの話をしたら、少し笑ってそう言われた。



「えっ?!いや、その、別にそうゆうつもりじゃ、」


「まぁ、良いけどね。私、ノロケ担当だから」



眞冬先輩いわく、眞冬先輩の友達はみんな彼氏とラブラブらしい。



「眞冬先輩だって、彼氏さんとラブラブですよ?」


「あれは彼氏っつーかストーカーだから」



とか言いながら明日はコンサートにデートに行くらしい。


しかもそのコンサートはNICKってゆうアイドルのコンサート。



「彼氏さんをアイドルのコンサートに連れてくって結構、スゴイです!」


「ね、私もそう思う。

でも男連れてく方がファンサ貰えそうじゃない?」



私と眞冬先輩はアイドルが大好きです。



一番好きなのはSix Lovers略してシーラバとゆうグループだけど、他のグループも好きだし、特に眞冬先輩は沢山ファンクラにも入ってる。



「私も今度NICKコン行きたいです!」


「その前に多分、ハグプリがあるよ。あ、でも夏はシーラバ絶対コンあるじゃん??


そしたらさ、しぃ一緒に行こうよ」


「えっ?!でも彼氏さんは-」


「夏は受験だもん。

私、今年はシーラバ関東全ステしたいんだよね。しぃ、東京は一緒に行こう」


私達の会話を隣にいた男子が不思議そうに眺めている。



すると眞冬先輩が顔を上げ弓道場の外を指差す。



「あれ彼氏じゃない?」



菅野くんは無表情に私にヒラヒラ手を振った。私も小さく振り返すと明るく笑ってくれた。



「仲良いよねぇ。

最初はあんなに怖いとか喚いてたのに」


「だって怖かったです。怖いですよ、そりゃ!」



最初は本当に私、何かされると思った。


「でも菅野くん、いっつも優しいし。楽しいです!」



眞冬先輩は優しく笑い返し、立ち上がって矢を打つ。



「恋愛って確かに、してる間は楽しいね」



その眞冬先輩は何だか笑顔が綺麗だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る